『静寂に包まれた部屋』
「お前いつから俺にそんな口を聞くようになったんだ」
「あんたのせいで私の人生めちゃくちゃだわ」
「いいかこれは躾だ、お前がグズだから躾けてやってんだよ」
「あんたなんか産むんじゃなかった」
その日のお父さんはいつもより機嫌が悪かった。いつもなら気にしないことも今日は気に入らなかったらしい。お腹や太ももにはできたばかりの赤々とした痣がある。痣はズキズキと痛む。
その日のお母さんはいつもより大変そうだった。怒って泣いたり、物を投げたりした。でも、それから逃げるともっと怒る。僕は黙って聞かないといけない。浴びせられる言葉は蛇のように纏わりつく。
気づくと目の前には倒れている人がいた。倒れている人たちは今日お父さんたちが来ていた服と同じ服を着ていた。顔は潰れているから誰か分からない。お父さんたちが倒れているようで少し心配になった。
お父さんたちはどこに行ったのだろう。つい先ほどこの部屋に来たばかりだったはずだ。いつの間に出て行ったのだろう。また来たら、今度は怒られるかもしれない。
けれど、いつまで経ってもお父さんたちは来なかった。僕が気づいた時、近くに金属バットが転がっていた。バットに着いていた赤い汚れはとっくに黒く変色した。
「僕はこれからどうしたらいいんだろう」
ポツリと呟いた言葉が部屋に響いた。
9/30/2024, 10:21:12 AM