花架星廻堂

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9/16/2025, 12:28:38 PM

どうしても許すことができない
どうしても愛することができない
膿んだ傷跡から目を逸らし続けて何を得たか
錆びた心臓から零れ落ちる
沸々と、轟々と、淀んだ残り滓の行列に問う

私のことを許せない
私のことを愛せない
爪の間に詰まる憎しみ、掻き毟る度に剥がれる悲しみ
気紛れに潰す種子から噴き出すように泥は溢れて
気付けばこんなに汚れてしまった

降り積もる、しんしんと堆く飽くことなく
心を込めて育てた失意
まだこの両手があなたの顔に届かなかった頃から
腐って沈んで生まれた隙間
僅かな光も届かない、忘却を願った黒い記憶
広がる海に溺れながら、命辛々育ててきた徒花
少しばかり不格好だけれど大きく立派になったでしょう
諦めてしまえばいいのに
どうせどこにも行けない、離れないし捨てられない

一枝一葉が私を呪う声がする
さらさら、さらさら、風に揺られて、私を穿つ音がする
まあいいか、そして私はまた忘れる
どうしてこんなに汚れてしまったのだろう

ただ一度、頷いてくれたら
醜い火の粉を掬わずとも、そっと風上から見守って
あなたの瞳の真ん中に映して欲しかっただけ

爆ぜて跳ねて踊ってみる
汗に塗れ、転んで挫く羨望にまた焼かれて
無様に散る一片の火花、涙を落としてなお惑う
灰になってしまいたい
美しく焦げてしまいたい
煙を苦しむ未熟の身にはまだ早いか

いつか
諦めた空へ散りばめた塵芥が、誰かを救うなら

(答えは、まだ)

9/12/2025, 12:35:36 PM

歪んだ歌声を奏でる蓄音機
舌に居残る真っ黒の珈琲
まだ透明な涙を滲ませた少年は
褪せた街へ去り行くのでしょう
道すがら膨らませた在来の妄想
石鹸玉のように弾けて消えて
曇った硝子のその先へ、積もる灰を踏み越えて
彼が足跡を辿らないよう祈る
どうでもいいけれど、本当に石ころのようだけど

気触れて腫れた夢の跡
乾いた一筋、砂糖水
天鵞絨の椅子に腰掛けて
外れた調子を真似て口遊む
満点の星を纏って歌い踊る
厚塗りを剥いでも宿らぬ虚構の姫
ちぐはぐ、あべこべ、空回る
摘み損ねた芽は吹かれ抉れて枯れていく
知られず勝手に、無様に転がる石ころのように

せっかく庭を用意したけれど
彼はもうここには来ない
私が蹴飛ばしたから、駆られたようにころころと
きっとどこかで削れて砕けて、粉になって
でなければ勝手に咲き誇れ
阿呆のように硬い種だった、それだけなのだから

(台風が過ぎ去って)

9/9/2025, 11:07:43 AM

また傷付いているんだね
愛されて生まれた陽だまりのあなた
雨粒に紛れた一雫、その程度に過ぎなかった運命
すっかり萎れて黒ずんだ指先を隠して
そうしてまた笑うんだ
馬鹿な人、優しい人、初めからずっと弱い人
いっそ偽善であれば良かった
昨夜の雨水を放るように捨ててしまえば良かった
あんなに綺麗な手をしていたのに
数え切れないほど星を灯して
恋を夢を焼き尽くして、まだ満足出来ないのかな
誰かの幸福を願いながら
あなたはあなたを諦めているくせに
その笑顔を見る度に吐き気が止まらない

刻まれた悪夢を再現したなら肉片すら残らないだろう
辛い、苦しい、もう嫌だ、と劈く
頼りない背が叫んでいるの、煩いほどに
沈殿する汚泥が熟成されて、どす黒い渦になって
臭くて汚い、あなたの笑顔に耐えられない
何度も傷を抉られて、内側まで掻き混ぜられて
ねえ、どんな気持ち
私には聞こえているけれど改めて教えてよ
痛みを忘れない高潔な人
手を差し伸べて一緒に泣いてくれる美しい人
誰かを今日も赦すんだ
本音なんて吐いたことないくせに
あなたがあなたを赦さないくせに
可愛らしいその顔を歪ませてやりたい

重すぎる、そう零してよ
逃げ出したいと願ってよ
一度だけでも、聞き届けるから
きっと必ず、流星のように連れ出してあげるのに
あなたはまだ傷付いている
一緒に燃え尽きてあげるのに
灰になっても離さないのに
あなたがどんどん眩しくなって、見えなくなるの
純朴で鈍くて陽だまりの匂いがする
私、そんな人を愛したのに、知らない誰かにならないで
手を繋いで一緒に燃え尽きて
永遠になんてならないで

(フィルター)

9/7/2025, 3:29:03 PM

久しく曇らぬ硝子の奥に、亡霊の君を見た
ただ濡れて立ち尽くす案山子のように
途方に暮れた瞳は、悉くを飲み込む夜の色にも似て
伸ばした手は懐かしく凍えて、けれど声は届かず
透き通る背が秋霖にすっかり溶けてしまうまで
白い手は揺れて震えて彷徨った
歩み寄るには遅かった、許しを得るには驕りが過ぎた
君は何を伝えようとしたのか
二度と答は訪わない、それが私の罰ならば

幻を見ていたのだろうか
それは林檎の香りをした白昼夢、惑うも啜る甘い汁
幾星霜を遡り希ったとして、きっと沈黙は変わらない
蒼天を傲慢と罵る瞳は曇ったまま
擦っても瞑っても頑なに澄み渡らない世界へ唾を吐く
これが私の罪、永劫に続く後悔の始まり
矛先を失くした愛が膨らむばかり
弾けて消滅する、終末という名の救済すら能わずに
捧げた理想は腐り果てて行く
癒えない傷ごと苛むように

降り頻る雨は涙だろうか
君か、あるいは誰かの悲しみを継ぐ雫
この体を濡らすのに、抱き締めることは叶わない
かつて繋いだ心、最後まで離別を拒んだ成れの果て
贖いの旅路にて、忘却を禁ずる記憶の欠片
私の眠りを妨げることもせず
あまつさえ逃避を幇助するような、残酷な優しさ
直視するそれは余りに眩しく温かく
私が追放したくせに今更何を伝えられるか
沈む思考は海にも似て、そして宇宙は底にある

薄紅の唇が私の名を告げる日は来ない
君は振り返らずに落ちて行く
瞬く光を携えて、一心不乱に朽ちて行く
願いたくなるけれど、懲りずに手を伸ばすけれど
実らせてはならないと理解して果てる
ただ美しいだけの命無き色彩、誰も喰まぬ毒の徒花
愛した君がいつか滅びてしまっても
私だけは憶えているから
遠い遠い未来までも、独りになっても抱えて眠ろう

(雨と君)

9/3/2025, 10:25:01 AM

瞬く星にも似た美しい感情を、その瞳から、その唇から
あなたには濁流のように映っただろう
けれど確かに、満天に戴く何よりも尊い煌めきだった
少なくとも私にとっては、夢のような
朝焼けと共に枯れる花、けして叶わない幻想の結実

生まれながらに呪われた想い
解かねばならない縛り
どうしてこの心はあなたを選んだのだろう
自由にしなくてはならないのに
飛び去る翼を笑って見送りたいのに
隠した縄でその足首を括る
そんな機会を待ち侘びている
きっと、紛うことなき決別の瞬間
あなたの心に蟠り続ける錘の恋
私を腐敗させる崩壊の糸
生涯許されないだろう、故に記憶に居座る毒の愛かな

音もなく弛む激情を戒める
締めて縊って、二度と蘇らないように
穿たれた胸に空洞が残っても構わない
代わりにあなたが幸せになれるのなら
薄れた過去のどこにも、こんな愚か者を残さないで
私が不自由であるうちにどこへでも消えてしまって
錆びた釘を手に、先端がこの胸の他へ向かう前に
最後にはきっと敗れてしまうから

けれど、けれどね
一度だけ、あなたの星になりたかった

(secret love)

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