yurerususuki

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月の光に照らされた街に出かけよう。ランタンに火を灯して、みんなを起こさないようにそっとドアを引く。
ごつごつとした石レンガの地面につまずかないように手を繋いで、互いの手の熱を分け合いながら薄明かりの街を歩いていく。
この時だけは、いつも賑やかな様子とは違くて…ちょっとした肝試し気分だ。君と一緒なのにどこか寂しくて、少しだけ怖い。雨上がりの地面には月の反射が映り込んでいて、頼りの灯りはこれとランタンだけ。なので真っ黒の猫がいたって気づかない。

僕らの子供時代はそう止まってはくれない。いつか僕の胸も踊らなくなる日が来るだろう。…ならば、君と夜の散歩だなんて、大人なら簡単にできてしまうイベントは今のうちだけ。僕たち子供のうちしかはしゃげない特権なのかもね。
忍び込んだ図書館の中で本を熱心に見ている君にそっと呟く。そろそろ帰ろうか。

僕らは暖かいベッドがあって初めて、安心して少しだけ夜更かしができる。悪戯をしているようなくすぐったい気持ちで毛布を被り…こんななんでもない気持ちが大人になった僕らの思い出になりますように、そっと目を閉じた。

1/14/2025, 4:09:39 PM