小音葉

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また傷付いているんだね
愛されて生まれた陽だまりのあなた
雨粒に紛れた一雫、その程度に過ぎなかった運命
すっかり萎れて黒ずんだ指先を隠して
そうしてまた笑うんだ
馬鹿な人、優しい人、初めからずっと弱い人
いっそ偽善であれば良かった
昨夜の雨水を放るように捨ててしまえば良かった
あんなに綺麗な手をしていたのに
数え切れないほど星を灯して
恋を夢を焼き尽くして、まだ満足出来ないのかな
誰かの幸福を願いながら
あなたはあなたを諦めているくせに
その笑顔を見る度に吐き気が止まらない

刻まれた悪夢を再現したなら肉片すら残らないだろう
辛い、苦しい、もう嫌だ、と劈く
頼りない背が叫んでいるの、煩いほどに
沈殿する汚泥が熟成されて、どす黒い渦になって
臭くて汚い、あなたの笑顔に耐えられない
何度も傷を抉られて、内側まで掻き混ぜられて
ねえ、どんな気持ち
私には聞こえているけれど改めて教えてよ
痛みを忘れない高潔な人
手を差し伸べて一緒に泣いてくれる美しい人
誰かを今日も赦すんだ
本音なんて吐いたことないくせに
あなたがあなたを赦さないくせに
可愛らしいその顔を歪ませてやりたい

重すぎる、そう零してよ
逃げ出したいと願ってよ
一度だけでも、聞き届けるから
きっと必ず、流星のように連れ出してあげるのに
あなたはまだ傷付いている
一緒に燃え尽きてあげるのに
灰になっても離さないのに
あなたがどんどん眩しくなって、見えなくなるの
純朴で鈍くて陽だまりの匂いがする
私、そんな人を愛したのに、知らない誰かにならないで
手を繋いで一緒に燃え尽きて
永遠になんてならないで

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9/9/2025, 11:07:43 AM