晴道花架

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9/27/2025, 12:23:54 PM

午下り、限られた時を守る静寂の帳
細い肩を震わせてあなたは嘆く
とうに終えた物語、傍に翻る頁の為に頬を濡らして
剥がれることのない祝福/呪縛を
覆ることの許されぬ因果/宿痾を
もはや爛れて無味で通す喉に代わり、あなたが嘆く
掠れた声で繰り返し、消えた世界の為に乾く

どうして、どうして
あなたがあんな目に遭わなくてはならなかったのか
誰よりも傷付いたあなたが、何よりも惨い終結へ至る
ひどいよ、苦しいよ
せめて分かり合えたならどれほど良かっただろう
共に生きられたなら夢のようだった
愛し合える未来へ繋ぎたかった

息遣いすら煩い回廊の片隅で、嘆く声だけが駆け抜ける
そして私はそっと手を差し出す
儚い希望を潰したのは、あなたであり私
断ち切った可能性は、言い換えれば癌だったのだから
あなたが膝を痛める必要はない
目を腫らす前に、いつか本当に折れてしまわないように
拉げて血を流す心はあなた自身に救ってほしい
既に終わった私の為に、どこかで終わった誰かの為に
今を生きるあなたを消耗しないでほしい
やがて消える私からあなたへ告げる、ただ一つの祈り

失われることのない光を
何にも敗れぬ運命を、あなたに
そして時々、思い出して
共に歩む果てを願ってしまった、愚かな影がいたことを
愛した人の心の片隅に居場所があるのなら
月の照らさぬ夜に幻想であろうと寄り添えるのなら
それだけで私は満たされている
これ以上なく満たされているのだから

(涙の理由)

9/17/2025, 10:43:16 AM

見下ろす後頭部、しなやかな背、健やかな肌を伝う汗
魔が差してしまうのも無理はない
注がれた陽光に甘えて勝手に踊る木漏れ日のように
散歩の気分で悪心は訪れる
それは誰の内にも在る、人たらしめる証
どうか私を責めないで
同じ強さで抱き返して
受け入れたのはあなた、だから最後まで、最期まで

こんな時だけ聡いあなた
鈴鳴る声で私を裁く、曇る瞳は罪でしょう
暴くなら最奥まで、骨の髄まで開いて映して記憶して
きっと私を忘れないで
珍しく悪戯心なんぞに酔い痴れた私の顔を
百年先でも描いて見せて
太い眉、白い歯、全て飲み込むような黒曜石の瞳
私もずっと覚えているから
百年と一日先も、同じ熱を返して欲しい

囚われた悪夢でも、閉ざされた幻想でも
どうあってもあなたと永遠に結ばれたいと願う
甘やかに照り付ける光を失おうとも
星を飾ることすら忘れた夜空の下で、あなたと二人
螺旋の底へ旅したい
坩堝の底で溶けて行きたい
色違いの絆を繋いで、深く深く、静かなところへ
眠る前に同じ言葉を交わしてね
私も必ず応えるから

(靴紐)

9/16/2025, 12:28:38 PM

どうしても許すことができない
どうしても愛することができない
膿んだ傷跡から目を逸らし続けて何を得たか
錆びた心臓から零れ落ちる
沸々と、轟々と、淀んだ残り滓の行列に問う

私のことを許せない
私のことを愛せない
爪の間に詰まる憎しみ、掻き毟る度に剥がれる悲しみ
気紛れに潰す種子から噴き出すように泥は溢れて
気付けばこんなに汚れてしまった

降り積もる、しんしんと堆く飽くことなく
心を込めて育てた失意
まだこの両手があなたの顔に届かなかった頃から
腐って沈んで生まれた隙間
僅かな光も届かない、忘却を願った黒い記憶
広がる海に溺れながら、命辛々育ててきた徒花
少しばかり不格好だけれど大きく立派になったでしょう
諦めてしまえばいいのに
どうせどこにも行けない、離れないし捨てられない

一枝一葉が私を呪う声がする
さらさら、さらさら、風に揺られて、私を穿つ音がする
まあいいか、そして私はまた忘れる
どうしてこんなに汚れてしまったのだろう

ただ一度、頷いてくれたら
醜い火の粉を掬わずとも、そっと風上から見守って
あなたの瞳の真ん中に映して欲しかっただけ

爆ぜて跳ねて踊ってみる
汗に塗れ、転んで挫く羨望にまた焼かれて
無様に散る一片の火花、涙を落としてなお惑う
灰になってしまいたい
美しく焦げてしまいたい
煙を苦しむ未熟の身にはまだ早いか

いつか
諦めた空へ散りばめた塵芥が、誰かを救うなら

(答えは、まだ)

9/12/2025, 12:35:36 PM

歪んだ歌声を奏でる蓄音機
舌に居残る真っ黒の珈琲
まだ透明な涙を滲ませた少年は
褪せた街へ去り行くのでしょう
道すがら膨らませた在来の妄想
石鹸玉のように弾けて消えて
曇った硝子のその先へ、積もる灰を踏み越えて
彼が足跡を辿らないよう祈る
どうでもいいけれど、本当に石ころのようだけど

気触れて腫れた夢の跡
乾いた一筋、砂糖水
天鵞絨の椅子に腰掛けて
外れた調子を真似て口遊む
満点の星を纏って歌い踊る
厚塗りを剥いでも宿らぬ虚構の姫
ちぐはぐ、あべこべ、空回る
摘み損ねた芽は吹かれ抉れて枯れていく
知られず勝手に、無様に転がる石ころのように

せっかく庭を用意したけれど
彼はもうここには来ない
私が蹴飛ばしたから、駆られたようにころころと
きっとどこかで削れて砕けて、粉になって
でなければ勝手に咲き誇れ
阿呆のように硬い種だった、それだけなのだから

(台風が過ぎ去って)

9/9/2025, 11:07:43 AM

また傷付いているんだね
愛されて生まれた陽だまりのあなた
雨粒に紛れた一雫、その程度に過ぎなかった運命
すっかり萎れて黒ずんだ指先を隠して
そうしてまた笑うんだ
馬鹿な人、優しい人、初めからずっと弱い人
いっそ偽善であれば良かった
昨夜の雨水を放るように捨ててしまえば良かった
あんなに綺麗な手をしていたのに
数え切れないほど星を灯して
恋を夢を焼き尽くして、まだ満足出来ないのかな
誰かの幸福を願いながら
あなたはあなたを諦めているくせに
その笑顔を見る度に吐き気が止まらない

刻まれた悪夢を再現したなら肉片すら残らないだろう
辛い、苦しい、もう嫌だ、と劈く
頼りない背が叫んでいるの、煩いほどに
沈殿する汚泥が熟成されて、どす黒い渦になって
臭くて汚い、あなたの笑顔に耐えられない
何度も傷を抉られて、内側まで掻き混ぜられて
ねえ、どんな気持ち
私には聞こえているけれど改めて教えてよ
痛みを忘れない高潔な人
手を差し伸べて一緒に泣いてくれる美しい人
誰かを今日も赦すんだ
本音なんて吐いたことないくせに
あなたがあなたを赦さないくせに
可愛らしいその顔を歪ませてやりたい

重すぎる、そう零してよ
逃げ出したいと願ってよ
一度だけでも、聞き届けるから
きっと必ず、流星のように連れ出してあげるのに
あなたはまだ傷付いている
一緒に燃え尽きてあげるのに
灰になっても離さないのに
あなたがどんどん眩しくなって、見えなくなるの
純朴で鈍くて陽だまりの匂いがする
私、そんな人を愛したのに、知らない誰かにならないで
手を繋いで一緒に燃え尽きて
永遠になんてならないで

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