昏き底から這いずり穿つ
さあ、さあ、目覚める時が来た
おはよう、朝焼けの城郭、花舞う岬
おはよう、朽ちた花より醜い世界
薄闇に灯せ、燃えろよ炎
そこに根を張り眠っていた頃
天を叩く脚に起こされて
睨んだはずの瞳はたちまち奪われた
忘れもしない
嫋やかな乙女
風と踊る名も知らぬ花
馬骨に手折られるならば隠したのに
残骸は腹の底
地を穿ち、風を裂き、城壁に喰らい付く
這ってでも転ばせて見せよう
いつか花を踏み躙った、乾いた枯れ木
報いならば今燃え上がる
さあ、さあ、銀葉の毒を燃料に
宙の星より苛烈に燃やせ
復讐の時、来たれり
(芽吹きのとき)
あなたの肌のような白い布は
私たちを隠して
千夜一夜、二人だけの小さな城へ
けれど風に煽られ、透けて、翻り
いつかあなたを連れて行ってしまった
微かに香る白檀
雲によく似たシーツの中、溺れて
きらり、片耳に揺れる太陽が去ったこと
気付かなかったのは誰のせい?
あの頃からまるで全てが夢のよう
愛も王冠も要らないのに
あなただけが見つからない
寒くて、眠くて、冷たくて
あなたに届けと伸ばした手は雲間を泳いで落ちていく
癖のあるこの髪を掬って、片指で遊んでいたあなた
くるり、くるり
シルクのひとときは遠き春
桜色の唇は、空の瞳は、何を紡いでいたのか
あなたの熱を忘れたくない
まだ、あなたの炎を覚えていたい
(あの日の温もり)
柔らかな頬はマシュマロ
苺のように熟れて、容易く歪む
流す涙は金平糖
甘くて甘くて、摘み始めたら止まらない
細い腕は、小さな背は、震える足は
きっとチョコスナックやクッキーで出来ているのね
ほぅら、片手で捻って砕いてしまえる
手のひらで踊る愛しい子
もっと踊って、もっと崩れて
もっと、もっと、もっと
粉になるまで愛しましょう
溶けてしまうまで戯れましょう
(cute!)
これが最後、言い聞かせて鍵を開ける
無機質な白
感情のない色
かつて壊れた始まりの場所で
燃える手のひら、守る盾となり
徐々に彩る無数の星々
繰り返す度に増えて、増えて
抱えきれなくても手を伸ばした
愛して、叫んだ
信じて、託した
重なる影に、離れ行く鼓動に
幾度もこの胸は張り裂けて
それでも誇った
我らが虹に光あれ
声を揃えて高々と
黄金の空、柔らかく微笑んだ人を引き留められたなら
愛を告げること、許されたなら
首を振る
もう一度、首を振る
さあ、瞼を開けて
白昼夢はもう見ない
最後、目に焼き付けたなら
私は永遠に戻らない
(記録)
まぁるい天に星が廻る
描き殴れば色落ちて、けれど透明には至らない
塗り重ねれば重く重なり、やがて剥がれ落ちて行く
骸の山、いつか砂となり
大地は子を孫を育んだ
轍を蹴る
指先を伸ばし、躍動する
刹那、鳥になる
空は廻る、転がり、落ちる
変わらない
ゆえにこそ、途方も無い天がある
寝返りを打てば聞こえるだろう
踏み締めた時の声
彼らは君を突き放す
今はまだ血を滲ませ歩め、乾け、飢えて走れと
(さぁ冒険だ)