朝、
アラームが鳴った。
忌々しい音が、
鳴り響いた。
何時間もあったはずの睡眠時間は、
驚くほど一瞬だが、、、もう慣れた。
これから1日が始まる。
起きなきゃいけない。
動かなきゃいけない。
だけど、
体と精神は、
強く時間に拒絶した。
"やらなきゃいけない"
そう焦る心を、
強く否定した。
息をするように浮かぶ "辛い" の文字に、
何も感じなくなった自分が怖かった。
できることなら、
いっそこのまま消えてしまいたいとも思った。
でもそんなことできるはずもなく、
ただ、
だるい体を無理矢理動かした。
いつからこうなったんだっけ、、、。
そんな疑問を繰り返し、
毎日毎日、
自分自身に呆れながらも、
またやり直したいと立ち上がって、
まだ生きていたいと願える日まで、
僕は幾度と、
同じ明日に、変わらぬ明日に、
来るな
時よ止まれ
を連願し、
違うかもしれない明日に、
変わるかもしれない明日に、
早く来い
早く進めと、
そう葛藤した。
夜、
気分転換にマンションの屋上から下を見た。
高く見下げた顔は、
数万の明かりに照らされた。
深夜0時過ぎの都会は賑わった。
沢山の人々が夜の街に歩き、
ひと時を過ごした。
ヤンチャな若者の暴れ集団も居れば、
終電を逃し絶望するサラリーマンも居た。
ベロベロに酔った酒臭そうなおじさんも、
見慣れた光景だった。
一際賑わう都会だったが、
高い屋上にまで漂う虚しさは、
強制的な明かりの中に、
何も見つけることは出来なかった。
雲一つない夜空に、
星を見つけることは出来なかった。
夢を見た。
辺り一面、
花の香りに包まれた。
赤、青、ピンク、黄色
いろんな色の花が、
視界を埋め尽くした。
幸せな夢だった。
穏やかな時と共に、
小鳥がさえずり、
平和を知らせた。
ずっとあそこに、
いたかった。
そんな小さな願いも、
神に届けるには脆すぎた。
神に届けるには、、、
普段の僕が、ダメだった。
アラームが、
全てを壊した。
瞼を開くと、
生臭いゴミのにおいに包まれた。
まだ残る記憶の花は、
変色し、枯れ果てた。
もう一度あの場所に
戻りたい。
心からそう、、、思ってしまった。
"まだ生きていたい"
幼い頃の健気な願いだった。
そんな願いは今、、、
消え去った。
昨日、、雨が降った。
人間はどこにもいなくて、
いつも鳴いてる鳥たちも、
最初からいなかったみたいに、
姿を消した。
小さな虫さえ、
見つけ出せなかった。
静まり返った街は雨雲で薄暗く、
どんよりしていた。
雨雲で遮られた日光の筋は、
無情にもプツリと切れた。
下を見ることを許されない快晴の空は、
輝く虹を憎んだ。
誰もいない雲の上を、
空は嘆き、孤独に怯えた。
世界を包む空は、、、
それほど強くはなかった。
常に充電切れの携帯
電話も
LINEも
受け取れない。
誰かが話したいことも気づかない。
存在すら忘れて、
都合のいいように目を逸らし、
臆病な僕は瞼を閉じた。
当然充電するつもりもなくて、
真っ暗になって動かない画面を見つめ、
ただ、
受信に揺れない無音の直方体を、
遠ざけた。
誰からも分からない嘘を抱え、
強がって、
偽りの笑みを浮かべ、
今日も僕は、
誰かを無視した。