孤月

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6/9/2025, 7:14:38 AM

もう忘れてしまったよ。
思ってたより忘れるのは早かった。

君と歩いた道ってどんな道だったっけ。
なんか、あたたかくて、やさしくて、つつまれた感じだったのは覚えてる。

今の僕はね、そもそも道を歩いてないよ。
ふらふらと足元覚束なく、あてもなく。
道を歩くのを避けて、後ろに下がっていく。
どの道も歩くのを恐れている。
少しだけ道を歩んでみても、すぐ落とし穴に落ちてしまうことがわかっているから。

君と歩いた道、途中で手を放したのはどっちだったかな。多分僕からかな。まあ、そんなことどうでもいいけど、手を放さなかったら、変わってたかなお互い。

でも今はね、もう忘れていいんだって思えるよ。

君は僕を怖がっていたからさ、
瞳の奥に怪物をみたんでしょ?

僕は忘れたことにするから、
君は君のまっすぐな道をがむしゃらに進んでね。

6/7/2025, 6:57:39 AM

禁断の扉を開いてしまった。
前までの僕なら、絶対に手を出さなかった。
君の好奇心に惹かれて、僕は扉に手をかけた。
そしたらすぐに中に引き摺り込まれて、どんどん深くまで落ちてって、気づいたら君と2人、欲望の底にいた。

「どうしようね、2人だけになっちゃったね」

無邪気に笑ってそう言う君は、何も気づいてない。
君のおかげで僕は、沢山のものを手放した。
ここまで僕を連れて来ておいて、さよなら、なんてあり得ないよな?
今度は僕が、君を救い出すよ。
欲望の底から、さあ行こう。

6/5/2025, 11:44:14 AM

性欲。
それが第一だった。
水たまりみたいに浅くて、踏めばすぐに濁るようなもの。でもそれだけじゃ長くは持たないことも、どこかでわかっていた。

最初のメッセージは、わざと下品にした。
軽い女ならすぐ乗ってくるし、まともなら離れていく。
試していたのは、彼女じゃなくて、俺自身かもしれない。

けど、引かれなかった。
むしろ、跳ね返すように強く出てきた。
「気の強い女か」と思ったけど、それが逆にどこか気になった。

だから言った。
「俺のこと、知ってから去って」

やりとりの中で彼女の経験が浅いのはすぐにわかった。
だからこそ誘った。すぐに、週末に。
目的は身体だった。
それだけのはずだった。

だけど、会う前に色々聞いたのは、なぜだろう。
俺の言葉の奥を覗こうとする彼女に、鏡みたいなものを感じたのかもしれない。

「やっぱり明日、会えない?」

それは迷いじゃなく、問いだった。
相手がどこまで踏み込むのか、確かめたかった。

予想外に、彼女は来た。
その瞬間、俺の中で何かが少しだけ静かに揺れた。

車を走らせながら、ぐるぐるとホテル街を巡る。
自分の気持ちも、はっきりしていると思っていたけれど、それくらい曖昧だったのかもしれない。

「ホテル行きたいですか?」

唐突すぎるその言葉に、思わず笑いそうになった。
そこで彼女の覚悟を見た。
濁ってるけど、きれいな水たまりだった。

ホテルに入った瞬間、あとはただの流れ。
何も特別じゃない、ただ性欲を満たす時間。
彼女は受け身で、やはり経験の少なさを実感した。
胸の奥に、少しだけ重さが残った。

終わったあと、関係ははっきりした。
勿論、都合のいいふたり。
欲望を交換するだけの関係。

でも、ときどき、彼女の目が真っ直ぐに何かを映す。
俺の中の何かを、見抜こうとする視線。
それは、ただの反射じゃなかった。
水たまりが空を映すように、
彼女は俺の孤独を、静かに見ていた。

性欲だけでよかったはずなのに。

水たまりに映った空は、本物じゃない。
けれど、たしかにそこにあるように見える。
そんな幻に、俺はすこしだけ、、

6/5/2025, 8:31:27 AM

恋でも愛でもない、性欲、それだけ。

最初の印象は最悪だった。
メッセージは下ネタのオンパレード。
私も真面目に相手する気になれなくて、
気の強い女を演じた。

「俺のこと知ってから去って」
しかしこの一言に何故か興味を惹かれて、私は最悪へ飛び込んだ。

メッセージのやりとりを始めて、すぐに週末に会おうと誘われた。
経験が浅い私は、「経験豊富」という言葉に弱かった。
身体目的でも、経験を積めるならそれでいいかと割り切ったつもりで会うことを決めた。

身体目的なのに、メッセージでは意外と色々聞かれた。
私も相手の自信の源が気になって、少しずつ知ろうとした。嘘かもしれないけど、彼の言葉には確かな自信があった。

だんだんと感じ始めた。
この人は、恋人っぽいことも無料でできる性欲処理道具を求めているんじゃないかって。
私も、自分が割り切れる範囲で、その要望に応えようと思った。お金のやりとりがある関係にはなりたくなかった。

「やっぱり明日会えない?」
次の日、そんなメッセージが来た。

私は覚悟を決めた。
今の私には、誰かの性欲処理道具になるくらいしか価値がない。
だったら身体を許すくらい、何ともないと思えた。
お互い性欲を満たすためだけに楽しめば、何も悪くない。
そう、自分に言い聞かせた。

当日、車に乗ってしばらくすると、やはりホテル街をぐるぐるし始めた。
「暗くなってきたね、どこ行く?」
そわそわした声がわかりやすかった。

もう言ってしまえばいいのに。
「ホテル行きたいですか?」
私はムードも何も無視して、直球で誘った。

これで逃げ道はなくなった。
相手ももちろん乗ってきた。

ホテルに入れば、やることはひとつ。
密室。逃げられない。断る理由もない。
好きでもない、初めて会った相手に身体を許した。

私の中で、大事にしていたものが崩れていく音がした。
でも、もう、それでよかった。
そう思いたかった。

今も印象は最悪だ。
向こうもきっと、私のことを良い印象とは思っていない。ただの、都合の良い存在。
お互い相手の求めることに、ただできる範囲で応え合うだけ。

でも、性欲だけじゃない、
たまに垣間見える“表の顔”を知ってしまうと、どこかに情が入る。

これから私を、もっと壊してくれるだろうか。
私は、相手のために、どこまで応えればいいのだろう。

性欲、それだけ。
……のはずだったのに。

5/28/2025, 2:53:25 AM

全てに見放された瞬間、
孤独に押し潰されそうになるが、
どこかでやっと解放されたと思っている自分がいる。
そして、オーガズムに達したような快感を感じる。
この感覚を、私は勝手に「見捨てられ快感」と呼んでいる。

誰かに必要とされるたびに、
自分ではない何かを演じる苦しみがあった。
だからこそ、見捨てられることで、
「これが本当の自分だ」と錯覚して安心しているのかもしれない。

この快感は、たぶん幸せではない。
でも、それを繰り返すことで、
私は何かを確かめようとしているのかもしれない。
私と最後まで堕ちてくれるくらいの覚悟を持ってくれる人を、自分は努力をせずに求めようとしているのかもしれない。
人の人生を道連れにしてまでこの快感を得たいわけじゃないけど、この重さを受けとめて欲しいんだと思う。

ここまで見放されて、見捨てられることに快感を感じるのは、これで最後にしたい…

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