歪んだ歌声を奏でる蓄音機
舌に居残る真っ黒の珈琲
まだ透明な涙を滲ませた少年は
褪せた街へ去り行くのでしょう
道すがら膨らませた在来の妄想
石鹸玉のように弾けて消えて
曇った硝子のその先へ、積もる灰を踏み越えて
彼が足跡を辿らないよう祈る
どうでもいいけれど、本当に石ころのようだけど
気触れて腫れた夢の跡
乾いた一筋、砂糖水
天鵞絨の椅子に腰掛けて
外れた調子を真似て口遊む
満点の星を纏って歌い踊る
厚塗りを剥いでも宿らぬ虚構の姫
ちぐはぐ、あべこべ、空回る
摘み損ねた芽は吹かれ抉れて枯れていく
知られず勝手に、無様に転がる石ころのように
せっかく庭を用意したけれど
彼はもうここには来ない
私が蹴飛ばしたから、駆られたようにころころと
きっとどこかで削れて砕けて、粉になって
でなければ勝手に咲き誇れ
阿呆のように硬い種だった、それだけなのだから
(台風が過ぎ去って)
9/12/2025, 12:35:36 PM