星蒼楼

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1/19/2024, 3:19:49 PM

君に会いたくて

会いたい。どうしても君に会いたい。

君は今、どこで何をしているのかな。詳しくそれを知ることは出来ないけれど、君が今も同じ空の下で生きていると思うだけで、私も頑張って生きていけるんだ。
お仕事を頑張っているのかな。今頃ご飯食べてるかな。それともお風呂に入っているかな。
毎日仕事で忙しいのもいいけど、頑張りすぎてしまう君だからたまには家でゆっくりしていてほしいな。

週末にはやっと会えるね。
そのために美容院にも行ったし、ネイルも新しくしたよ。新しい服やコスメを買って、メイクもさらに研究して、前会った時よりももっとかわいい私でいられるように。
君は新しくなった私に気づいてくれるかな。周りの子に浮気したら許さないんだからね。
私がかわいくいられるのは全部、君のおかげなんだから。

今日も生きててくれてありがとう、私の推し様♡

1/18/2024, 4:11:51 PM

私は小学生の時、私含め三人で交換日記をしていた。
なぜか憧れを持っていた交換日記。やろうと決めてからすぐに皆で文房具屋に行き、お小遣いを出し合いシンプルなノートを買って、私たちの交換日記がスタートした。
誰にも秘密でいようという約束で始めたそれは、自分たちだけで内緒のことを共有しているという感覚がわくわくして、楽しくて、自分の番が回ってくるのを待ち遠しにしていた。

そんなある日、いつまで経っても回ってこないと、一人が言い出した。私は次に渡したし、もう一人に聞いてもわからないと言う。全員自分の家や思い当たる所を探したが、ついにノートは見つからなかった。

それから半年ほど経って、部屋を片付けていたら、前に失くしたと思っていたノートが急に出てきた。一番最近のページを見ると、私が書いた誰にも届いていないページ。
失くしてからもう時間も経っているし、一回は探しても無かったと言った手前、今更告げるのもと思い、生まれた罪悪感と一緒にそっと引き出しの奥にしまった。

あれから何年が経っただろうか。もうすぐ成人するというのに、いまだにあのノートは引き出しの中で眠っている。私の昇華しきれない記憶と罪悪感と共に、今日も日記は閉ざされたままだ。

1/17/2024, 4:02:45 PM

「うわ、寒いー」
 木枯らしが吹き、世の中に冬の訪れを告げる。
「もう秋も終わりだね」
「そうだね、そろそろ本格的に寒くなるんだろうなー」
 冬は嫌いだ。冷え性だから体は冷えるし、朝にTシャツ一枚選ぶだけの服装で過ごせない。寒いから温かい飲み物を飲みたいところだが、猫舌なので飲むのが億劫で結局体を冷やしてしまったり。
「そうだ! 冬になるってことは、誕生日にもらったマフラー、やっと使えるね」
「あ、ほんとだ。忘れてた」
「あげた本人が忘れないでよー」
「だってあげたの夏だし」
 今年の夏、季節外れなのになぜかやっていた冬物バーゲンで、恋人に似合いそうなマフラーに出会ってしまい、どうしてもプレゼントしたくなったのだ。
「もらってから、ずっと冬が楽しみだったんだ。早く着けたところ見てもらいたくて」
 そんな反則級の言葉もしれっと言っているようで、決してこちらと目が合わないのがどうしようもなく愛しい。
「僕も楽しみ。君が僕のあげたマフラーつけてるとこ見るの」
 耳まで赤くなってる君の頭をくしゃっとなでて、腕の中に抱きしめると、さっきまでの寒さも感じないようだった。

1/16/2024, 4:17:32 PM

美しい

「美しい花を見に行こう」
 彼はそう言って僕を無理やり外へ連れ出した。
 花なんてどこで見ても一緒なんだから、花を見せたいんだったら花屋で買ってきてくれたらいいのに。
「ほら、ここにも花があるじゃん。僕はこれで十分だよ」
 玄関を出てすぐ、お母さんがプランターで育てている小さな花を指して言う。
 しかし彼は、僕の腕を離さずぎゅっと掴んだまま、前を向いて歩き出した。
「確かにこの花も綺麗だけど、今の君に見てもらわなくちゃいけない景色があるんだよ」
 彼の珍しく真剣な横顔に、僕は黙ってついて行くしかなかった。

「うわっ、風強いね」
「この辺は一年中強いんだ。もうすぐ着くよ」
 しばらく手を引かれてきたが、あまり馴染みのない場所に来ているようだ。初めて見る景色に、ちょっとだけわくわくした。
「さあ着いた。すごいでしょ、これ」
 小高くなっている土手を登ると、そこには辺り一面、ピンクの花が咲き誇っていた。常に吹く強風の中、花弁を揺らしながらそれでも自立して堂々と咲いている。
 名前も知らない花だけど、風に吹かれても自分の輝ける場所で根を張り、仲間と共に揺れている様に、心臓を鷲掴みにされた。
「美しいね」
「うん、そうでしょ」
「……もう一度頑張ってみようかな」
「……そっか。応援するよ」
「ありがとう」
 親友がここへ連れてきてくれた理由が、なんとなく分かった気がした。

1/15/2024, 4:42:17 PM

この世界はどうやら、私中心で回っているわけではないらしい。

私がもっと小さい頃は、世界は自分が中心に回っているのだと思い込んでいた。
家族、先生、友達、街行く人々、近所の野良猫。生きているもの全ては、私という物語の中に出てくる一要素でしかなくて、全ての出来事は私の為に作用しているのだと、信じてやまなかった。
私は言わばこの世界の王だ。何をしてもこの世界で咎められる事など一切ない。と、何度自分勝手な行動で他人を傷つけてきたのだろう。

ある日、私の信じていた世界が崩れ落ちたとき、漸くこの世界の豊かさに気がついた。誰が中心でもない、生きるもの皆がそれぞれが主人公で、毎日を一生懸命生きているのだと。

一人ひとりが輝くこの世界はなんて美しいのだろう。

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