とんでもなく痛い爆弾をつけられた。
あなたは苦痛しか与えない。
「あなたのせいでこんなに痛い」
泣きながら訴えたら、
「なぜ泣くの?」ととぼけて聞かれた。
だから、泣き寝入りするしかない。
私はあなたを信用して、身体を許したのに。
あなたにとってはただの駒。
偽りの安心感と包容力に惑わされて、気づいたら依存していた。身体を許す時も心は苦痛しか感じてないのに、都合が良いだけにしては優しすぎるあなたに溺れてしまった。
なんて馬鹿だったんだろう。
ただの興味で飛び込んだ世界は、
やっぱり欲に塗れた闇世界。
まともな人の、ドス黒い裏の顔。
病気の巣窟。
孤独の埋め合わせ。
何か満たされない寂しい者の集まり。
私も、ただ欲に塗れた爆弾魔になっただけ。
結局快楽と引き換えに、苦痛を与え合う関係にしかなれなかった。私だってあなたに苦痛しか与えてないんだろう、私がこんなに痛いのは。
これからこの大きな爆弾を抱えて、私は普通の生活ができるのだろうか。
いっそあなたがもう責任とってくれたらいいのに、なんて。無理なのはわかってるけど笑
あなたは何も痛くないんだろうね。
私にひとつも心が動かないんでしょう?
私を爆弾魔にしたあなたを一生覚えているから
今年の花火は1人。
誰と一緒にみたかったのかななんて考えながら、ベランダから眺めている。
幼い頃は家族と、中高生の頃は友達と、昨年ははじめての恋人と。
夏のじめっとした風を肌に感じながら、潤いのある記憶を思い出す。のんびりとした間隔で派手に音を立ててひかる花火が、断片的に記憶を見せてくれているかのようである。
家族の職場からみた花火。どんな花火だったか覚えていないが、興奮してはしゃぎながら楽しんでみていた覚えがある。職場の人も家族もみんなで、ワイワイと話しながらみていたっけ。
友達とお祭りでみた花火。私が変わっても変わらなくてもずっと忘れないで、思ってくれている友達と。花火よりも友達が綺麗で、横顔をみていた気がする。憧れの存在のように、遠くにいくように思えて、花火すらも切なくみえた。
恋人とベランダから見た花火。場所も花火も今年と同じ。ただ昨年は好きな人が隣にいた。はじめて泊まりに来た日、ぎこちない空気の中花火を眺めていた初々しい甘い記憶。花火は今までで1番輝いてみえた。
そして、今年の花火は1人。
盛大に打ち上がってきらきら輝いて、儚く空に散るひかりに、思わず涙腺がゆるむ。
1人でみるのも悪くない。むしろ大歓迎である。
しかし、今の私は誰とみたかったのかすらもうわからないのだ。それが儚く空に散る光と重なり、切なくなってしまった。
一緒にみたいような、気がする人もいた。でも私と一緒にいてはいけないと、想いは殺している。
花火で思い出す人は、大切な人なんだろうと思う。
自分も、誰かの記憶に花火を通して干渉してないかな、なんて。
そんな願いも儚く消すように、フィナーレの大きな花火がどどーんと鳴り響き、夜闇に消えた。
知らぬ間に 染み込んだ癖 君ゆずり
身に染み渡る 心の泉
言わずとも 互いに気づく 滲む愛
馴染むひとみに 影は映らず
沈黙も あなたとならば 良い余白
君の言葉に 力も宿る
気づけばまた赤信号を無視している
恋の終わりが近づくのは自分への警鐘だって
もっと早くに気づいていれば
恐怖に甘んじていた
そんなの嫌って気づいたから
罪から逃げた
媚びるような声は振り払って
渦巻く欲望と混乱した感情のまま
媚びる声を適当にあしらっていたら
どの声も大事じゃないように思えて疑って
何も聞こえなくした
そんな中辺鄙な片田舎で出会った聖人君子
愚人の穢れごと受けとめる器の持ち主
目を逸らす事ができなかったばかりに
貴方まで汚れてしまって
貴方の声と「またね」って言葉には珍しく心を乱されたのに、寂しいね
そうなれば自ら去るのが道義
私貴方の気持ちわからないって突き放して
貴方も去って欲しかったんでしょう
よかったね、悪人にならなくて
聖人でありたかった
そんな願い、はなから願っても意味なかった
根っこは悪人
最初からどうしようもなかったんだね
何も愛せない可愛そうな私?
やるせない彷徨う証
2人だけでルールなんて知ったもんかって
少しだけでいいから
罪も消えるくらい遠くに連れ出して
思考停止して機能停止して
壊れた今が1番無垢で美しいけど
もう警鐘は鳴り止まないけど
止めることもできないような気がする
俺は泣いたことがなかった。
でも、もう顔が歪んで涙が溢れるのを止められない。
落ちた涙が土に滲む。
「なあなあ、お前の元カノ別れてからヤバいらしいぞ。」
風の噂で、別れた彼女のことを聞いた。
付き合っていた時から、どこか世間から距離を取っているような異質な雰囲気はあった。
彼女は、我儘で、コロコロ表情が変わる子どもみたいな無邪気な人だった。でも不安になった時に見せる表情が、不穏で、この世の闇を全て抱えこんでしまいそうな目をしていた。俺はその度にひやりとした。
彼女は危険だ、と本能が訴えた。離れないと俺も闇に引き摺り込まれる、と。でも俺は一度惹かれてしまうと自分から離れたいとは思えなかった。そしてこのままずっと一緒にいれたらいいなと漠然と思っていた矢先、彼女から別れを告げられた。ホッとした自分がいた。引き摺り込まれずに済んだと。
だから、彼女がヤバくなったと聞いても、さほど驚かなかった。ただ別れてまだ日も浅いのに、こんなに噂が回るほど好き勝手やっている彼女に失望した。今頃、俺の知らない男にでも抱かれているんだろうなと想像してしまう。そして、俺のことなんて、もう、すぐに忘れたんだろうなって。
俺は振られた側だし、別れてすぐは落ち込んだけどもう吹っ切れていると思っていた。でも、こんな話を聞くと、彼女を救えなかった後悔や罪悪感が押し寄せてくる。彼女が救いの手を振り払っても、ずっと側にいる存在でありたかったんだと今になって気づく。本当は引き摺り込まれてでも、向き合える存在でありたかった。
ただただ彼女のことを愛していた。
でも、もう愛せない。
そろそろ雨が降りそうだ。雨の香りがする。
俺は涙の跡をザッザッと掻き消して前を向いた。