【逃れられない】
[5/20 突然の別れ 続編]
登場人物
桜井華 (さくらいはな)
恵美
優子
「「「かんぱ〜い」」」
今日は久しぶりに大学時代の親友3人の女子会だ。
「今日は朝迄いっちゃうぞー」
「「おー」」
「ねェ華、半年前の事件の時の姉弟はまだ居るの?」
「桔梗と樹か、もちろん居るよ」
「華も物好きよね」
「ふたりが来てから母も楽しそうで何よりだ」
「恵美はご主人がよく許してくれたな。子供はまだ9ヶ月だろ」
「うん、今日はオレが面倒を見るからたまにはストレス解消して来いってさ」
「優しい旦那さんだな」
「でも、本当に大丈夫かな、すごく不安なのよね」
「優子は、彼氏とはどうなの?」
「別れた」
「またぁ、あんなは長続きしないよね」
「だってネチネチしつこいんだもん」
3人が
女子トークで盛り上がっていた時、恵美にメールが入った。
「どうしたの、ご主人から?」
「そうなの、ナナが泣き止まないんだって。ごめん、心配だから私帰るね」
「分かった」
「早く帰ってやんな」
「ありがとう、またね」
恵美が帰ったからも優子の男グセや職場の愚痴で盛り上がった。
「そろそろ帰るとするか、終電にも間に合いそうだ」
「そうだね、恵美もいないしね。お開きにしますか」
「わたしは二駅だから歩いて帰るね」と言って優子は歩き出した。
「気を付けて帰るんだぞ」
「分かった、じゃあまたね」
優子はほろ酔い気分で自宅へ向かった。
(もう1時ちかいのか、大通りを通って行くか、公園を通って近道を行くか、10分の差だな。お風呂も入りたいし、今日は近道で帰ろう)
優子は公園を歩き出した。
(なんか暗いなぁ、こんなに暗かったかなぁ、あそこの街灯が点いてないから暗いのか)
その時、後ろで人の気配を感じた。振り返っても、誰もいない。気のせいかと思い、また歩き出した。
前方にタチの悪そうなのが4〜5人たむろしているので、仕方なく迂回することにした。
すると、また後ろで人の気配がする。優子は足を速めた。気配はまだ消えない。振り返ると、人陰が見えた。
立ち止まると影も止まった。まずい、明らかに付けられている。
優子は恐怖を感じた。
(どうしよう、助けて華)優子は華にメールを送った。
〈今公園誰か付けられ助けて〉
これだけ打つのがやっとだった。
影は少しずつ優子との距離を狭めて来る。優子は振り返りもせず一目散に走った。
(誰か居ないの助けてお願い)
暗がりを走る中、何かに足を取られ転んでしまった。「痛い」どうやら足を挫いてしまったようだ。
(逃げなきゃ捕まる)優子は必死になって近くの茂みに隠れた。
(もうダメだ逃れられない)
影はすぐ近くまで近付いて来た。やはり優子を探しているようだ。
少しずつ少しずつ、しかし確実に近づいている。(華、早く)
影は優子のいる茂みで止まった。恐怖のあまり声も出ない。
影の伸ばした腕が優子の肩を捕まえた。
「そこまでだ、その手を離せ」
肩を掴んでいた手が離れた。
「わぁー!」ダダーン
華の一本背負いが決まり、男は地面で気を失った。
「優子、大丈夫か」
「華、怖かったよ。どうしてもっの早く来てくれないのよ」
「これでも、全速力で走って来たんだがな」
「うん、ありがとう」
「この男は知り合いか?」
「エッ、やだ、嘘、元彼」
「どうする、警察に突き出すか?」
「そこまでしなくても」
「分かった。おい、起きろ!」
華は男の顔をヒッパタイタ
「うぅー、誰だお前?」
「私は警察のものだ。貴方の行為はストーカーにあたる。近くの交番まで来てもらおうか」
「すいません、僕はただ優子さんと話しがしたかっただけなんです」
「なら、なぜ堂々と話しをしない」
「だって会ってくれないから」
「貴方とは別れたと聞いたが?」
「僕は別れたくないんだ」
「諦めろ、もう彼女に心はない。今度やったら逮捕するぞ」
「わかりました。もうしません」
男は肩を落としながら去って行った。
「家まで送ろう」
「ごめんね、もう終電行っちったよね」
「タクシーでも拾うさ」
「どうせなら、朝まで家で飲まない?」
「うん、そうさせてもらおうか」
「お詫びに、おつまみは私が買うね」
おわり
5/24/2024, 9:42:27 AM