ひらり
散歩中、ひらりと落ちてくる何かが頬を掠める。何かが落ちる前にキャッチするとそれは桜の花びらだった。僕は、もうそんな時期かと一人笑う。
冬ももうそろそろ終わりで、お次は春か。この時期には色々な想い出が詰まっている。なぜかと言うと僕はもうじき卒業を控えているからだ。去年まで三年生を送る会や卒業式の準備を面倒臭いなどと言っていた自分がもう卒業するなんて。なんだか不思議な感じだな。
何だかんだ言って、友達とふざけ合ったり先生に怒られたり、色々あったけど楽しかったな。なーんて、思考を巡らせていると、友達の綾坂にばったり偶然鉢合わせた。
『お!やっほ〜』
綾坂は、自分に気付いたらしく声を掛けてくれた。何だかさっきまで卒業など考えていた自分がバカらしく思えてきてしまうほどお気楽そうな顔でこっちに笑顔を向けていた。綾坂の笑顔につられてこっちまで笑顔になって来たようだ。まぁ、元々綾坂は人を元気にさせるパワーがあり、とてもいい友達だと常日頃思う。なんて一人うんうん頷いていると、綾坂は心配そうに此方を見つめていた。折角だから相談させてもらうことにした。
「突然なんだけどさ、相談させてもらってもいいか?」
綾坂は決して人を馬鹿にするような人ではないとわかってはいるが、少し不安にはなる。しかし、その心配はなかったようだ。綾坂はさも当たり前のようにもっちろんと快く承諾してくれた。では早速言う事にしよう。
「僕さ、さっきまでさ卒業のことについて考えてたんだよね。」
綾坂はきょとんとしながらも頷いた。
「だってさ、卒業したらこの日常も終わりを迎えちゃうかもしれないしさ、悲しいじゃん…。」
綾坂は長くため息をついた。そして一息ついてこう言った。
『勝手に終わりにすんなよな!!』
「ぁ…っいて」
僕は一瞬呆気にとられた。次の瞬間、綾坂が僕のおでこをデコピンしたのだと気付いた。
「なにするんだよ」
ジトっと綾坂を僕は睨んだ。
『だぁ~から!勝手に終わりにするんじゃねぇって言ってんの!!』
「え…?」
『お前は卒業したら俺等の友情がなくなると思ってんの?俺はやだね。ぜってぇ終わりにさせないし!』
綾坂はビシッと僕に人差し指を向けた。
僕は心がじ~んとした。思わず涙が出そうになったが、それを隠すように笑った。すると綾坂も同じように笑い返してくれた。バカみたいに面白くもないのに二人、笑い転げた。
「ぜぇぜぇ」
『はぁはぁ』
二人して笑いすぎて息切れを起こしてましった。
笑ったことでスッキリした僕はある疑問を言うことにした。
「卒業しても友達で居てくれる?」
綾坂はとびっきりの笑顔で答える。
『あぁ!!もちろんだ!』
綾坂のその言葉に僕は救われたのだ。
その後、僕と綾坂はと言うと卒業しても社会人になってもずっと“親友”で居続ける事になるのだがそれはまだ幼い僕等には知る由もないのであった。
3/3/2025, 12:02:53 PM