yurerususuki

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さよならを全部言い切る為に、夜の海に飛び込んだ。
暗い、冷たい、海の中。底も何も見えないまま沈んでいく。顔の横を銀の魚が掠めて通る。
深く、深く、ずっと深くに。
涙さえもわからなくなるこの黒い海の中で、どうか私の言葉を沈めておくれ。

吐いた醜い私の心情は泡にしかならなくて、叫ぶように肺の空気を逃がしていく。浴衣の隅々にまで水が通り、まるで金魚のようにふわりと漂う。
指の間の擦れ傷が海水に染みて痛い。あの時に 心の鼻緒も切れてしまった。

ふと、思い出が蘇って あなた の優しい言葉を思い出して、まるで私に浮きをつけたようにふわりと上がった。
上を見上げれば海面には鮮やかな火の華が揺らいでいた。
淡く揺らめき消えていくその灯は、あなた が別れを言っているようで、沈み切れなかった私はただ…空に残った朧のような煙を見つめて、
眼からは一雫の海が落ちた。

8/15/2024, 4:25:15 PM