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11/1/2025, 9:50:07 PM

【凍える朝】

凍える朝。
吐く息が白く膨らんで、風にさらわれていく。
自転車を押しながら信号を待っていると、「おーい!」と声がして振り返った。
手をポケットに突っ込んだまま、あいつが小走りでやってくる。

「さむっ。指終わったんやけど。」

「手袋したらいいやんか。」

「朝の俺にそんな知能はない。」

くだらない会話で笑いながら、コンビニへと避難する。
温かい空気に包まれて、悴んだ指がじんとする。

肉まんを買って外に出る。
湯気が顔に当たって、思わず目を細めた。

「これ持つだけで生き返るわ。」

「手袋みたいなもんや。」

あいつがかじりつくのを見て、「それ絶対猫舌で死ぬやつやん。」と笑うと、案の定「熱っ!」と飛び跳ねた。

道端の霜が朝日に光っていた。
白い息と笑い声が混ざって、世界が少しだけやわらかく見える。

「このあとなにするん?」

「さぁ。とりあえず、もうちょい歩こうや。」

凍える空気の中で、なぜか足取りは軽かった。
寒さを笑い飛ばせる相手がいるだけで、冬もちょっとはマシになる。

10/31/2025, 12:26:46 PM

【光と影】

夜の屋上に集まるのが、いつの間にか恒例になっていた。
缶を鳴らして、くだらない話を延々と続ける。

「あの時のお前、マジで傑作やったわ。」

「もうええって! あれは風のせいやん!」

「お前の顔の方が風よりよっぽど強烈やったわ。」

笑いが止まらず、誰かが床を叩く。
揺れる街のネオンが、俺たちの顔を赤や青に染めていく。
遠くのクレーンが瞬き、下からはタクシーのクラクション。
この街は眠らない。
だからこそ、俺たちもまだ眠れない。

誰も特別な話なんかしてない。
でも、この時間が一番熱くて、一番本気だ。
どうでもいい冗談で互いの疲れを笑い飛ばして。
何度も夜を越えて、気づけば並んでここにいる。

光の下ではしゃぎ、影の中でふざけて、でも本気で向き合って。
この街のどこよりもうるさいこの屋上が、たぶん俺たちの光なんだと思う。

外はもう朝焼け。
光と影が混ざる時間に、俺たちはまだ笑っていた。

10/30/2025, 1:13:45 PM

【そして、】

海沿いの小さな駐車場。
潮の匂いが漂い、波の音が車体をくすぐる。
2人は古びた車の後ろに腰を下ろし、カップ麺の湯気をぼんやり眺めていた。

「結局、目的地ってどこやったっけ。」

「しらん。気が向いたほうに行けばええやろ。」

そんな無計画さは、昔から何ひとつとして変わっていない。

昼間は道に迷い、ガソリンスタンドで笑われ、知らない町でソフトクリームを食べた。
くだらない出来事の連続なのに、なぜか胸の奥が軽い。

夕日が沈み、波がゆっくりと赤く染まる。

「なあ、次はもっと遠いとこ行こうや。」

「ならお前が運転しろよ。」

「いややわ。お前の車やろ。」

「うるさいわ、助手席のくせに偉そうに言うな。」

笑い声が風に乗って広がっていく。
夜の気配が近づいても、話は途切れない。
どこへ向かうのかもわからないまま、それで十分だと思えた。

空の端に、一番星が瞬く。
ふたりの旅は、まだ始まったばかりだった。

10/29/2025, 1:51:22 PM

【tiny love】

駅前の小さなカフェ。
その片隅のテーブルで、2人は今日もくだらないことで笑い合っていた。
ひとりはコーヒーのミルクをこぼし、もうひとりはそれを見て肩を震わせている。
周りの視線なんて気にしない。
ここではそれが日常だった。

「はい、ティッシュ。」

そう言って差し出された紙ナプキンを、わざとふくれっ面で受け取る。
そうやって軽口を叩きながらも、お互いのことはちゃんと見ている。
特別落ち込んだ日でも、ここに来ればいつの間にか笑ってしまうのだ。

大きな夢の話をしたり、好きな映画を熱く語ったり、時には「明日は何食べよう?」なんて小さな相談もする。
そんなちっぽけな時間の積み重ねが、いつの間にか特別な宝物になっていた。

「俺らって、なんかええよな」

気恥ずかしさを隠すように、片方がコーヒーを一口すする。
もう片方は鼻で笑いながらも、どこか嬉しそうにカップを合わせた。

ちょっとしたいたずらも、小さな応援も、全部ひっくるめて彼らのささやかな愛。
派手じゃないし、大声で語るほどのものじゃない。けれど、心の奥でずっと温かく灯り続けるのだ。

今日もまた、笑い声がカフェに跳ねる。明日もきっと、それは変わらない。

10/28/2025, 1:34:55 PM

【おもてなし】

夜の街を包む柔らかな灯りを頼りに、小さな店の扉を押した。
木の鈴がころんと鳴り、温かな空気が出迎える。
カウンターには磨き込まれた木目が淡く光り、奥ではスパイスの香りが静かに漂っていた。

席に腰を下ろすと、マスターが軽く会釈をしながら、湯気の立つ一杯を差し出してくれた。
言葉は少ないけれど、その仕草に心の奥がほぐれていく気がした。
初めてだが、どこか懐かしく安心した。

調理場で手を動かしながら、ふとマスターがこちらに視線を寄こす。

「外は寒かったでしょう。これ、うちのおすすめです。よかったら。」

その声は落ち着いていて、不思議と安心を溶かし込んでくる。

湯気の向こうに見える横顔は、少し不器用そうなのに、丁寧さが滲んでいた。
気付けばいつの間にか、こちらも話しかけていた。
どこに住んでるのか、どんな仕事をしているのか、ぽつりぽつりと会話が続いていく。

グラスが触れ合う音が響いた瞬間、ふと思った。
この人とは仲良くなれそうな気がする。
まだ始まったばかりの時間なのに、未来の楽しさが小さく膨らんでいく。

いつか常連になって笑い合っているかもしれない。
そんな予感を抱えながら、温かな一杯をもう一度口へ運んだ。

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