これが最後、言い聞かせて鍵を開ける
無機質な白
感情のない色
かつて壊れた始まりの場所で
燃える手のひら、守る盾となり
徐々に彩る無数の星々
繰り返す度に増えて、増えて
抱えきれなくても手を伸ばした
愛して、叫んだ
信じて、託した
重なる影に、離れ行く鼓動に
幾度もこの胸は張り裂けて
それでも誇った
我らが虹に光あれ
声を揃えて高々と
黄金の空、柔らかく微笑んだ人を引き留められたなら
愛を告げること、許されたなら
首を振る
もう一度、首を振る
さあ、瞼を開けて
白昼夢はもう見ない
最後、目に焼き付けたなら
私は永遠に戻らない
(記録)
まぁるい天に星が廻る
描き殴れば色落ちて、けれど透明には至らない
塗り重ねれば重く重なり、やがて剥がれ落ちて行く
骸の山、いつか砂となり
大地は子を孫を育んだ
轍を蹴る
指先を伸ばし、躍動する
刹那、鳥になる
空は廻る、転がり、落ちる
変わらない
ゆえにこそ、途方も無い天がある
寝返りを打てば聞こえるだろう
踏み締めた時の声
彼らは君を突き放す
今はまだ血を滲ませ歩め、乾け、飢えて走れと
(さぁ冒険だ)
震えて揺れる
舞台は炎に抱かれ
振り落とされた彼らの顔をもう思い出せない
戦火に翻る旗
朽ちた剣は誰かの墓標となりて
怒号すら遠く、手繰る糸は導かない
並ぶ誓いは紛い物、記す私は羽より軽く
運命などくだらないと嘆く
あなたの顔をもう思い出せない
黒焦げの希望、一片も残らず
この身、花冠となりて流れましょう
だからどうか、泣かないで
アザミは贈らない
いつか晴れ渡るなら約束を
(一輪の花)
真夜中、よく滑るペン先
苦味を誤魔化してなぞる言の葉
白は染まる、隙間から睨む
綴る形の正誤を問う
綻ぶキャンバスと残骸の海
誰もが願う世界
誰にも望まれない明日
美しいだけの結晶に飽いた舌先
知った顔して噛み砕く
シャンデリアから溢れた炎
やがて灰が降り積もる
差し込む朝日に目を閉じれば
めでたし、めでたし
お帰りはあちら、リンドウの道
一雫の心と青い目を、駄賃に置いてゆきなさい
(魔法)
在りし日の君を覚えている
穿つような雨の中、振り上げた拳を
肩を組んで笑い合った日々、
澄んだ瞳で囁く愛、
全て裏切る紫煙の味を、知っている
こんな日が来なければ良いと願っていた
膠灰に褪せた色が、いつか消えても
斜陽を超えて、嘘だと笑う君を待っていた
瓦礫の下から届けよう
墓無き君へ捧ぐ七色、記憶の大樹を焼いた劫火
今度は遮るもののない世界で、漣を聴こう
(君と見た虹)