REINA

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6/16/2024, 1:13:44 PM

1年前



1年前の君は、この桜の樹の下で僕に微笑んでくれた時に、とても綺麗だと思った。

突然の『好きです』という告白に、僕の顔はかなり熱くなった。戸惑った。そして最終的には、やんわりお断りした。
その時の自分は『恋愛』というものが分かっておらず、他人事のようにしか感じられなかったからだ。
そんな気持ちのままで、相手と付き合うというのは、あまりにも失礼だと思った。

というのは建前で本音は、恋愛をすることで何か変わるかもしれない自分に怯えていたのかもしれない。

振られたあとでも懸命に笑う君をみて、何とも言えない気持ちになった。好きとは違うけれど、大切にはしたい人だと思った。

『友達』という形で、この1年間過ごしてきた僕らは、もうすぐ卒業を迎える。

卒業後は進路は別々だ。
彼女は地元の大学に、僕は東京の大学に。
お互い別々の道を歩む。

そう思うと少し胸がざわざわした。
その正体が何かは分かっていたけれど、今更意識することでもない。

キュッと唇を噛み締め、桜を眺めていた彼女の隣に立つ。

今度は僕から伝えよう。

「好きです」

時間はかかったけれど、1年前の答えを出した。

6/15/2024, 1:37:40 PM

好きな本



彼の好きな本が変わった。


図書委員をしている私には分かる。
彼の好みの本を。
学校一の秀才と言われている彼は、
純文学から推理小説など勉強や思考を巡らせるような、
そんな本が好きだったはずだ。

だけど、そんな彼が最近「恋愛小説」を手に取るようになった。
最初はたまには違うものでも読みたいと思ったのかと考えていたけれど、どうやらとある女子の影響らしい。
というのも読書週間が始まり、そのとある子が持ってきた本と同じだったからである。

勝手な憶測が頭に飛び交う。

その子のために読んでいるのだろう。
話題を作るための口実なのだろうか?

時に表紙を手で拭う様は、彼女の綺麗な手を撫でているようにも見えた。

嫌なものを見た。

見なければ良かった。

遠目から見た挿絵のページは、今日の読書の時間に彼女が見ていたページと同じだった。
あの時の彼女と同じように微笑む彼の顔が、私に取ってはこの上もなく毒だった。

6/14/2024, 12:37:34 PM

あいまいな空


雨が降りそうで降らない。
傘を持った方がいいと思うが持ちたくない。
そんな空の天気に、出かけようと思っていた気持ちさえ、億劫にさせてしまう。


昨日、同じ部活の先輩に告白した。
初めての告白で緊張して舌を噛んでしまった。
でも我ながら一生懸命には気持ちを伝えたと思う。

返事は「考えさせてほしい」だった。
いっそその場で振られた方が、休みであるこの土日で思いっきり泣けたのに。

「考えさせてほしい」というのはなんだろう?
少しでも検討の余地があるということなんだろうか。
期待してしまう反面、振られた時のことを考えると、どうも否定的な考えをしてしまう。
そうすれば「あー、やっぱりね」って思えるからだ。

窓から外を眺めた。
あいもかわらず降るのか降らないのか分からない天気だ。

あいまいな空模様と、あいまいな返事の裏にある気持ち。

頭を切り替えるためにも、外には出てみようかと靴に手をかけた。

6/13/2024, 12:31:07 PM

あじさい



学生の頃。
学校の行き帰りの道には、ちょっとした紫陽花が咲いている小道がある。
脇に入ると家へとは少し遠回りにはなるけれど、紫やピンク・青の宝石のような鮮やかさが散りばめられている。

車では通ることのできない場所。
社会人になった今では、わざわざ歩かないとお目にはかかれない。
日々の仕事に追われて、すっかり忘れていたけれど、久しぶりにここを歩いて通った。

あの時は隣に並んで歩く彼に片想いしていたけれど、今は婚約者として並んで歩いている。
そんな未来を過去の私に教えたい。

色鮮やかに咲き誇る紫陽花は、あの時の輝きと変わらない。
まるで祝福をされているかのように。

6/12/2024, 1:42:45 PM

好き嫌い


「好き」
「嫌い」
「好き」
「嫌い」
「好き…」


奇数の花びらを見つけては、相手が自分のことをどう思っているか、占ってみる。

占うというより、ただの自己満足というか、
縋りたいという感じだろうなぁ。

嫌われてはいないと思う。
でもあの人の「好き」は、友情とか博愛とかに近いようなところがある。

どうすれば「好き」って言ってもらえるのだろう。
どうすれば彼の「特別」になれるのだろう。

思わず偶数の花びらを見つけてしまった。

「嫌い」
「好き」
「嫌い」
「好き」
「嫌い」
「好き…」

こんなふうに都合よく「好き」と貴方から聴けたなら…と、風に舞った花びらを眺めていた。

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