ほんの小さな一言で世界は壊れる
鼻で笑い飛ばす警句に、私は何を学んだだろう
昨日まで肩を並べた戦友は、今や賊を狩る従僕となって
唾を飛ばしながら血走った形相で
よくも友を、と義憤の旗を振り上げている
友よ、友よ、憎き仇敵を穿ってやるぞと槍を掲げている
次第に狭まる輪は氷より冷たく、雷より喧しい
何気ない一言がこの地獄を招いたのだ
ならばどうすれば良かったのだろう
返す言葉はなく、兵は裏返った目から血を流して死んだ
晴れていたはずの空が雲が覆い、やがて大粒の雨が降る
甲高い声でケタケタと笑う女神は
ふと迸る悪意の閃きのまま、あなたを突き飛ばす
跳ねた泥は白い頬を汚し、湧き上がる絶望を彩るだろう
従僕は彼女を囲んで、よく似た目で、口で、ケタケタと
追い縋る手を踏み付けて
細やかな一言を喉元に突き付けて燃え盛る
揺らめく炎はついに魔手を伸ばして
磔にされたあなたを顧みず火刑は執り行われる
少なくとも痛みは無い、肌を刺す熱はない
けれど潰える心はどこへ向かえば良いのだろう
あなたは綺麗と称賛した唇で
あの子は醜いと言いふらす
あなたの努力に倣いたいと誓った拳で
結晶の悉くを砕いて嘲る
こんなに惨めな体を引き摺って
こんなに哀れな塵を積み上げて
あなたに生きる権利などあると思ったの
彼女は笑う、皆が笑う、ケタケタ、ケタケタと
糸より細い絆も、紙より薄い信頼も
締め上げられて折れた首が、今もないている
何気なく穿たれた一言が、いつか彼女を壊しますように
不幸な輪廻から私は何も得ないだろう
花知らぬ日陰者は空想に酔い痴れて
帰らない返事に頬を染めるわ
(真昼の夢)
7/16/2025, 12:08:12 PM