好きな本
彼の好きな本が変わった。
図書委員をしている私には分かる。
彼の好みの本を。
学校一の秀才と言われている彼は、
純文学から推理小説など勉強や思考を巡らせるような、
そんな本が好きだったはずだ。
だけど、そんな彼が最近「恋愛小説」を手に取るようになった。
最初はたまには違うものでも読みたいと思ったのかと考えていたけれど、どうやらとある女子の影響らしい。
というのも読書週間が始まり、そのとある子が持ってきた本と同じだったからである。
勝手な憶測が頭に飛び交う。
その子のために読んでいるのだろう。
話題を作るための口実なのだろうか?
時に表紙を手で拭う様は、彼女の綺麗な手を撫でているようにも見えた。
嫌なものを見た。
見なければ良かった。
遠目から見た挿絵のページは、今日の読書の時間に彼女が見ていたページと同じだった。
あの時の彼女と同じように微笑む彼の顔が、私に取ってはこの上もなく毒だった。
6/15/2024, 1:37:40 PM