小さな鳥が空を飛んでいる
帰る場所などない陳腐な袋なら逃げ続けている
透き通る怪物は意思もないのに追い回す
風が止むまで強いられる間抜けな鬼ごっこ
彼らが何を思うかなんて、知ったことじゃない
暴れる風よ、返してほしい
かつてあなたが攫った小さな心を
なんて、知ったことじゃないよな
煽られるままに揺らめく髪が視界を遮る
振り払っても、掻き分けても
寄せては返す波のように、濁った瞳を隠している
昨日のことも覚えていない
得たはずの学びは砂に紛れ、同じ過ちを繰り返す
飽きもせずに、諦めもせずに、ただ規則的に上下する胸
乾いた喉が伝えることは何もない
言葉はとうに掌から旅立って
そうか、手放したのはこの両手だった
自由を押し付けて悦に浸る
朽ちた愛を嘆き涙を流す
私は優しい人、私は正しい人
なんて、胃が爛れそうだ
空白になったはずなのに、吐き気が止まらない
私は何がしたかったのだろう
何を持ち、何を目指していたのだろう
投げ捨てたはずの心は焼けた心臓に再び芽吹く
結局、人は無色になどなれはしない
息を顰めても滲み出す涙痕が頬に錆び付いて
空、見上げた私を、大きな影が横切っていく
去り行く鳥は知らないだろう
地底からこそ見える景色があるのだと
(飛べ)
7/19/2025, 10:47:29 AM