星乃 砂

Open App
5/27/2024, 11:23:49 AM

【月に願いを】

 [5/19 恋物語
 [5/26 降り止まない雨
           続編

登場人物
 鬼龍院 加寿磨
 (きりゅういん かずま)
 金城 小夜子
 (きんじょう さよこ)

「お母さん、お願いがあります」
加寿磨は大声で叫んでいた。
母はビックリして、急いで2階に上がってきた。
「どうしたの、かず.....ま、貴方立ってる。立てたのね」
「母さん、事故を起こした人の名前を教えて下さい」
「今更聞いてどうするの?もう済んだことよ」
「ボクは間違っていました。傷付いたのはボクだけじゃなかったんです」
「小夜子さんの事かい?」
「ボクは彼女に合わなければいけない」
「記憶が戻ったのですか?」
「残念ながら、記憶は戻っていません」
「なら、なぜ?」
「ボク以上に彼女が傷付いている事が分かったからです」
「分かったわ。彼女の名前は金城小夜子さんよ」
「彼女が引っ越した住所も分かりますか?」
「引っ越したの?それは分からないわ」
「そうですか、残念です。でもなんとかして調べなければ」
「それより、立てたんだね。歩けるのですか?」
ボクは一歩踏み出してみた。
体重を支えることが出来ず、そのまま崩れ落ちた。
「無理をしないで、少しずつでいいのよ。お医者の先生に連絡しておきますね」
ボクは心に誓った。
必ず、歩いてあの子に会いに行く。

それから、リハビリが始まった。何年も車椅子だったのだ、想像以上の辛く苦しい日々が続いた。
加寿磨は ‘あの子に会う’ その一心で耐えた。これぐらい彼女の苦しみに比べれば何でもない。
一月程が経ち、松葉杖を使って歩ける様になったが、まだ長くは歩けない。もっと頑張らないと。
あの子の住所はまだ分からない。
ボクは何度も何度も手紙を読み返し、ついに糸口を見つけた。
消印だ!
これで大体の場所が絞り込める。
歩行も松葉杖1本で、歩けるようになった。

いよいよ明日、1泊2日の予定で出発する。
ひとりで行くつもりだったが、母がどうしても付いて行くと言うのでふたり旅となった。
ボクは月に願いを込めた。
〈どうかあの子に会えます様に〉月は無言で微笑んでいる様に見えた。〈大丈夫大丈夫〉
だが、そう甘くは行かなかった。
役所、郵便局、中学校、どこも〈個人情報は答えられない〉と言われてしまった。
中学校の校門で探すにしても、ボクはあの子の顔を知らない。
最後は生徒に聞いてみたが〈金城なんて子はいない〉と言われた。
もはやお手上げ万事休すである。

自宅に戻り、抜け殻になった。
あれだけ頑張っていたリハビリも休んで3日になる。
途方に暮れ、気が付くとあの子の通っていた中学校に来ていた。
雨が降っている事にも気づかずにいた。
「初めてあの子をみたのも、こんな雨だったな」
「もしかしてカズ君?」
女の子の声がしたので、振り返ってみた。
「カズ君だよね、鬼龍院加寿磨君でしょ?」
「ボクの事知ってるの?」
「やっぱり、カズ君なのね、歩けるようになったんだね。よかったきっと小夜子も喜ぶよ」
「き、君は金城小夜子さんの友達なのかい?」
「カズ君、記憶はまだ戻ってないの?私と小夜子とカズ君は同じ幼稚園だったんだよ」
「そうだったの、... もしかして君は金城さんの引っ越し先を知っているかい?」
「知っていのわよ」
その時、雨が止み日が差してきた。

           つづく

5/26/2024, 7:33:03 AM

【降り止まない雨】

 [5/19 恋物語  続編

登場人物
 鬼龍院 加寿磨
   (きりゅういん かずま)
 私

彼女が引っ越してから2週間後に手紙が届いた。
宛先は鬼龍院加寿磨(ボク)宛てだ。
差出人の住所と名前は書いてなかった。
「前略
引っ越しの後片付けに追われて手紙を書くのが遅くなりました。
私がなぜ貴方の事を知り謝りたいのかを説明します。
貴方のお父様の命と貴方の記憶を奪ったのは私の父なのです。
あの日は今にも雨が降り出しそうな空模様でした。私を駅まで送っている途中でゲリラ豪雨になり視界がかなり悪くなりました。
慎重派の父はスピードを落とし、信号も無理をせずに。
そう、あの時も信号が黄色で止まりました。
そして、大型トラックに追突されました。
車は押し出され、父はブレーキを踏んだつもりが、アクセルを踏んでいたのです。そして、貴方と貴方のお父様を。
私は軽傷ですんだのですが、父は首をかなり痛め後遺症も残ってしまいました。
事故の後私たちは貴方の家に謝罪に伺いました。何度も何度も、しかし貴方に会う事は叶いませんでした。貴方の気持ちはわかります。加害者になど会いたくもないですよね。
そしてお母様に言われました。
〈もう来ないで〉

父は刑期を終え仕事に復帰したものの思うようにいかず、家族に負担をかけまいと無理をしたようで、とうとう倒れてしまいました。
それからは母が働きに出て、私が弟たちの面倒を見る事になりました。
弟ふたりを学校に出した後、登校していたのでいつもギリギリだったのです。
夕飯の支度もあるので帰りも早くなりました。
その後、父は亡くなり私達は母の実家に越して来たのです。
こんな話を貴方にしても仕方ない。いえ、するべきでは無いと分かっています。
でも、ごめんない。
誰かに私の気持ちを聞いて欲しくて、母には言えない気持ちを分かって欲しくて。
雨はいつか止むって言うけど、あの日降り出した雨が私の中では降り止まないままでいます。
最後に、貴方が再び歩けますように。祈っています。」

読み終えてボクは愕然とした。
まさか彼女が加害者の子?
違う、あの子のお父さんだって被害者じゃないか。なにも悪くないよ。
ボクは自分の事しか考えていなかった。
彼女がこんなに苦しんでいたなんて。会わなきゃ、会って話をしなくちゃ。
ボクは意を決して立ち上がった。

           つづく

5/25/2024, 9:57:59 AM

【あの頃の私へ】

 [5/3 優しくしないで
 [5/5 耳をすませば

登場人物
 琴美
 葵
 昴
 響

今日は成人式、琴美たちは2年ぶりに再開した。
「コトちゃん久しぶりー元気だった?雰囲気変わったんじゃない?東京ってどんなとこ?いつもお祭りみたいだってほんと?今度遊びに行ってもいい?こつちにはいつまで...」
「ストップ‼️葵、そんなにいっぺんに言われても答えられないよ」
「あっ、そうだよねゴメン」
「ところで昴は?」
「あっちでバスケ部の連中と話してたよ、あとで来るでしょ。それより、響は?」
「式典には間に合わないが、こっちに向かっている」
「じゃあ、二次会で合流ね。昴が来たわよ」
「琴美、元気そうでな」
「久しぶりね、昴。また背伸びたんじゃないの」
「そろそろ、式典始まるよ」

式典は滞りなく終わり3人は会場の外に出てきた。
「期待はしてなかったけど、退屈だったね」
「琴美は何を期待してたんだ」
「そりゃ、暴れ出す輩がいたら盛り上がるでしょ」
「それは、盛り上がるんじゃなくて大騒動でしょうが」
「相変わらずだな琴美は」

「響はまだ来ないの?」
「こっちに着いたらメールくれることになってる」
「じゃぁ3人で先に店に入ってようか」
3人は高校時代によく通っていた喫茶店に入った。
♪カランコロン♪
「いらっしゃい。これは珍しいお客さんですね。みんな元気そうだね。おや、ひとり足りないね?」
「響は後から来ます」
「みんな綺麗に着飾ってるという事は、今日は成人式だね」
「そう、アタシたち成人しました」
「実感ないけどな」
「これで堂々と酒が飲める」
「コトちゃんは色気より飲み気だね」
「ねェねェ、知ってた?」
「なにを?」
「アタシたちが通ってた幼稚園取り壊しになるんだって」
「マジ?」
「それなら聞いた。なんでも古くて倒壊の恐れがあるから立て直すらしい」
「そうなんだ、昴と初めて会ったのがあの幼稚園だったよね」
「男の癖に、オママゴトやったり」
「琴美が無理矢理やらせたんだろうが」
「私達と一緒にお風呂に入るし」
「風呂⁉️...あぁ、夏休みの」
「「「お泊り合宿❗️」」」
「そうそう、あれ誰が考えたんだろうね」
「私」
「「エッ?」」
「だから私だってば。私が考えて父ちゃんに言ったの。」
「「マジー!」」
「面白かったでしょ」
「もちろん、忘れられない大切な思い出だよ」
「あの時の僕にやめとけって教えてあげたいよ」

   ーー16年前ーー

「ねェねェ、明日からお泊り合宿でしょ、最初は誰の家がいい?」
「「昴の家」」
「えー、ボクん家。どうして?」
「「昴の家にはテレビゲームがあるから」」

〈お泊り合宿 初日〉

「「こんにちは」」
「いらっしゃい」
「母ちゃん、今日のご飯はなに」
「今日は琴美の好きなカレーよ」
「今日は昴くんの家じゃなくてコトちゃん家だったね」
「ボクはカレー好きだし3人一緒ならどこでもいいよ」
「みんな一緒にお風呂入っちゃいなさい。パジャマも置いてあるからね」
「「はーい」」
「ボクは後でいいよ」
「昴も入るんだよ」
「みんな一緒ってコトちゃんママが言ってたよ」
「だってー」
「だってじゃない!葵、昴の服脱がすよ」
「わーやめてよー」
「おっ、昴のチ◯コ父ちゃんのと違う」
「本当だ、ちっちゃい」
「そんなに見ないでよー」
「楽しそうねー、みんなで洗いっこするともっと楽しいわよ」
「「はーい」」「えー」
「葵、昴のこと押さえといて」
「うん。でも何するの?」
「母ちゃんが言ってたでしょ、洗いっこしなさいって」
「や、や、やめてー」
「あっ、大っきくなってきた」
「やだー、ボク家に帰る」
昴は大泣きして目を真っ赤にして出てきた。
「あらどうしたの昴くん、目が赤いよ。シャンプーが目に入っちゃった?」
食事は何事もなく無事に終わりトランプをして遊ぶことになった。
「ボクは7並べがいいな」
「アタシはババ抜き」
「じゃあスピードにしよう」
問答無用でスピードに決まった。
「負けた人が交代で、続けてふたりに勝ったら、お菓子食べていいの。
「「OK」」
結果は琴美の一人勝ちだった
「もう食べれない」
「琴美は自分が勝てると思ったからスピードにしたんだろ」
「そうだよ、悪い?」
「コトちゃんはお菓子がかかると強いよね」
「みんな、そろそろ電気決して寝なさい」
「「「はーい」」」
こうしてお泊り合宿初日は幕を閉じた。

  ーーー現 代ーーー

「そうだったな、あのお風呂はまいったよ」
「次の日からはタオル巻いてたよね」
「ゴメーン遅くなった」店の扉を開け響が入って来た。

           おわり

5/24/2024, 9:42:27 AM

【逃れられない】

 [5/20 突然の別れ 続編]

登場人物
 桜井華 (さくらいはな)
 恵美
 優子

「「「かんぱ〜い」」」
今日は久しぶりに大学時代の親友3人の女子会だ。
「今日は朝迄いっちゃうぞー」
「「おー」」
「ねェ華、半年前の事件の時の姉弟はまだ居るの?」
「桔梗と樹か、もちろん居るよ」
「華も物好きよね」
「ふたりが来てから母も楽しそうで何よりだ」
「恵美はご主人がよく許してくれたな。子供はまだ9ヶ月だろ」
「うん、今日はオレが面倒を見るからたまにはストレス解消して来いってさ」
「優しい旦那さんだな」
「でも、本当に大丈夫かな、すごく不安なのよね」
「優子は、彼氏とはどうなの?」
「別れた」
「またぁ、あんなは長続きしないよね」
「だってネチネチしつこいんだもん」
3人が
女子トークで盛り上がっていた時、恵美にメールが入った。
「どうしたの、ご主人から?」
「そうなの、ナナが泣き止まないんだって。ごめん、心配だから私帰るね」
「分かった」
「早く帰ってやんな」
「ありがとう、またね」
恵美が帰ったからも優子の男グセや職場の愚痴で盛り上がった。
「そろそろ帰るとするか、終電にも間に合いそうだ」
「そうだね、恵美もいないしね。お開きにしますか」

「わたしは二駅だから歩いて帰るね」と言って優子は歩き出した。
「気を付けて帰るんだぞ」
「分かった、じゃあまたね」
優子はほろ酔い気分で自宅へ向かった。
(もう1時ちかいのか、大通りを通って行くか、公園を通って近道を行くか、10分の差だな。お風呂も入りたいし、今日は近道で帰ろう)
優子は公園を歩き出した。
(なんか暗いなぁ、こんなに暗かったかなぁ、あそこの街灯が点いてないから暗いのか)
その時、後ろで人の気配を感じた。振り返っても、誰もいない。気のせいかと思い、また歩き出した。
前方にタチの悪そうなのが4〜5人たむろしているので、仕方なく迂回することにした。
すると、また後ろで人の気配がする。優子は足を速めた。気配はまだ消えない。振り返ると、人陰が見えた。
立ち止まると影も止まった。まずい、明らかに付けられている。
優子は恐怖を感じた。
(どうしよう、助けて華)優子は華にメールを送った。
〈今公園誰か付けられ助けて〉
これだけ打つのがやっとだった。
影は少しずつ優子との距離を狭めて来る。優子は振り返りもせず一目散に走った。
(誰か居ないの助けてお願い)
暗がりを走る中、何かに足を取られ転んでしまった。「痛い」どうやら足を挫いてしまったようだ。
(逃げなきゃ捕まる)優子は必死になって近くの茂みに隠れた。
(もうダメだ逃れられない)
影はすぐ近くまで近付いて来た。やはり優子を探しているようだ。
少しずつ少しずつ、しかし確実に近づいている。(華、早く)
影は優子のいる茂みで止まった。恐怖のあまり声も出ない。
影の伸ばした腕が優子の肩を捕まえた。
「そこまでだ、その手を離せ」
肩を掴んでいた手が離れた。
「わぁー!」ダダーン
華の一本背負いが決まり、男は地面で気を失った。
「優子、大丈夫か」
「華、怖かったよ。どうしてもっの早く来てくれないのよ」
「これでも、全速力で走って来たんだがな」
「うん、ありがとう」
「この男は知り合いか?」
「エッ、やだ、嘘、元彼」
「どうする、警察に突き出すか?」
「そこまでしなくても」
「分かった。おい、起きろ!」
華は男の顔をヒッパタイタ
「うぅー、誰だお前?」
「私は警察のものだ。貴方の行為はストーカーにあたる。近くの交番まで来てもらおうか」
「すいません、僕はただ優子さんと話しがしたかっただけなんです」
「なら、なぜ堂々と話しをしない」
「だって会ってくれないから」
「貴方とは別れたと聞いたが?」
「僕は別れたくないんだ」
「諦めろ、もう彼女に心はない。今度やったら逮捕するぞ」
「わかりました。もうしません」
男は肩を落としながら去って行った。
「家まで送ろう」
「ごめんね、もう終電行っちったよね」
「タクシーでも拾うさ」
「どうせなら、朝まで家で飲まない?」
「うん、そうさせてもらおうか」
「お詫びに、おつまみは私が買うね」

           おわり

5/23/2024, 11:40:51 AM

【また明日】

[5/14 失われた時間
[5/15 風に身をまかせ
[5/16 後悔
[5/18 真夜中   
 [5/22 透明    続編

登場人物
 勇気
 遥香
 フーリン
 ホムラ
 アクア
 ロック

敵のアジトに着いた。
勇気はフーリン、ホムラ、アクアに周辺の偵察をさせる事にした。
「フーリンたちが戻ってくるまで準備体操でもしておくか」
「ちょっと、あんなり目立つ事はしないでよね。敵に気付かれちゃうわよ」
しばらくしてフーリンたちが戻ってきた。
「どうだった?」
「周りには敵がいませんでした。どうやら、洞窟の中に集まっているようです」
「そうか、まず迅速なフーリンが先頭で...」
「きゃぁ!」
「どうした遥香、何ひとりで暴れてるんだ」
「助けて!」
「しまった、あの見えない敵の仕業だ」
「なんだって!遥香、今助けてやるからな」
「作戦は?」
「そんなもんいるか!みんな突っ込むぞ❗️」
勇気たちは遥香を追いかけた。
フーリンが何かに気づいた。
「ホムラ、周りを明るくしてくれ」
「いいのか、敵が寄って来るぞ」
「もうバレてるだろ」
「わかった」
ホムラは、火の玉を上空に投げた。すると、辺りは昼間のように明るくなった。
「見えた!遥香を捕まえたのは影だったんだ。周りが暗かったから気付かなかったんだ。姿さえ見えれば怖い事はない。この前の仕返しをしてやる」
すると、騒ぎに気付いたスケルトンたちが行く手を塞いだ。
「ザコは引っ込んでろ!」
フーリンの竜巻
ホムラの火炎
アクアの水鉄炮
勇気の雄叫び
スケルトンをあっという間に蹴散らした。
洞窟の中は真っ暗だったがホムラが至る所に火を灯し明るくした。
「居た、あそこだ」
「勇気早く助けてよ、私死んじゃうよー」
「分かったから、もう少し我慢しろ」
次はオークの出番だ。
「ボクは影を追う。オークは任せた」フーリンはそう言い残し飛んで行った。
オークは火炎や水鉄炮を、棍棒で弾き飛ばしてしまう。
「やはりオークには効かないようだな、ならばこれでどうだ」
ホムラは‘業火’と叫び大きな炎を投げ付けた。
アクアは‘激流’と叫び大量の水を一気にオークにぶつけた。
10体程いたオークが次々と倒れていった。
「よし、みんなよくやった。俺たちもフーリンを追うぞ」
その時、いきなりトロールが大きな棍棒を振り下ろしてきた。
「やばい避けられない」と思った時、地面がせり上がり目の前に壁が出来あがった。
「遅くなってすまぬ。拙者(せっしゃ)は岩山の里のロックと申す。勇者殿の助太刀に参った」
「あんたも、選ばれし者なのか」
「いかにも、トロールは拙者が食い止めるゆえ、先を急がれよ」
「かっ、かたじけない」
その頃フーリンは
「ボクが追い付けないなんて、なんで速さだ」
影は男の元に辿り着くと遥香を下ろし、男の影に戻った。
男は人の体をしているが、獣の頭と尻尾を持っている。
「お前がボスか?」
「そうだ」
「遥香と“時の女神”を返してもらおう」
「そうはいくか」
フーリンひとりでは敵わない。仲間が来るまで睨み合いが続いた。
「待たせたな、アイツがボスだな」
「ウッ、お前が勇者だったのか?」
「俺の事知ってるのか?」
「イヤ、知らない。人違いだ」マジか、という事はこのヒーラーの遥香って?...ゲッ!やばいヤバイやばい、まずいマズイまずい、どうしようドウシヨウどうしよう。
「何、動揺してるんだ。遥香と“時の女神”は返してもらうぞ」
「コイツは一筋縄ではいきそうにない、ホムラ、アクア、それに」
「拙者はロックと申す。以後お見知り置きを」
「わかった。ロックも奥義は使えるな」
「もちろんでござる」
すると4人の体が輝き出した。
それぞれの手元には風の渦、業火の玉、激流の渦、鋼鉄の玉を掲げている。
「いくぞ!四精奥義(しせいおうぎ)」

『『エレメンタルショット‼️』』

4人から放たれた必殺奥義はボスに大ダメージを与えたが、まだ倒れない。
「これでとどめだー」
勇気は高々とジャンプをしてボスに襲いかかった。
「必殺・改心の一撃‼️」
勇気のゲンコツがボスの脳天に炸裂した。
「ギェ〜!」断末魔の声を上げボスは倒れた。その時、頭の面が割れ人間の顔が現れた。
「コイツ後輩の榊原じゃないか」
「えっ?ウソ!」遥香は顔を覗き込んだ。
「本当だ。どうして一魔(かずま)が?」
「俺達と同じように夢の世界に入り込んで来たんだろうな」
「一魔、起きなさい」と言って遥香は往復ビンタをお見舞いした。
「せっ、先輩ごめんなさい、許して下さい」
「どうしてこんな事をしたの?」
「はい、2週間ほど前にこの世界に来るようになって、どうせ夢の世界だから魔王にでもなってやろうと思って村を襲ったりしてたんです。
子分も何人か出来ました。そのうちのひとりが“時の女神”の噂を聞いてきて、それを奪えば魔族の住みやすい闇の世界に出来ると思ったんです。すいません」
「全く男って奴は、どいつもコイツも脳みそレベルが低いんだから」
「はい、そして勇者が現れたと聞いて仲間を増やして待ち構えていたんです。すいません」
「分かったわ、ともかく、“時の女神”は返してもらうからね」
「はい、どうぞ、すいません」

こうして勇者一行は無事に“時の女神”を取り返す事に成功した」
「フーリン、ホムラ、アクアそしてロックみんなのおかげで無事に“時の女神”を取り戻せた」
「みんな、本当にありがとうね。私達が責任を持って、時里村の祠に納めて来るわ」
「みんなとも、これでお別れだ」
「お疲れ様でした」とホムラ。
「また、いつか」とアクア。
「拙者の里にも遊びに来て下され」とロック。
「お前たち、時里村までの道わかるのか?」とフーリン。
「そうだな、道案内が必要だな」
「じゃあ、道案内お願いね」
こうして、時里村の祠に時の女神を無事に納めることが出来た」
「とうとうフーリンとお別れね」
「いろいろ世話になったな」
「また会えるか」
「どうだろう、時の女神も戻ったし私達の役目は終わったから、もう来れないかもしれないわ」
「再び災いが起きたら来るんだな」
「約束は出来ないけど、その時は私達が来る事を強く念じてね」
「分かった」フーリンは名残り惜しそうに去って行った。
「やっと夜が明けてきたな。俺達も帰ろう」
「うん、じぁまた明日ね」
「おう!学校でな」

            完

Next