男が二人車にのっている。天パが運転、長髪が助手席だ。
長髪「だーっ!今日は満月かよ!」
天パ「なんだよいきなり!」
長髪「あーっ!」
天パ「ワッ!」
とっさに前から来た車を避ける
長髪「また見ちゃった!うわもう最悪だよ...」
天パ「うるせえよ!なんなんだ満月嫌いか!?」
長髪「大っ嫌いだよ...ワッ!」
天パ「そのいきなり叫ぶのやめろ!こっちは運転に集中してんだ!」
長髪「すまねぇ...コーヒーあるか?」
天パ「後ろの席にある、さっき買ったろ」
長髪、後ろの席からレジ袋をあさり、コーヒーを取る、天パ、「じゃまだよ!」などと言う
長髪、コーヒーを飲んで
長髪「ふぅ...」
天パ「カンベンしてくれよ。こっちは気張ってるんだから、急に叫ばれると運転がおぼつかねぇよ」
長髪「いやでも満月だぜ?こりゃさすがにやべぇよ」
天パ「おい、なんかさっきから後ろの車ずっとついてきてないか?」
長髪「気のせいだ、気張りすぎなんだよ、前向け、前。」
天パ「お前は気を張らなさすぎだ、なんださっきから満月満月って、なんだ?満月の日はオオカミ男になるってか?ふん、じゃあなってみて欲しいですな!なんならいっそ相棒がオオカミ男になるくらいの方が隣にいるおれは落ち着くかもしれないしな!」
長髪「ダァー!もう!満月満月言うな!あんまり!」
天パ「(圧に押されて)お、おう...言葉も...ダメなんだな」
長髪「あぁそうだ。おれは満月がダメなんだよ」
天パ「自分で言っちゃってんしゃん。その、ダメってのはいったい何なんだ?」
長髪「おまえ、親に怒られるときどんなだった?」
天パ「親?」
長髪「そうだ、まさか怒られたことねぇなんて言わねぇよな」
天パ「おれ親なんていねぇよ。ちっちゃい頃からボスが親代わりだ」
長髪「...そうか」
天パ「で?親がお前の満月ダメ症候群とどう関わってくるんだよ」
長髪「なんだその名前......俺の母親はさ、いつも何かと酔っ払って帰ってきてはうちの中でひでぇー荒れようだったんだよ。物壊したり叫んだり...そういう日はいつも決まって何故か俺の頭を掴んで外まで持っていくんだ、そしてなぜか満月を俺に嫌という程見せてきた。おれの頭をガッチリ掴んでな。」
天パ「逃げられずに、ただ満月を?」
長髪「そう、変だろ?でもそれが今でもトラウマでな、満月ってのがどうしても無理なんだ。見るとあの抑えられてずっと見せられた記憶が蘇っちまう。」
天パ「へぇ...」
長髪「だからいつも満月の時は家に引きこもってたんだ」
天パ「じゃあ今日はなんで俺の隣にいるんだ?」
長髪「そりゃあお前の親代わりが強制的に招集かけたからだろうが、なんで今日に限って満月と招集が重なるんだよ!」
天パ「しょーがねぇだろ!今日行けるって言ってたペアが急遽来れなくなったんだから!」
長髪「どこのどいつだよ!それ!なんで来れなくなったって?」
天パ「中耳炎だって」
長髪「嘘つきやがれぇぇぇ!!!」
長髪、両手をガバッと上げる。それで天パの前が塞がれる
天パ「おいあぶ...」
事故。車は田んぼの側溝へ
天パ「いたたたた...おい、おい!」
長髪「あー...あ?」
天パ、安心する。しかし焦ったように
天パ「おい、やべぇぞ!」
天パと長髪は急いで社外へ、バラバラに散らかっているトランクと金
天パ「(金を拾いながら)あぁあ...ボスに怒られる」
長髪「お前も月をずっと見せられるかもな」
天パ「うるせぇ!お前も手伝え!お前のせいでこうなってんだぞ!」
パトカーの音
しかし2人は喧嘩して揉み合っている。天パが長髪の頭をガッチリ掴み、空に向ける。
長髪、叫び声がだんだん「アオー!アオー!」となって犬のようになる
赤いライトに照らされた地面には徐々に大きくなり、毛むくじゃら、頭の上には耳の生えた影が映る...
終わり。
この勝負に勝つための条件は2つ
同情しない
後ろを見ない
頭を使う
よく覚えとけ。
おっ、落ちて、は、葉が、きらひらき、
降りる光はカーテンで、めくれば薄いシースルー
首を正面に戻すと水色の大地。背中にはゴツゴツのコンクリート。...コンクリート?
おれはなぜか空をみていてコンクリートの上に寝転んでいた
「あれ、え、あれ」
タイヤの回る音カラカラカラ...シャリシャリシャリ...
「チャリ...」
チャイムはリズムを合わせるということを知らずにそれをかき消す。
「あ、時間......なんの時間?」
学校。そこにあるすぐ側の学校。おれは今日も遅刻ギリギリの登校途中にコンクリートの隙間に向かってすっ転んだ、のかも、しれない。
「あ...これで...10回目、達成......ふふ」
もはや誰からも怒られなくなってきたその回数を数えて、今日で10回目。もう自分に対する悪気も無くなってきている。
「いい朝だな...」そう呟いた。この清々しく広がる水色と、舞い降りる光、そして落ち葉を眺めだ自分が、全く意図せずに出した言葉だった。自分でも驚いた。朝はこんな自分も肯定してくれる。ありがとう朝。あんまり顔合わせられなくてごめん。おれ、もっと朝に生きてみるよ。
ヒラヒラヒラヒラ、パタリ
体に何かが落ちた、落ち葉だろう。そうかこんな体験もできるのだ、朝に正直になってみると、寒風で落ちる落ち葉だって楽しめるんだ。
ありがとう朝!「紅葉も見てみたかったー!」心から、そう思えた。
シャッッ!
落ちてきた落ち葉が、側面を眼球の前でスライドさせて落ちてきた。
視界が、赤い。赤い、い、いたい。赤い、赤、
落ち葉は止まらない。止むことなく落ちてくる。
「紅葉だ...フフフ...」
なぜ笑っているのか、いまほほをつたっているのは涙なのか、血液なのか、分からないまま授業開始のチャイムが鳴った。
ウソ八百単語帳
おもてなし(主手無し)
…将棋の局面で当初考えていた手を直前になって忘れてしまったときにに使う言葉。【主(に考えていた)手(段が頭の中から)無(くなってしまった)】別な表現として『ド忘れ』があるが、主手無しは将棋の世界の特有な単語として差別化が計られていた。
また、1992年での海外将棋ブームで外国人の競技人口が増えた時に、「Oh!もう手無し!」のキャッチフレーズで株式会社バンゾーが将棋盤を売り出し、全国のTVCMで放映されたことで広く一般家庭にも広まった。
現在では少子高齢化が進んだことで将棋の競技人口自体が減り、主手無しが使われることは減少したが、その古臭さと漢字の羅列のかっこよさから若者の間で『詰み』の状況を表すネットスラングとして一部使用されている。
『退屈な男』
「青。真っ青。綺麗な青。吸い込まれていくから、きっとこの青には不思議なパワーがあって、ぼくを上へ上へと登らせていくのだろう。」
左下から飛行機が現れる
「あ、飛行機だ。きっとあの飛行機も、吸い込まれていっているんだ」
緊急速報がなっている
「あ、てんとう虫。ナナホシテントウだ。ここは3階だから、きっとがんばって飛んできたんだろう。おつかれ。…いや、もしかしてこのてんとう虫も、吸い込まれてきたのか…」
叫び声が聞こえる。泣き声も
「鳥だ。鳥が、飛んでる。いや、吸い込まれている。あれは、なんだろう。眩しくて色が見えない。」
消防車の音が聞こえる
「あ、羽」
落ちてくる。ヒラヒラ
「君は、吸い込まれていかないんだね」
大丈夫ですか?の声、おそらく消防隊
主人公の視界が、落ちていく、最期は空を見ている。あの空に、吸い込まれただけ。