花架星廻堂

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7/19/2025, 10:47:29 AM

小さな鳥が空を飛んでいる
帰る場所などない陳腐な袋なら逃げ続けている
透き通る怪物は意思もないのに追い回す
風が止むまで強いられる間抜けな鬼ごっこ
彼らが何を思うかなんて、知ったことじゃない
暴れる風よ、返してほしい
かつてあなたが攫った小さな心を
なんて、知ったことじゃないよな

煽られるままに揺らめく髪が視界を遮る
振り払っても、掻き分けても
寄せては返す波のように、濁った瞳を隠している
昨日のことも覚えていない
得たはずの学びは砂に紛れ、同じ過ちを繰り返す
飽きもせずに、諦めもせずに、ただ規則的に上下する胸
乾いた喉が伝えることは何もない
言葉はとうに掌から旅立って
そうか、手放したのはこの両手だった

自由を押し付けて悦に浸る
朽ちた愛を嘆き涙を流す
私は優しい人、私は正しい人
なんて、胃が爛れそうだ
空白になったはずなのに、吐き気が止まらない

私は何がしたかったのだろう
何を持ち、何を目指していたのだろう
投げ捨てたはずの心は焼けた心臓に再び芽吹く
結局、人は無色になどなれはしない
息を顰めても滲み出す涙痕が頬に錆び付いて

空、見上げた私を、大きな影が横切っていく
去り行く鳥は知らないだろう
地底からこそ見える景色があるのだと

(飛べ)

7/16/2025, 12:08:12 PM

ほんの小さな一言で世界は壊れる
鼻で笑い飛ばす警句に、私は何を学んだだろう

昨日まで肩を並べた戦友は、今や賊を狩る従僕となって
唾を飛ばしながら血走った形相で
よくも友を、と義憤の旗を振り上げている
友よ、友よ、憎き仇敵を穿ってやるぞと槍を掲げている
次第に狭まる輪は氷より冷たく、雷より喧しい
何気ない一言がこの地獄を招いたのだ
ならばどうすれば良かったのだろう
返す言葉はなく、兵は裏返った目から血を流して死んだ

晴れていたはずの空が雲が覆い、やがて大粒の雨が降る
甲高い声でケタケタと笑う女神は
ふと迸る悪意の閃きのまま、あなたを突き飛ばす
跳ねた泥は白い頬を汚し、湧き上がる絶望を彩るだろう
従僕は彼女を囲んで、よく似た目で、口で、ケタケタと
追い縋る手を踏み付けて
細やかな一言を喉元に突き付けて燃え盛る
揺らめく炎はついに魔手を伸ばして
磔にされたあなたを顧みず火刑は執り行われる
少なくとも痛みは無い、肌を刺す熱はない
けれど潰える心はどこへ向かえば良いのだろう

あなたは綺麗と称賛した唇で
あの子は醜いと言いふらす
あなたの努力に倣いたいと誓った拳で
結晶の悉くを砕いて嘲る
こんなに惨めな体を引き摺って
こんなに哀れな塵を積み上げて
あなたに生きる権利などあると思ったの
彼女は笑う、皆が笑う、ケタケタ、ケタケタと
糸より細い絆も、紙より薄い信頼も
締め上げられて折れた首が、今もないている

何気なく穿たれた一言が、いつか彼女を壊しますように
不幸な輪廻から私は何も得ないだろう

花知らぬ日陰者は空想に酔い痴れて
帰らない返事に頬を染めるわ

(真昼の夢)

7/13/2025, 10:41:16 AM

皆が指差して笑うの
どうして、どうして、私何も悪いことしてないのに
嘘吐き、ホラ吹き、ペテン師と
皆が私を囲んでそう呼ぶの
おかしな話ね、嘘吐きは一体どちらなのか
本当は虚実なんてどうでもいいくせに

切り刻まれた傷は今なお癒えず
瘡蓋のミルフィーユは分厚い仮面
もう二度と剥ぐことも叶わない
あなたのせいよ、忘れているでしょうけど

裁かれない罪は誰の爪も牙も汚さずに
すっかり整えられた綺麗な毛皮で闊歩する獣共
私はあなたを許さない
あなたのことを許さない
忘れていても、その虚飾に塗れた爪は赤黒く
グロテスクな光沢を纏う唇からは腐った肉の匂いがする
人の振りした獣共よ
改めようと振り払おうと、私はあなたを許さない

茹だるような夏の日に
あなたは一緒に泣いてくれたのに
二人して汗だくで、先に帰ってもよかったのに
そばに居て励ましてくれた
あなたはどこへ行ったの、ねえ

だから私は嘘吐きになった
大丈夫、私は一人で生きていける
誰も愛さず、誰も守らず、泣きも笑いもしないのです
怒りも喜びも、私を騙す嘘なのだから
私は愛を信じない、私は恋を求めない
晒されて枯れる想いなら、きっと初めから嘘なのです

(隠された真実)

7/12/2025, 10:31:29 AM

夜空に咲く大輪の花
夢中になって声を弾ませるあなたの笑顔
綺麗だねと呟く唇、見つめる澄んだ瞳
それら全てが、滲んで揺らめいて沈殿していく
私の中で洗われて、思い出とやらに昇華されていく
傷付くことも言われたはずだった
背を押されて感じた奇妙な浮遊感も覚えているのに
あの後、どうなったんだっけ

ちりん、ちりん
拒むような軽やかな音色が私を誘う
浮世を吐き捨て蓋をして、離れてしまえと誘っている
りぃん、りぃんと続けて唄う
辛いことなどなかったと、沁み渡るような歌を届けて

引き摺る想いも、遠く反響する耳障りな喧騒も
遍く幻影など初めからなく
私の見た悪夢に過ぎなかった、それら全てを掻き回す
溶けた墨が押し流されて、水面はやがて透明になる
恐れも怯えも等しく塵芥
初めから、私には重たい荷物だったのだと知る
必要ないなら捨て置くのみ
軽くなった体ならば、いざ気楽に一人旅へ

引き留めないでくれ、一輪の花
お気に入りの花瓶に挿された、小さな太陽
彼女が太陽に焦がれたように
私もあなたに憧れていた
見つめて、見つめて、見つめ過ぎて
あなたのことが見えなくなった

拒まれた理解は癇癪を起こし、私を底へ突き落とした
遡る悪夢は甘味の如く、最後の一口まで蜜に塗れて
さようなら、偽りの希望
ありがとう、こんな私と共に居てくれて
これからはきっと一人きりで生きていくよ

(風鈴の音)

7/11/2025, 10:41:55 AM

震える足で突っ張って振り回す刃は
幼い日に積み上げた砂の城より脆く崩れて
ステゴロで戦う度胸があったなら
今頃汚いアスファルトを舐めることもなかったのに
愚かだから心臓は尚も鼓動を刻み続ける
誰も私のことなど見ていないのに
世界全てから嘲笑われているようだ
そんな、月明かりも見えない夜に

入り組んだネオンの城、空飛ぶ船
機械仕掛けの太陽と踊る女神
独裁者ばかりが高笑い
顔色を伺う無機質の命
これは駄目だ、こんな夢では笑えない

剣と魔法の彩る冒険の旅
仲間と共に魔王の城へ
歓喜する光に吐き気を催した
精霊と魔物の違いが分からない私に居場所はない
駄目だ、駄目だ、こんな夢では酔えない

誰も彼もが美しい花咲く園
清廉潔白、極楽浄土
見透かすような笑顔が嫌い
赦すと告げる口元が嫌い
容易く信じ込む蕩けた瞳が大嫌い
汚れた私には不似合いの天国
こんな夢では駄目だと言うのに

平和なばかりの夢ならば、結局誰も招かれない
受取拒否されたしょげた封筒が寂しげに佇んでいる
波瀾万丈、天変地異、驚天動地
そんな幻想を誰もが見下ろし鑑賞したい
閉じ込めた虫の死に様を、卵が孵る前から待っている
外れた賭けは籠ごと捨ててしまえば良いのだから

刺々しい心が掻き毟る
もっともっとと囃し立てる
爪の間が汚れても満足出来ずに傷付けて
明日にはきっと後悔するのに
誰も見ないと分かっていても袖の長い服を選ぶんだ
いくつの城を蹴り壊しても罪人はまだ息をしている
ならば罰か、この人生は
酔えない夜に乾いた笑いをひとつまみ

(心だけ、逃避行)

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