愛情
大学で一目惚れした子。花のような笑顔を咲かせ、鈴のような心地の良い声を出す、無口な俺にも愛想良く接してくるあいつに惹かれるはずはなかった。
俺から毎日挨拶をし講義も近くに座るようにするとあいつから声をかけてくれるようになった。困っている時は手を差し伸べ、あいつの元彼について泣かれた時は怒りでどうにかなりそうだった。ゆっくりと時間を費やし他愛もないことで話したり、あいつの愚痴を聞いたりすると簡単に俺に懐いた。
食堂にいる時あいつから「隣に座ってもいい?」と恥ずかしそうにはにかみながら言われた時は思わず心の中でガッツポーズを取ってしまった。
ある日いつものように食堂で隣に座り飯を食っていると、「バイトが一緒だった時は驚いた」と言われた。あの時は肝が冷え、俺の計画にあいつが気づいたかと焦ったが、「運命みたいだね」と笑いながら言うあいつを見てそっと安堵した。
言葉巧みに自分が働いているバイト先にあいつを誘いバイト先で顔を合わせた時の高揚感はたまらなかった。あの時は必死に口角を抑えるのが大変だったなぁと思いながら、俺の手を握り楽しそうに話をしている可愛い 彼女 の顔を見る。
俺の努力が身を結びやっとあいつと彼女になることが出来た、彼女の声をほくそ笑みながら聞いているとこちらを向いた彼女と目が合う、「そんなに見ないで」恥ずかしそうに小さく笑う彼女が愛しい。
彼女の目からは俺が自分のことを愛しそうに見ていると写っているんだろう。いいさこの醜い愛情には気づかせることは無いからな
nm
微熱
朝起きてから気だるさと異様な寒気に頭痛が止まらない、まさかと思い体温計を取りだし脇に挟む。測り終わった音を出す体温計に表示された37.7を睨らみながら会社に休みの電話する、薬を飲みため息を吐きながら、布団に深く潜り目を瞑った。
朝より多少マシになった体を起こし、なにか口にするものはないか探していると、インターホンの音が静かな部屋に響いた、誰だろうか?怪訝に思いながら扉を開けると、肩で息をしてこちらを睨んでるtksmがいた。「え、どうしたの?」急いでチェーンを外し、そう声をかけると同時にtksmが私に抱きついた「なぜ俺に連絡をしなかった」と問いただす。戸惑いながら、心配をさせ仕事の邪魔になってしまうと思った。そう小さく呟き彼の顔を見ると、眉を顰め今にも泣き出しそうな顔をしていた。「そんな事は無い。俺のお前に対する気持ちを侮ってるのか」そう言い放ち、部屋に入ろうと言い靴を脱ぐ。
散らかっててごめんね、少し笑いながら言うと彼は俺が片すさ、とこちらを見ずに買ってきたであろう袋から軽い食べ物やゼリー、飲み物を机に置く。
「わざわざありがとう」と言いながらスプーンを取りだしゼリーを1口食べると、彼が口を開いた。「美味いか?」隣座った彼が私の頭を撫でる、ゼリーを飲み込みながらこくんと小さく頷きちらりと覗き見た彼の顔は、安堵の表情を浮かべていた、「今度からは俺にも連絡してくれ」頭を撫でる手を頬に添えぽつりとつぶやく「ごめんね」彼のあまりに安心したような顔に声色に罪悪感が募り謝罪の言葉を口にすると彼が私に軽く口付けをする。ぼっと顔が赤くなる感覚がする、パクパクと口を開き彼の顔を睨むが彼の愛慕に満ちた目線に堪らず俯く。この動悸と顔の暑さはどうにか微熱のせいに出来ないだろうか
tk
補足▶️
・肩で息をしてこちらを睨んでる
夢主の携帯に連絡をしたが返信がいつまで経っても来ないため走ってきた、いざ夢主を見るとかなり平気そうでちょっと怒ってる。連絡しろ!
・ こちらを見ずに~
「」の言葉を自分で言ってて恥ずかしくなっただけ顔がすごく赤くなってる。
・愛慕に満ちた目線
連絡しなかったのは怒ってるけど、自分の想像していた最悪が起きてなかったことに改めて安心して、ゼリーを美味しそうに食べてる夢主の顔が愛しい。
太陽の下で
憎たらしい程かがやく太陽の下で、笑顔を咲かせるあいつの顔を双眼鏡から覗く。嗚呼太陽が良く似合う女だなつくづく感じる。軽蔑の視線を向けてもあいつはきっと何も気にせず俺に太陽のような笑顔を向けてくるだろう。もし今ここであいつの胸に赤い花を咲かせてみたら?引き金に添えた指に力を入れる、あいつの最後は嘸かし綺麗なんだろうな、とほくそ笑みながらまた双眼鏡からあいつを見ると目線が合った。あいつがこちらに向かって微笑んできた、思わず双眼鏡から顔を離す。あのこちらを見透かしてるかのようなあいつの顔にどこか薄気味悪さを感じ「はは、気味わりぃ女だな」そう呟いた声は誰も届かず静かに消えた。
o
セーター
冬物を買いに出かけられないと嘆く彼女に自分の欲とともに贈り物をした。
「これってセーター?」淡い色のセーターを広げた彼女は目を輝かせ、穴が空くほど見たかと思うと強く抱き締めた。「本当に嬉しいすっごく可愛い!ありがとう!」少し興奮した様子で言う姿を思わずくつくつと喉の奥で笑う。「それを今着てみてくれないか?」そう提案すると彼女は快く了承し軽い足取りで部屋を後にする。
しばらくだった後扉を開け「どう?」と問いかける彼女。
その姿に驚いた、なかなかいい買い物をしてしまったなと、息を吐き頭を抱える。すると上から彼女の焦った声が聞こえ、似合ってなかったのか?太りすぎたか?なんて可愛い不安を口に零す。
こいつは馬鹿か?少しは自分の可愛さに気づいて欲しいものだ。そうだ、たまには褒めてやろうか。
「いや似合いすぎだな。俺以外には見られて欲しくないくらいだ」そっと同じ目線になるよう座った彼女の太もも、頬の順に手を這わせて囁くと彼女は顔を真っ赤にし俯き「もう、」と小さく呟く。あんなクサイセリフにこうもいい反応をするあまりの単純さに笑みを零さずを得なかった。
o
落ちていく
始まりは大学の講義、サークル、バイト先色々な偶然が重なり必然と彼と仲良くなって行った。
「nmくんと色々被るよね、講義もそうだしバイトとか!」とある日いつもの様に食堂でご飯を食べていた。ふと思った事を懐かしげに言う。流石にバイトは驚いたなぁと笑いながら言うと、「確かに、バイト先は少しやりすぎたよな」そう目を細め愉快そうに笑うnmに何処か違和感を感じた。
私に何かあれば親身に話を聞き、支えてくれる無表情な彼の不器用な優しさに惹かれ恋に落ちていくには時間は要らなかった。
用意周到な彼の作戦とは知らずに。
n