星乃 砂

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5/10/2024, 10:43:00 AM

忘れられない、いつまでも

 【刹那 続編】

オヤジが亡くなってもうすぐ3回忌になる。
会社は、小さいながらも希望どうりエンジニアの職につけた。
幸い同僚にも恵まれ、学生時代から交際っている彼女とも大きなケンカもなく上手くいっている。
そんな彼女から言われた言葉が気になってしょうがない。
「何か心配事でもあるの?」
「いや、何もないよ。どうして?」
「最近、元気がないみたいだから仕事で何かあったのかなと思って」
「何もないよ。大丈夫だよ」
「そう、それならいいんだけど」
彼女には大丈夫だと言ったが、自分でも感じていたのだ。
 “何かが物足りない”と。
その夜、夢を見た。
誰かがこちらに向かって来る。ゆっくりとゆっくりと、まるで焦る事はないとでもいうように。
オヤジだ。
オヤジが優しく微笑みかけてくる。
「お前の人生はまだ長い、少しくらい遠回りをしたっていいじゃないか」
オレは、ゆっくりと目を覚ました。その視線の先には形見のカメラがあった。
その時、気付いたのだ。何が物足りないのか。忘れようとしていた。でも、忘れられないでいたファインダーを覗いている時の胸の高鳴り。
3回忌の朝再び、あの場所に立った。

5/9/2024, 12:46:04 PM

一年後

【君と出逢って 続編】

登場人物
 紬(つむぎ18) 蓮(れん10)
 剛志(たかし5)
 優斗(ゆうと19) 雅(みやび5)


家に帰ると、まだ熱のありそうな顔をした蓮が飛んできた。
「お姉ちゃん、お土産はなーに?」
「蓮ゴメン🙇‍♀️今日はいろいろとあって、気付いた時には帰りの電車の中でした。ごめんなさい」
「お姉ちゃんは男が出来...」
「わーわーレレレ蓮君、本当にごめんなさい」
優斗さんと一緒に居られて楽し過ぎて、お土産を忘れたなんてバレたら大変だ。ここは何とか剛志を黙らせて、乗り切るしかない。剛志に目配りをして分かってもらい、ここはひたすら謝るしかない。
「じぁ、風邪が治ったら映画に連れて行って、お昼のマック付きでね」
蓮はやっと納得してくれた。
ひと段落付いたところで考えてしまうのは、やっぱり優斗さんの事だ。
「お姉ちゃん何ニヤニヤしてるの」
気づくと剛志が私の顔をジーと覗いている。
「お姉ちゃん今度の日曜日もあの男とあうんだよね?」
「あの男なんて言わないでよ。優斗さんよ優斗さん!別にいいでしょ」
「ボクも行く」
「えっ、なに言ってるの?」
「ボクも一緒に行く」
「だめよ、今度は遊園地じゃないんだから、剛志を連れて行ったら優斗さんに悪いでしょ」
「雅ちゃんも一緒ならいいでしょ」
「でもなー、映画に行くことにしたのに、何て言えばいいだろう?」
「名探偵のアニメなら、みんなで楽しめるでしょ」
たまたま部屋の前を通りかかった蓮が、「名探偵のアニメ観に行くの、やったー!日曜日までに絶対カゼ治す。」
ヤバイ!蓮まで付いてくる。何とかしなければ。

なんのアイディアも浮かばずに土曜日の夜になった。
「お姉ちゃんあの男にボクが行くって連絡したの?」
「あの男って言うな!それがまだなのよ。なんせ、蓮も一緒だなんて言えないわよ」
「お兄ちゃんは、行かないよ」
「えっ、どうして?」
その時、優斗から連絡が入った。
「もしもし、紬です」
「もしもし、優斗です。実はお願いがあって連絡したのです」
「お願いって何ですか?」
「実は明日、雅も行くって言って聞かないんですよ」
「えっ、そうなんですか?剛志もなんです」
「そうだったんですか、よかった。それでは明日は、みんなで名探偵のアニメではどうでしょうか?」
「わたしも、そう思ってました」
「それでは、また明日」
「はい、お休みなさい」
安心したのも束の間
「あっ!いけない、蓮のこと言うのを忘れてた」
その時、蓮が部屋へ入って来た。
「お姉ちゃん明日すっごく楽しみだね。おやすみなさい」と言って出て行った。
「大丈夫だよ、お兄ちゃんは行かないよ。ボクに任せて」
自信たっぷりに言う剛志が怖くなった。

日曜日
蓮は、腹痛を起こして行けなくなった。
「剛志、蓮に何かしたの?」
剛志は不吉な笑みを浮かべた。
「ボクも、お兄ちゃんは来ない方がいいんだ。雅ちゃんはボクのものだ」
その時、紬は悪寒を感じた。

その後も、お姉ちゃん達が会う3回に1回はボク達も付いて行った。ボクと雅ちゃんの家は片道2時間かかるので2人で会う事は出来なかった。

時は流れて1年が経った3月末

「剛志君、アタシお引越しするの」
「えっ‼️雅ちゃん越しちゃうの⁉️」
「うん」
「どこに越すの?」
「わかんないけど、ちょっと遠い所なんだって」
ボクは目の前が真っ暗になり、泣きたくなったが、ボクは強い男だ泣いたりしない。
「手紙書くね、電話もするね」
「剛志くんは寂しくないの?」
「寂しいけど、大丈夫また絶対に会えるから。ボクを信じて」
その後は、涙を堪えるのに夢中で何を話したか覚えていない。

4月になり、ボクは小学1年生になった。初めての教室で、自分の名前が書かれた席に座っていると、
「おはよう、剛志くん」と声をかけられて振り返ると、そこにはピカピカの雅ちゃんがいた。

           おわり

5/8/2024, 11:23:02 AM

初恋の日

登場人物
 父 三ヶ月 流星
  (みかづき りゅうせい)
 母     美月(みづき)
 兄     飛鳥(あすか)
 妹     明里(あかり)

今日は珍しくお父さんが早く帰ってきたので、家族4人で夕食をした。
「飛鳥、学校は楽しいか?」
「うん、まあまあ楽しいよ」
「5年生ともなれば、好きな子がいるんじゃないのか?」
「何言ってるんでかお父さん、そう言う事はそっとしといてあげて下さいよ。飛鳥はもう思春期なんですから」
「そうか、お前も大きくなったんだな。そういえば、母さんと同じクラスになったのも5年生と時だつたな」
「そうですね、その時1度きりでしたね」
ボクは気になって聞いてみた。
「その時から好き同士だったの?」
「そうじゃないわよ。単なるクラスメイトよ」
「オレにとってはマドンナだったけどな」
「そうなんですか?初めて聞きましたよ」
「じゃあ、お父さんにとっては初恋の人だったんだね」
「そうとも、同じクラスになったその日が、父さんの初恋の日だ」
「まあ、嬉しいわ。さあ、そろそろお風呂に入るわよ明里」
「はーい」
明里は湯船に浸かりながらママに聞いてみた。「ママの初恋もパパなの?」
「いいえ、違うわよ。パパは最後の恋人よ」

           おわり

5/7/2024, 9:50:23 AM

明日世界が終わるなら

登場人物
 綾乃(あやの)紀信(きしん) 
  咲(さき)
 翔(しょう)メイ

「お姉ちゃん、ただいまー」紀信が友達の翔を連れて帰って来た。
「おかえり。いらっしゃい翔君、オヤツ置いてあるから咲たちと一緒に食べてね」
「はーい」「いただきます」
「お姉ちゃん、何か考え事してるの?」綾乃が眉間にシワを寄せているので心配になり聞いてみた。
「来週に行くセミナーの、テーマについて考えてるのよ」
「どんなテーマなの?」
「『明日世界が終わるなら』って言うテーマなのよ。単にやりたい事をするとかじゃありきたりだし、世界が終わるって言う事は自分の人生が終わるって言う事と同意でしょ。貴方は明日死にますよって言われたら?私だったら何も出来無くなると思うのよね。」
「お姉ちゃん、そんな難しいこと言われてもボクたちには分からないよ」
「そうよね、ごめんなさい。つい夢中になっちゃって」
「メイちゃんどうしたの?」咲は真剣な顔をしているメイに聞いてみた。

【明日世界が終われば明後日からはアタシの時代が始まるわ!】

           おわり

5/6/2024, 6:42:25 AM

君と出逢って

登場人物
 紬(つむぎ18) 蓮(れん10)
 剛志(たかし5)
 優斗(ゆうと19) 雅(みやび5)

子供の日の今日、紬は弟の蓮と剛志を連れて遊園地に出かける事になった。「蓮、剛志、支度はできたの?早くしないと置いてっちゃうわよ」
「お姉ちゃん、お兄ちゃんが顔を真っ赤にしてるよ」蓮は這う様にして2階から降りて来た。
「どうしたの蓮、熱があるんじやないの?」
「どれどれ」母さんが熱を測ったら38℃もあった。「こりゃダメだね。残念だけど蓮
はお留守番だね」
「やだやだー。ボクも行くよー」
「行ける訳ないでしょ」蓮は母さんに引きずられて部屋へ戻っていった。
「蓮、お土産買って来るからねー」紬は剛志を連れて遊園地へ出かけていった。

開園15分前に着いたので、入り口に並んで待つことになった。後ろには、わたしと同じくらいの男の人が剛志と同じくらいの女の子を連れていた。
「なんて、カワイイんだ」
「カッコいいー」

入り口が開きやっと中に入れた。
紬  「剛志」
優斗 「雅」
紬・優斗 「「なにから乗ろうか?」」
剛志・雅 「「メリーゴーランド」」
声が揃った。振り返って見るとさっきの男の人だった。
優斗 「よかってら、一緒に周りませんか?」
紬 「そうですね、弟たちも同じくらいの年だし、ひとりで乗り物に乗せるよりは一緒に乗ってくれる子がいたら安心ですしね」
弟たちもすぐに仲良くなり、大喜びだ。
雅 「お兄ちゃんもお姉ちゃんと、なんか乗ってきたら」
剛志 「そうだよ、お姉ちゃんジェットコースター大好きだよね」弟たちに促されジェットコースターに乗ることになった。
紬 「お姉ちゃんが戻ってくるまで、雅ちゃんとここにいてね」
剛志 「大丈夫だよ、雅ちゃんはボクが守る」
優斗 「剛志くんは頼もしいね、雅も剛志くんと一緒にいてね」
雅 「大丈夫よ、アタシは強い男に付いて行くタイプだから」
紬 「まぁ!」

わたしたちは一緒に食事をし、いっぱい乗り物に乗り充実した日を過ごすことが出来た。

優斗 「今日は付き合ってくれてありがとう」
紬 「とっても楽しかったわ。」
優斗 「よかったら連絡先を交換しませんか」
紬 「はい、喜んで」
わたしたちは、また会う約束をした。
剛志 「ボクは、君と出逢えて本当によかった」
雅 「アタシもです」

           

紬 「あっ!蓮のお土産忘れた」
 
            おわり

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