小音葉

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4/13/2025, 12:22:58 PM

兵どもが夢の跡
有象無象の血を吸って不遑枚挙の花が咲く
どこからか聞こえる祭囃子
童の駆ける土の下、砕ける骨を如何せん
憂う心は春時雨

どうせ忘れる夢ならば
なんぞ燭を秉て遊ばざる
移ろう命は花吹雪
時代も人も五十歩百歩、踊らにゃ損と花が散る
酔いも甘いも噛み分けて
釣鐘帽子に飾りましょう

千枚の葉が落ちるまで
高歌放吟と歩こうか
泥濘む雨後に天晴れと
ばら撒く血潮が道となる

(ひとひら)

4/12/2025, 10:36:16 AM

飽きるほど通った坂道
はみ出した街路樹、顔のない通行人
視界の端で点滅する信号機
落としたノートを拾ってくれた、本屋の店員
向かいのカフェから香る、ほろ苦い珈琲の誘惑
確かに息を切らして紡いだ結晶
あんなに鮮明だったはずの日々は今や遠く
画面越しの捕食、大自然の作る劇場を眺めるように
ただ白い水平線を漂っている

耳障りな音を立てて、視界が揺れる
ざらついた塵芥に飲まれて消えてしまう
息が出来ない
苦しくて、押し潰される
背負った重みで骨が軋む
誰が壊したか分からない世界に埋もれて
終わるのか、いつか気紛れに望んだように
何も残せずに、守れずに、温い夢を振り払い
息も絶え絶えに紡いできた私なのに

繰り返し蹴飛ばした石ころ、そして後悔
苛立ちのまま千切って捨てた、名も知らぬ枝葉と淡い恋
射抜いて喜び、倒れて安堵した仮初の未来
鉛のように重い腕を引き摺って
砕けた心は継ぎ接ぎに、地面を擦った傷だらけの体で
私はここまで歩いてきたんだ

優しい右手と折られたページを見下ろす
そうすることしか出来なかったけれど
最後、あなたを取り戻す
汚れた左手で、握り返せなくて良いから
いつか春風の駆け抜ける商店街で思い出して
一瞬だけ交わった二人の運命
超えるものなどきっとないぐらい美しかった青空の帷を

(風景)

4/11/2025, 11:12:48 AM

荒涼とした砂の海で、ただ一輪を愛した
戻らない背を追うように枯れたけれど
繋いだ命は風に乗り
やがて血を分けた緑の大海原があなたに捧ぐだろう
不器用な英雄の詩
運河の底に沈もうと、けして錆びぬ太陽の花

漫ろ雨が弾く音色
閉ざされた夜に、最初で最後の告白をした
永遠を願う傲慢も、その刹那だけは許される気がして
硝煙に咲いても陰らぬ白銀のあなたを
願っても、願っても、肌を刺す終わりの続き
ただ一度落とされたひとひらの記憶はまだ褪せない

綱を渡るような恋だった
初めから墜落し続ける、救いようのない詩だった
ならば破り捨てる
脈打つように当然に
荒天の船出に、ダイヤモンドを置き去りに

それでも交わらないはずの音を盗んで
あなたと逆立つ譜面に飛び跳ねたい
これを大罪と呼ぶならば、奇想の雷霆で踏み荒らそうか
裏切りの末路、無様な饗宴
椿のヴェールを脱ぎ捨てて
こんな狂い咲きがあってもいい
蕚を踏み越え、あなただけを連れて

壊れた車輪は咽び泣き、絶えずどこまでも運ぶだろう
目を閉じて久しい、お前を乗せて

(君と僕)

4/10/2025, 11:17:11 AM

窓を叩く激雨が渋る背を追い立てるように
とめどなく空は塗り変わって行く
花冷えの夜、止まり木を見つけて
震える体と苛立ちを抱えて眠る雛

希望は奈落の底にあるだろう
撃ち落とされるか焼かれるか
暗闇に身を投じる覚悟なくば
空への飛翔など絵空事
地を這い腐るも自由だが
土草に爪弾かれても囀ることなかれ

やがて大海へ至る一滴
頬を伝う雫が旋毛の高さを越える頃
それでも実りが約束される日は終ぞ訪れず
けれど徒花には徒花の生き様があるだろう
形なくば己を粘土とせよ
あるいは、木でも紙でも構わないが
所詮、脆弱な翼なら
柔らかい内に捏ねて削って付け足して
歪な航路を拓いて渡れ

震える夜に終わりがなくとも
歪な血路が花道となるように

(夢へ!)

4/9/2025, 10:55:38 AM

古びたヌックに腰掛けて
窓辺に訪う小さな客人と挨拶を
そして古びた額縁から世界を開く
かつて君が泣いていた
残響だけが横たわる
白を纏う本当の意味を、誰も知ろうとしなかった頃

穴だらけの揶揄、腐った因果
罪の滴る衣は既に染まる境界を失って
星に落ちた影は輝きを増して
いつか君を呑み込んだ
どれほど重ねても恩讐は翻らず
黒百合は笑むことを忘れていた

咲き終えた花のように
ひとつ、またひとつ
捲れて、剥がれて、落ちて行くのに
君は悉くを律儀に掬い上げて
月隠の雨に封じて泣いた
竜虎を弔い、蛇蝎を悼む
心臓を引き摺り歩き、それでも明日を見せる為に
何も燃え尽きることなかったろうに

君のいない小さな城
今日も曇天、揺れる傘のシンボル
手放したもの全て、掻き集めて待っている
いつまでも、夢のような陽だまりの中で待っている

(元気かな)

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