星乃 砂

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【降り止まない雨】

 [5/19 恋物語  続編

登場人物
 鬼龍院 加寿磨
   (きりゅういん かずま)
 私

彼女が引っ越してから2週間後に手紙が届いた。
宛先は鬼龍院加寿磨(ボク)宛てだ。
差出人の住所と名前は書いてなかった。
「前略
引っ越しの後片付けに追われて手紙を書くのが遅くなりました。
私がなぜ貴方の事を知り謝りたいのかを説明します。
貴方のお父様の命と貴方の記憶を奪ったのは私の父なのです。
あの日は今にも雨が降り出しそうな空模様でした。私を駅まで送っている途中でゲリラ豪雨になり視界がかなり悪くなりました。
慎重派の父はスピードを落とし、信号も無理をせずに。
そう、あの時も信号が黄色で止まりました。
そして、大型トラックに追突されました。
車は押し出され、父はブレーキを踏んだつもりが、アクセルを踏んでいたのです。そして、貴方と貴方のお父様を。
私は軽傷ですんだのですが、父は首をかなり痛め後遺症も残ってしまいました。
事故の後私たちは貴方の家に謝罪に伺いました。何度も何度も、しかし貴方に会う事は叶いませんでした。貴方の気持ちはわかります。加害者になど会いたくもないですよね。
そしてお母様に言われました。
〈もう来ないで〉

父は刑期を終え仕事に復帰したものの思うようにいかず、家族に負担をかけまいと無理をしたようで、とうとう倒れてしまいました。
それからは母が働きに出て、私が弟たちの面倒を見る事になりました。
弟ふたりを学校に出した後、登校していたのでいつもギリギリだったのです。
夕飯の支度もあるので帰りも早くなりました。
その後、父は亡くなり私達は母の実家に越して来たのです。
こんな話を貴方にしても仕方ない。いえ、するべきでは無いと分かっています。
でも、ごめんない。
誰かに私の気持ちを聞いて欲しくて、母には言えない気持ちを分かって欲しくて。
雨はいつか止むって言うけど、あの日降り出した雨が私の中では降り止まないままでいます。
最後に、貴方が再び歩けますように。祈っています。」

読み終えてボクは愕然とした。
まさか彼女が加害者の子?
違う、あの子のお父さんだって被害者じゃないか。なにも悪くないよ。
ボクは自分の事しか考えていなかった。
彼女がこんなに苦しんでいたなんて。会わなきゃ、会って話をしなくちゃ。
ボクは意を決して立ち上がった。

           つづく

5/26/2024, 7:33:03 AM