いよいよ学校が始まり、嫌だなぁと思いながら通学路を歩く。学校に着き、最初の試練のクラス発表が待ち受けていた。こころの中でどうか仲いい人と離れませんように!と神様に願いを込めながら目を開く。
えぇっと、クラスは……3組、かぁ。去年も3組だったがまさか今年も3組とは。とほほ。気を取り直し、友達の名前があるか要チェックしていこう。
…………すぅ。終了のお知らせが参ります♪只今人生終了の鐘が鳴り響いております。終わったぁぁぁぁぁぁぁあ。やばいヤバイ。仲いい人と1人もいないじゃないか…
途方に暮れながらも自分のクラスの下駄箱へと靴をしまい、教室へと足を向ける。ピタ、足は3組の教室の前で止まった。深呼吸をし、新しいクラスへと扉を開ける。数人の視線がこちらへと向けられる。この視線苦手なんだよな。気にせず名前を確認し机へと座る。周りは仲のいい友達と一緒になれて喜んでいたり、自分と同じように1人の人もいるようだった。性格が悪いようだが、自分と同じような人たちを見て少しホッとした。いや、性格悪いな。そのままなんやかんやあって始業式も終わり、新一年生の紹介も終わり、あっという間に帰る時間へとなった。ちなみに担任は前と同じだった。あの先生苦手なんだよなぁ。2連続はきついぞ。お、何やら友達が待っていてくれたようだった。友達に声をかけ一緒に路地へ帰る。一緒のクラスが良かったよなぁとかクラスどうだったとか他愛のない会話をしながら友達と喋れる束の間を楽しむ。友達の素晴らしさが今回で分かった気がする。友達と喋れるのって凄く幸せなことなんだろうなって。あ~、こいつと喋ってると前のクラスに戻りたくなる。まぁ、結果を受け入れるしかできないけどな。慣れるまでの辛抱だ。人間適応能力は高いんだ、活用してやらないとな!
涙
雨が降っている。
ポタ。ポタ。
雨だからかぼやぼやしてくる世界。何でだろう。ぬぐってもぬぐってもぼやぼやするんだけど。嫌だなぁ。そんな目で私をみないで。なんで君がそんな顔するの。驚いたような泣きそうな顔してさ。こっちだってぼやぼやするのやめたいんだから。
「…泣いてるのか?」
「……ぁ、え?」
凄く、納得した。そっかぁ…なんで世界がぼやぼやしてるのかやっと分かった気がする。泣いてるのか、私。
_そんな自分自身に自嘲の笑みを零す。未だに涙は止まらないままだけど、自分でどうにかできるわけじゃないから仕方ない。 なんて考えながらふと顔を上げるとそこには何か言いたげな君がいた。
「……なんで君がそんな顔をするかなぁ」
「…ごめん。」
「どうして謝るの?何か言いたいことがあるんでしょ。どうせ。」
「……まぁな。でも、雨やんだな」
あ…本当だ。いつの間にかぼやぼやも雨もやんでた。
それに虹が出てる。
私が外を見ているのが気になったのか君も外を見始めた。君も外の景色に見入ってたね。
私と君。
どれくらい時間が経ったんだろ。長かったような短かったような静けさを破ったのはどちらだっただろうか。
__はぁっ!!
あ…れ?私はどうやら夢を見ていたようだった。正確には過去の記憶といったほうが正しいだろうか。今日は、あの日と同じ雨の降る日らしい。窓を越え、雨音が鼓膜に響く。
雨の日はあまり好きじゃない。理由は簡単。あの日も雨の降る日だったから。もう好きだった彼はいない。もう二度と会話をすることが出来ないと実感してしまうから。雨の降る虹の日、彼はあの後私のためにアイスクリームを買ってくると言って出かけた後帰らぬ人になったの。
私はずっと後悔してる。もっと話せば良かったと。薄情な事を言うが死人は口無しだ。私もそう思うな。死んでしまったら話せないのだから。
もっと話したかった。後悔はこの先ずっと残るだろう。けれど、もし死後の世界があるのだとしたら君に会いに行く。
会いに行って私の想いや後悔をぶつけてやるんだ!
人生生きてたら後悔の十個や二十個あるんだからさ。ぶつけてやらないと、生きてるうちに。
後悔しない人生なんてないのかもしれない。現に私がそうだ。だけどたまには肩から重荷を外して、たまに背負って生きていこう。
難しいけどね。どうせ人間終わりは来るんだ。自分の人生、生きたいように生きたって多少は怒られないよ。
今日生きれたんだ。明日も終わりが来るまで生きるぞー!
秘密の場所
ミーン_ミーン
蝉の鳴き声が響き渡る。
『あ!お姉ちゃん見つけた!!』
「くそぉ、見つかっちゃったか!あおいは、見つけるの得意だね。」
『えへへ〜、でしょ!』
そう言って、姉が妹の頭を撫でる。二人はかくれんぼをしており、今は妹が探す側のようだった。
私は、懐かしいなと感傷に浸っていた。
『次はね、お姉ちゃんがあおいを探してね!!』
「分かったよ。じゃぁ隠れておいで。30数えたらそっちへ行くからね。」
『は~い。』
「い~ち、に〜い…」
姉がカウントし始める。それに気付いた妹は急いで隠れ始めた。けれども私は、隠れる場所を知っている。いつも決まってるあの場所だから。
「も〜いいかい〜?」
姉はそう言い放ち、妹を探し始めた。姉は隠れている場所が分かっているのか足取りに迷いがなかった。やがて足取りはある場所で止まった。それは和室の押し入れだ。姉は勢い良く押し入れを開ける。
_すぅ
「あおい、み〜つけた!!」
大声で姉が言葉を発する。
私は、あ~ぁ見つかっちゃったなとがっくりした。
そんな私とは裏腹に見つかった当本人の妹は、嬉しそうにしていた。
「かくれんぼの意味って知ってる?」
姉は呆れたように、でも何処か愛おしそうに言う。妹はきょとんと首を傾げた。そして元気良く首を縦に振った。それを見て姉はクスリと笑った。それにつられてか妹も笑い始め、二人は一斉に笑った。
大人になったあおいは、姉との秘密の場所の思い出を大事に思い出していた。幼かったあの日のような私と姉のように、私もクスリと笑う。そしてそんな私を見て、呆れた顔をしている姉がいたとさ。
ひらり
散歩中、ひらりと落ちてくる何かが頬を掠める。何かが落ちる前にキャッチするとそれは桜の花びらだった。僕は、もうそんな時期かと一人笑う。
冬ももうそろそろ終わりで、お次は春か。この時期には色々な想い出が詰まっている。なぜかと言うと僕はもうじき卒業を控えているからだ。去年まで三年生を送る会や卒業式の準備を面倒臭いなどと言っていた自分がもう卒業するなんて。なんだか不思議な感じだな。
何だかんだ言って、友達とふざけ合ったり先生に怒られたり、色々あったけど楽しかったな。なーんて、思考を巡らせていると、友達の綾坂にばったり偶然鉢合わせた。
『お!やっほ〜』
綾坂は、自分に気付いたらしく声を掛けてくれた。何だかさっきまで卒業など考えていた自分がバカらしく思えてきてしまうほどお気楽そうな顔でこっちに笑顔を向けていた。綾坂の笑顔につられてこっちまで笑顔になって来たようだ。まぁ、元々綾坂は人を元気にさせるパワーがあり、とてもいい友達だと常日頃思う。なんて一人うんうん頷いていると、綾坂は心配そうに此方を見つめていた。折角だから相談させてもらうことにした。
「突然なんだけどさ、相談させてもらってもいいか?」
綾坂は決して人を馬鹿にするような人ではないとわかってはいるが、少し不安にはなる。しかし、その心配はなかったようだ。綾坂はさも当たり前のようにもっちろんと快く承諾してくれた。では早速言う事にしよう。
「僕さ、さっきまでさ卒業のことについて考えてたんだよね。」
綾坂はきょとんとしながらも頷いた。
「だってさ、卒業したらこの日常も終わりを迎えちゃうかもしれないしさ、悲しいじゃん…。」
綾坂は長くため息をついた。そして一息ついてこう言った。
『勝手に終わりにすんなよな!!』
「ぁ…っいて」
僕は一瞬呆気にとられた。次の瞬間、綾坂が僕のおでこをデコピンしたのだと気付いた。
「なにするんだよ」
ジトっと綾坂を僕は睨んだ。
『だぁ~から!勝手に終わりにするんじゃねぇって言ってんの!!』
「え…?」
『お前は卒業したら俺等の友情がなくなると思ってんの?俺はやだね。ぜってぇ終わりにさせないし!』
綾坂はビシッと僕に人差し指を向けた。
僕は心がじ~んとした。思わず涙が出そうになったが、それを隠すように笑った。すると綾坂も同じように笑い返してくれた。バカみたいに面白くもないのに二人、笑い転げた。
「ぜぇぜぇ」
『はぁはぁ』
二人して笑いすぎて息切れを起こしてましった。
笑ったことでスッキリした僕はある疑問を言うことにした。
「卒業しても友達で居てくれる?」
綾坂はとびっきりの笑顔で答える。
『あぁ!!もちろんだ!』
綾坂のその言葉に僕は救われたのだ。
その後、僕と綾坂はと言うと卒業しても社会人になってもずっと“親友”で居続ける事になるのだがそれはまだ幼い僕等には知る由もないのであった。
あの日の温もり
僕は、同じ夢をよく見るんだ。といっても同じなのは顔が黒いもやもや見たいので覆われている彼女が僕に優しく抱擁をしてくれる所までで後の内容はバラバラなんだけどね!なんて一人夢の中で思考を巡らせていると、顔が黒いもやもやで覆われている彼女が此方に来て恒例の抱擁をしてくれた。いつもは喋らない彼女は珍しく『あったかいね』の一言を零した。とても優しくて落ち着く何処か懐かしい声だった。すると次は背中をぽん…ぽん…とリズムよく背中を優しく撫でてくれた。まただ、懐かしい感じがする。これがデジャブって奴かな?ふふ。変なの。夢の中の貴方は一体誰なんだろうね。誰かに似ている気がする。僕は、思い出したくて掴めそうで掴めない記憶の糸を必死にたぐり寄せよせる。なんだか分からないけど思い出さなくちゃ行けない気がする。でも、きっと思い出せば彼女は二度と出てきてくれない気がして。う〜ん、う〜んと彼女の腕の中で悩ましく頭を抱えていると、突然チリンと鈴の音がした。なんだろうと音の方へ顔を向けるとそこには黒猫が、いた。此方をジッと見つめていた。まるでこっちに来いと言っているように、黒猫は歩き出した。僕は彼女の腕の中を抜け出してその猫を追いかけることにした。なんだか追いかけなくちゃいけない気がして。猫は、まるで僕がちゃんと付いてきてるか確認を取るように時々後ろを振り向く。付いてきているのを確認すると満足気に歩き出す。なんだかこれもデジャブな気がする。なんて考えていると黒猫はある部屋の前で止まった。黒猫は開けろとでも言っているようで僕をジッと見つめている。不思議と覚悟を決めろとでも言っているように感じた。ゴクリ。僕は意を決してドアノブに手をかける。そこは至って普通の部屋だった。まただ懐かしい感じがする。部屋の主には悪いと思うが好奇心が勝ち部屋を探索することにした。部屋の左側にはベッドがあり、右側には勉強机が置いてあった。僕は、なぜだか分からないけど勉強机がすごく気になり、部屋の右へ足を進める事にした。そこには写真立てがあり、ほかには何もなかった。写真立てには写真が入れられていた。ぱっと見家族の写真だろうか?僕は写真立てを手に取ろうとするが、…うッ!目眩に襲われた。微かに見えた写真立ての写真には僕と、知らない黒いもやもやをまとった彼に夢の中の彼女が…そこには写っていた。三人仲良く笑っていた。そこで僕は記憶がシャットダウンした。
記憶がシャットダウンする直前、僕は思い出してしまったたのだ。ずっとあった違和感…それはこれは夢なんかじゃなくて走馬灯だと言うことだ。誰の走馬灯なのかって?僕のだよ。顔が黒いもやもやで覆われていたのは僕のお母さんだったんだ。そしてあの写真立てに写っていたのは僕のお父さんで、あの黒猫は僕の家族のくーちゃんだ。とても幸せだったなぁ。
なんて考えていると黒猫のくーちゃんがいつの間にか僕の近くに来ていた。まるで今はどうなの?って聞いてるみたいに。大丈夫。今も幸せだよ。ありがとうね。
どうやら僕はくーちゃんを庇おうとしてくーちゃんと一緒に死んでしまったみたいだね。
それじゃぁ、行こうか。あの日の温もりをくれたお母さんとお父さんがこっちに来るまでね。
その日が来るまではまたね。