孤月

Open App
6/12/2025, 1:17:21 PM

私はふしだらな女。
でもあなたに出会ってからは、誰彼構わず寝てないの。

いつも同じ部屋で、身体を重ねて。
あなたは私を抱く時だけ、情を含んだ目で見つめる。
部屋を出れば、冷淡で、理性的。
私のことなど眼中にないのがわかるから、
身体を重ねる時だけ私を必要とするあなたに、
微かな好意を持っている。
交わりだけの愛。

「愛のない行為なんて、虚しいだけ」

あなたはそう言ってくれた。
ふしだらな女は嫌いなはずのに、抱く時に情は抱けるなんて罪な人。でも、誠実な人。

あなたの情が全て私に向かなくとも、
私は今日もあなたを迎える。

6/10/2025, 12:35:12 PM

どこまで堕ちても離れない糸がある。

私は何度も糸を切ったはずなのに、気づいたらまた繋がって、新しい結び目を作る。

それは小さな結び目。
またすぐに解けそうで、儚い。

それは頑丈な結び目。
道具を使っても切れないくらい、芯がある。

堕ちた先で自分から糸を解いて、地上に返したはずなのに。

美しい、糸が、何本も。
地上からふわりと降りてきて、
私の身体にそっと触れる。

私が怯えると、
糸はそっと距離を置く。

むやみに触れない糸の優しさに
気づいたけれど、私は何もできない。

堕ちても離れない糸の美しさは、堕ちたものにしかわからない。その沢山の美しい糸を掴み、結び、地上に戻れた暁には。

私が離れない糸を…

6/9/2025, 7:14:38 AM

もう忘れてしまったよ。
思ってたより忘れるのは早かった。

君と歩いた道ってどんな道だったっけ。
なんか、あたたかくて、やさしくて、つつまれた感じだったのは覚えてる。

今の僕はね、そもそも道を歩いてないよ。
ふらふらと足元覚束なく、あてもなく。
道を歩くのを避けて、後ろに下がっていく。
どの道も歩くのを恐れている。
少しだけ道を歩んでみても、すぐ落とし穴に落ちてしまうことがわかっているから。

君と歩いた道、途中で手を放したのはどっちだったかな。多分僕からかな。まあ、そんなことどうでもいいけど、手を放さなかったら、変わってたかなお互い。

でも今はね、もう忘れていいんだって思えるよ。

君は僕を怖がっていたからさ、
瞳の奥に怪物をみたんでしょ?

僕は忘れたことにするから、
君は君のまっすぐな道をがむしゃらに進んでね。

6/7/2025, 6:57:39 AM

禁断の扉を開いてしまった。
前までの僕なら、絶対に手を出さなかった。
君の好奇心に惹かれて、僕は扉に手をかけた。
そしたらすぐに中に引き摺り込まれて、どんどん深くまで落ちてって、気づいたら君と2人、欲望の底にいた。

「どうしようね、2人だけになっちゃったね」

無邪気に笑ってそう言う君は、何も気づいてない。
君のおかげで僕は、沢山のものを手放した。
ここまで僕を連れて来ておいて、さよなら、なんてあり得ないよな?
今度は僕が、君を救い出すよ。
欲望の底から、さあ行こう。

6/5/2025, 11:44:14 AM

性欲。
それが第一だった。
水たまりみたいに浅くて、踏めばすぐに濁るようなもの。でもそれだけじゃ長くは持たないことも、どこかでわかっていた。

最初のメッセージは、わざと下品にした。
軽い女ならすぐ乗ってくるし、まともなら離れていく。
試していたのは、彼女じゃなくて、俺自身かもしれない。

けど、引かれなかった。
むしろ、跳ね返すように強く出てきた。
「気の強い女か」と思ったけど、それが逆にどこか気になった。

だから言った。
「俺のこと、知ってから去って」

やりとりの中で彼女の経験が浅いのはすぐにわかった。
だからこそ誘った。すぐに、週末に。
目的は身体だった。
それだけのはずだった。

だけど、会う前に色々聞いたのは、なぜだろう。
俺の言葉の奥を覗こうとする彼女に、鏡みたいなものを感じたのかもしれない。

「やっぱり明日、会えない?」

それは迷いじゃなく、問いだった。
相手がどこまで踏み込むのか、確かめたかった。

予想外に、彼女は来た。
その瞬間、俺の中で何かが少しだけ静かに揺れた。

車を走らせながら、ぐるぐるとホテル街を巡る。
自分の気持ちも、はっきりしていると思っていたけれど、それくらい曖昧だったのかもしれない。

「ホテル行きたいですか?」

唐突すぎるその言葉に、思わず笑いそうになった。
そこで彼女の覚悟を見た。
濁ってるけど、きれいな水たまりだった。

ホテルに入った瞬間、あとはただの流れ。
何も特別じゃない、ただ性欲を満たす時間。
彼女は受け身で、やはり経験の少なさを実感した。
胸の奥に、少しだけ重さが残った。

終わったあと、関係ははっきりした。
勿論、都合のいいふたり。
欲望を交換するだけの関係。

でも、ときどき、彼女の目が真っ直ぐに何かを映す。
俺の中の何かを、見抜こうとする視線。
それは、ただの反射じゃなかった。
水たまりが空を映すように、
彼女は俺の孤独を、静かに見ていた。

性欲だけでよかったはずなのに。

水たまりに映った空は、本物じゃない。
けれど、たしかにそこにあるように見える。
そんな幻に、俺はすこしだけ、、

Next