さよならを全部言い切る為に、夜の海に飛び込んだ。
暗い、冷たい、海の中。底も何も見えないまま沈んでいく。顔の横を銀の魚が掠めて通る。
深く、深く、ずっと深くに。
涙さえもわからなくなるこの黒い海の中で、どうか私の言葉を沈めておくれ。
吐いた醜い私の心情は泡にしかならなくて、叫ぶように肺の空気を逃がしていく。浴衣の隅々にまで水が通り、まるで金魚のようにふわりと漂う。
指の間の擦れ傷が海水に染みて痛い。あの時に 心の鼻緒も切れてしまった。
ふと、思い出が蘇って あなた の優しい言葉を思い出して、まるで私に浮きをつけたようにふわりと上がった。
上を見上げれば海面には鮮やかな火の華が揺らいでいた。
淡く揺らめき消えていくその灯は、あなた が別れを言っているようで、沈み切れなかった私はただ…空に残った朧のような煙を見つめて、
眼からは一雫の海が落ちた。
辛い、息詰まった日々、
僕らは夜空を見上げてた。暖かく光る一等星が僕たち2人の標で、いつか いつの日か 自由になれたなら、
あの星に会いに行こう と約束をしたんだ。
この羽でずっと飛んでいけばいつかは辿り着くだろうって話してた。
その時間が唯一の楽しみだったのに。
限界が来て、君の心は壊れてしまった。
解放してくれと僕に懇願してきて、その痛々しい姿に
僕は
僕は 僕は
君の願いを叶えたんだ。
暖かさと感触を今でも覚えている。
放心していたら、そのうちに仲間達が集まってきて、罪人の僕は酷い仕打ちを受けた後に燃やされて、
空から落とされた。
結局、君との約束は守れなかったけど、
落ちて
落ちて
焼け焦げた先に
あの星のような 子を見つけたよ。
もし君が一緒だったらって何度も思う。
もう一度君に会えたら、と夢をみる。
願った所で仕方がない事を、星空を見ながら考えてる。
いつもより一段と眩しい月がこちらを見ている。
まるで小さい太陽のようで、私は思わず目を細めました。錆びついた屋根が月の光に照らされて優しく光っていて、窓の外からの見慣れた景色が 今日はどうやら少し違うようでした。
窓の隙間から涼しい風が入ってきて、夏の始まりの匂いが鼻を掠めた。
いつもより月が近くて、今なら指先くらい届いてしまうのではないかとすら思うほどに、とても大きく見えています。
誰も居ない。誰も来ない。
この月を一緒に見てくれる人が居ないのが少し寂しいけれど、違う所で知らない誰かが、私と同じ時にこの月を見ているのでしょうか。
切なくなるほどに眩しくて、愛しくなるほどに優しい光が 誰かの気持ちをほんの少しでも軽くしてくれているのなら、こんなにも嬉しい事はない。
地に足をつけて、空を見上げる
また何処かでね、眩しいお月様。
過ぎてさえみればあっという間で、振り返るとそんなに前の事だったかと驚く。
一日一日を覚えている訳ではないし、思い出と呼ぶものも限られてはいるけれど、懐かしいと尊ぶ事が出来ればそれは紛れもなく宝物だろう。
戻ってこない時間だから、二度と同じ事は起こらないから、私は思い出にこんなにも焦がれている。
手を伸ばせど届く事はない、寂しい感情も その時の記憶も、たまらなく愛おしくて。たまに泣きたくなるけどそれでもいいや と思う。
一年前よりもずっと大人になったつもりでいたけど、全然私は子供のままで恥ずかしい。
後悔や間違いを犯さないようにと努めようとして、私はそれができると思っていた。
けれど、どんなに頑張ったって後悔は残るし、間違いだって犯す。それはずっと無くならないんだろうな。
だから私は後悔や間違いを減らすように頑張りたい。大きな後悔をしないようにしたい。
それなら無謀ではないかなと思っている。
一年前の可哀想でおバカな私は、それでも幸せを見つけられただろう。今の大バカな私も、日常の中にささやかな幸せを見つけたい。
コロコロと落ちた。ドシャドシャと降り注いだ。僕の心臓はバクバクと脈を打っている。
7歳 僕は君と同い年だ。家から下って公園に行こう、昨日とおんなじ鬼ごっこをしよう、今日は君が鬼の役。
8歳 僕は君と同い年だ。学校の宿題は嫌だけど、怒られるから君とやる、答えを写しあうんだ。
9歳 僕は君と同い年だ。小川を眺めていたら、魚が泳いでいた。僕と君は冷たい水にはしゃいで飛び込んだ。
10歳 僕は君と同い年だ。いつもより雨が強かった。
11歳 僕は君より一つ年上。前より学校が退屈だ。
15歳 僕は君より五つ年上。蒸し暑い中歩いていたら、君に会った。ちっとも変わらないね と言ったら、君は そりゃそうさと笑った。
20歳 僕は君より十歳年上。夢の中で君と話した、君は相変わらず子供のままで、僕だけお兄さんだ。幼い君に愚痴をこぼすと、君はカラカラと子供らしく笑った。
コロコロと落ちた。ドシャドシャと降り注いだ。僕の心臓はバクバクと脈を打っていた。
それから君は子供のままだ。