あの日の温もり
僕は、同じ夢をよく見るんだ。といっても同じなのは顔が黒いもやもや見たいので覆われている彼女が僕に優しく抱擁をしてくれる所までで後の内容はバラバラなんだけどね!なんて一人夢の中で思考を巡らせていると、顔が黒いもやもやで覆われている彼女が此方に来て恒例の抱擁をしてくれた。いつもは喋らない彼女は珍しく『あったかいね』の一言を零した。とても優しくて落ち着く何処か懐かしい声だった。すると次は背中をぽん…ぽん…とリズムよく背中を優しく撫でてくれた。まただ、懐かしい感じがする。これがデジャブって奴かな?ふふ。変なの。夢の中の貴方は一体誰なんだろうね。誰かに似ている気がする。僕は、思い出したくて掴めそうで掴めない記憶の糸を必死にたぐり寄せよせる。なんだか分からないけど思い出さなくちゃ行けない気がする。でも、きっと思い出せば彼女は二度と出てきてくれない気がして。う〜ん、う〜んと彼女の腕の中で悩ましく頭を抱えていると、突然チリンと鈴の音がした。なんだろうと音の方へ顔を向けるとそこには黒猫が、いた。此方をジッと見つめていた。まるでこっちに来いと言っているように、黒猫は歩き出した。僕は彼女の腕の中を抜け出してその猫を追いかけることにした。なんだか追いかけなくちゃいけない気がして。猫は、まるで僕がちゃんと付いてきてるか確認を取るように時々後ろを振り向く。付いてきているのを確認すると満足気に歩き出す。なんだかこれもデジャブな気がする。なんて考えていると黒猫はある部屋の前で止まった。黒猫は開けろとでも言っているようで僕をジッと見つめている。不思議と覚悟を決めろとでも言っているように感じた。ゴクリ。僕は意を決してドアノブに手をかける。そこは至って普通の部屋だった。まただ懐かしい感じがする。部屋の主には悪いと思うが好奇心が勝ち部屋を探索することにした。部屋の左側にはベッドがあり、右側には勉強机が置いてあった。僕は、なぜだか分からないけど勉強机がすごく気になり、部屋の右へ足を進める事にした。そこには写真立てがあり、ほかには何もなかった。写真立てには写真が入れられていた。ぱっと見家族の写真だろうか?僕は写真立てを手に取ろうとするが、…うッ!目眩に襲われた。微かに見えた写真立ての写真には僕と、知らない黒いもやもやをまとった彼に夢の中の彼女が…そこには写っていた。三人仲良く笑っていた。そこで僕は記憶がシャットダウンした。
記憶がシャットダウンする直前、僕は思い出してしまったたのだ。ずっとあった違和感…それはこれは夢なんかじゃなくて走馬灯だと言うことだ。誰の走馬灯なのかって?僕のだよ。顔が黒いもやもやで覆われていたのは僕のお母さんだったんだ。そしてあの写真立てに写っていたのは僕のお父さんで、あの黒猫は僕の家族のくーちゃんだ。とても幸せだったなぁ。
なんて考えていると黒猫のくーちゃんがいつの間にか僕の近くに来ていた。まるで今はどうなの?って聞いてるみたいに。大丈夫。今も幸せだよ。ありがとうね。
どうやら僕はくーちゃんを庇おうとしてくーちゃんと一緒に死んでしまったみたいだね。
それじゃぁ、行こうか。あの日の温もりをくれたお母さんとお父さんがこっちに来るまでね。
その日が来るまではまたね。
3/1/2025, 10:04:34 AM