夜空に咲く大輪の花
夢中になって声を弾ませるあなたの笑顔
綺麗だねと呟く唇、見つめる澄んだ瞳
それら全てが、滲んで揺らめいて沈殿していく
私の中で洗われて、思い出とやらに昇華されていく
傷付くことも言われたはずだった
背を押されて感じた奇妙な浮遊感も覚えているのに
あの後、どうなったんだっけ
ちりん、ちりん
拒むような軽やかな音色が私を誘う
浮世を吐き捨て蓋をして、離れてしまえと誘っている
りぃん、りぃんと続けて唄う
辛いことなどなかったと、沁み渡るような歌を届けて
引き摺る想いも、遠く反響する耳障りな喧騒も
遍く幻影など初めからなく
私の見た悪夢に過ぎなかった、それら全てを掻き回す
溶けた墨が押し流されて、水面はやがて透明になる
恐れも怯えも等しく塵芥
初めから、私には重たい荷物だったのだと知る
必要ないなら捨て置くのみ
軽くなった体ならば、いざ気楽に一人旅へ
引き留めないでくれ、一輪の花
お気に入りの花瓶に挿された、小さな太陽
彼女が太陽に焦がれたように
私もあなたに憧れていた
見つめて、見つめて、見つめ過ぎて
あなたのことが見えなくなった
拒まれた理解は癇癪を起こし、私を底へ突き落とした
遡る悪夢は甘味の如く、最後の一口まで蜜に塗れて
さようなら、偽りの希望
ありがとう、こんな私と共に居てくれて
これからはきっと一人きりで生きていくよ
(風鈴の音)
7/12/2025, 10:31:29 AM