小音葉

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あなたの肌のような白い布は
私たちを隠して
千夜一夜、二人だけの小さな城へ
けれど風に煽られ、透けて、翻り
いつかあなたを連れて行ってしまった

微かに香る白檀
雲によく似たシーツの中、溺れて
きらり、片耳に揺れる太陽が去ったこと
気付かなかったのは誰のせい?

あの頃からまるで全てが夢のよう
愛も王冠も要らないのに
あなただけが見つからない
寒くて、眠くて、冷たくて
あなたに届けと伸ばした手は雲間を泳いで落ちていく

癖のあるこの髪を掬って、片指で遊んでいたあなた
くるり、くるり
シルクのひとときは遠き春
桜色の唇は、空の瞳は、何を紡いでいたのか

あなたの熱を忘れたくない
まだ、あなたの炎を覚えていたい

(あの日の温もり)

2/28/2025, 10:26:59 AM