男「ねぇ、ピカチュウのしっぽって何色だったか覚えてる?」
女「はい?」
男「いやだから、ピカチュウのしっぽ。どんな何色だと思う?」
女「はぁ…」立ち去ろうとする
男「ちょっとまってよ!いや質問に答えてよ!」
女「あの、あなたナンパの一言目としてそれは間違ってません?」
男「え?」
女「どう考えてもナンパする人の質問じゃないでしょ。同じクラスの仲良いヤツと昼とかにフラッと話す話題ですよそれ」
男「だから僕はきみとそれくらいの関係になりたくて」
女「それくらいの関係になるなよ。学年上がるごとに離れていく関係じゃねぇかよ。てか何?私ピカチュウで釣れる女だと思われたってこと?ふざけんなよな」
男「いやいや、君を見た瞬間ビビっときたんだよ。もしかして、きみ、でんきタイプかなって思っちゃって!」
女「おまえ、ぶっころすぞ!!!!!!」
男「え?」
女「アフロでも許せない」
男「アフロ?」
女「たとえアフロみたいな訳わかんない髪型してても、お前みたいなこと言うやつは大嫌いだ」
男「はぁ…」
女「茶色!」
男「……?」
女「ピカチュウのしっぽの色。茶色でしょ」そう言って女足早にいなくなる
男、1人取り残されて「…今までにないタイプだ……。涙も乾いた。あ!ねぇ、カイリキーの腕って何本あったか覚える?」
男「なぁ、コーヒーブラックでいいか?」
男2「あーすまん。ミルクもつけてくれ」
男「あれ、もしかしてブラック飲めないのか、え?」
男2「言っただろ、前の女が…」
男「あー聞いた聞いた、からかったんだよ。」
男2「勘弁してくれよ。思い出すと頭痛くなるんだよ。あーもう目の前にそいつの顔がでてきたよ」
男2、目の前を手で払う動き
男「ほいコーヒー。なぁ、また聞かせてくれよ。好きなんだよその話」
男2「いいだろう。んん、その女に逆ナンされたのは夏だった。暑い砂浜でサーフボードを片手に歩いてる俺に話しかけてきた。女は美人だった、そりゃもう目を疑うほど」
男「どのくらい?たとえるなら誰似だよ」
男2「たとえるなら…そうだなあれだ、いるだろあの、眉毛のキリッとしてる金髪の女優…ホラ、ミッションインポッシブルとかにでてた」
男「ヴァネッサ・カービー」
男2「そうヴァネッサ、それに似てた」
男「魔性の女だな」
男2「そう見えてた、俺もだ。だけど違ったんだよ、とんでもない女だった。…なぁ、それ何食ってんだ?スープ?」
男「いやコーヒー、コップ無かったから」
男2「だからって平皿にいれることないだろ。飲みにくいだろ、スプーンじゃ」
男「いやこれスプーンじゃない」
男2「いやスプーンでしょ」
男「いやこれスポーク、先が割れてるスプーン、フォークとスプーンが合体してるから、スポーク」
男2「いや先割れスプーンでしょ。スプーンって言っちゃってるし。」
男「スポーク」
男2「なんでそんなスポークに頑固なんだよ。お前が開発してないとおかしいくらい頑固だよ」
男「続き、聞かせろよ」
男2「あぁ、それでな、その女と付き合って数ヶ月が経って、ちょうど秋が深くなって肌寒くなったころ、俺、長袖を着てその女とデートに行ったんだ。その日のデートは一緒に買い物だったんだけどなんか会ったときから顔色が暗いんだ。ちょっと心配になりつつ一緒に買い物を楽しんでたんだよ。そしたらいきなり女が立ち止まって言うんだ。『私、あなたの半袖姿に惚れたの、長袖のあなたは全然かっこよくない』それで別れを切り出されて。あまりに突然だから俺も粘ったんだ。するとあの女激昂しだして、ついには商品をぶん投げてきたんだ。そこはコーヒー店の前だったからちょっといい豆が店頭に並んでた。それを容器ごとぶん投げてくるんだから俺に当たった瞬間に弾けるんだよ。それで床はコーヒー豆まみれ。惨状だったね」
男「傑作だな、コーヒーのいい香りを嗅ぎながらよくそんな激昂できたもんだ。」
男2「本当だよいったいどんな神経してんだあの女。二度とあんなんに引っかからないようにしてやる。」
男「ふーん………なぁ、それっていつごろの話だっけ」
男2「もう、かれこれ3年経つな」
男「まだ、気にしてるだろ。言われたこと」
男2「え?いや?」
男「じゃあなんで半袖着てるんだよ」
男2「いや別に、暑いから」
男「冬だぞ?暖房もついてないこの部屋で暑いだと?まったく羨ましいね」
男2「本当だ。暑い、クーラーつけてくれてもいいだ」
男「つくわけないだろ。いいから、ホットコーヒー飲め。」
男2「…おう、ありがとな…(ミルクをいれる)あ、スプーンあるか?」
男「おう、(探す)はい」
男2「いやこれスプーンじゃなくて…」
男「スポーク。」
終わり
舞台上にはパソコンが1台置いてある。そこには小さく「おーい」と書いてあるが客席の1番前の人がギリギリ見えるか見えないか位の大きさである
舞台上手には大量の椅子、乱雑に置かれている。合間を縫ってビン、缶なども置かれている。
舞台下手にはまだ梱包されている引越しの荷物がある。大きいものも小さいものもある
男「聞こえる...」
男2「え?ほんと?」
男「聞こえる...呼んでるよ」
男2「えまじで?」
男、男2、耳をすましている
雨の音
男2「あ、雨降ってきた」
男「...」
男2「なーもう帰ろうぜ」
男「呼んでる...」
男2「...」袖にはける
男2「おまえ傘どこに置いたー?」
男2、傘を持ってきて男にさしてやる
男2「あー前もって来てた分忘れててよかったー」
雨
上から「おーい」と書かれた幕が降りてくる
男「聞こえた!」
男2「え?まじ?」
男「うん、近くいる、近づいてるよ」
男2「聞こえないよ」
男2、雨がやんでからしばらくしてはけていく
男「きた!」
上から「おーい」と書かれた幕がもうひとつ降りてくる
雨が降ってきてすごく強くなっていく、それ合わせて「おーい」の幕の量もどんどん増えていく
男、喜びなのか狂気なのか、表情
雨、明かり、消える。
舞台にはタイピング音が響き渡る
男「おーい」
おわり
作中を通してずっと飛行機の飛行音のような、何か機械の音のような『ブーン』もいう音がなっているそれは強くなったり弱くなったりする
男「未来を見た。それは圧巻だった。」
男、徐々にスマホを顔の前に持ってくる
袖から現れる椅子、テーブル、ソファなど、しだいに部屋が完成していく
しばらくだまってスマホの画面を見続ける
男「...」
しばらくしてスマホを置き、少々疲れた様子
男「地獄だ...」
男「よし」
男、歩きだして去っていく
部屋に置いていた家具たちが徐々になくなっていく
最後何も無くなった舞台でスポットライトがひとつついて消える
おわり
首にカメラをさげた男と女のカップルが2人で並んで歩いてくる、デートか
キョウミ「あ、桜。」
フルイ「と、言った君はもう居なくて、ぼくは今日も君を思い出している。あの日、ひとひらの桜の花びらをみて春の到来を感じたであろう君は、1人ぼっちの春に何も感じないのだろうか」
キョウミ「ね、桜だよ!春だね〜」
フルイ「そうだね、あ、ねぇ、キョウミちゃん」
フルイ、写真を撮る
フルイ「彼女の名前はキョウミちゃんといった、響くのキョウにフルーツの実、それでキョウミちゃん。彼女は名前に違わぬ不思議な人だった」
キョウミ「あ!もう、いま変な顔だったかも、まぁ、いいか、それ、私にも後でちょうだい」
フルイ「いいけど、なんで?」
キョウミ「あれ?フルイ君に言ってなかったっけ、私、将来不意に撮られた写真集を世にだしたいって夢があるんだ」
フルイ「...ふーん、面白そう、それ、一番最初に僕に見せてよ」
キョウミ「ふふーん、無理かな」
フルイ「なんで...?」
キョウミ「だって編集の人とかが最初に見るし、とゆうか絶対私が一番最初にみるし」
フルイ「あは、そうだね」
キョウミ「ね!あっちにいこう!でっかい木の枝さがそうよ!」
キョウミ、はけていく
フルイ「結局あの日の写真を君に渡せないままでいる。僕は、どんな気持ちでこれを握っていればいいの?」