1年前
1年前の君は、この桜の樹の下で僕に微笑んでくれた時に、とても綺麗だと思った。
突然の『好きです』という告白に、僕の顔はかなり熱くなった。戸惑った。そして最終的には、やんわりお断りした。
その時の自分は『恋愛』というものが分かっておらず、他人事のようにしか感じられなかったからだ。
そんな気持ちのままで、相手と付き合うというのは、あまりにも失礼だと思った。
というのは建前で本音は、恋愛をすることで何か変わるかもしれない自分に怯えていたのかもしれない。
振られたあとでも懸命に笑う君をみて、何とも言えない気持ちになった。好きとは違うけれど、大切にはしたい人だと思った。
『友達』という形で、この1年間過ごしてきた僕らは、もうすぐ卒業を迎える。
卒業後は進路は別々だ。
彼女は地元の大学に、僕は東京の大学に。
お互い別々の道を歩む。
そう思うと少し胸がざわざわした。
その正体が何かは分かっていたけれど、今更意識することでもない。
キュッと唇を噛み締め、桜を眺めていた彼女の隣に立つ。
今度は僕から伝えよう。
「好きです」
時間はかかったけれど、1年前の答えを出した。
6/16/2024, 1:13:44 PM