南国の夏が、北国の秋に恋をしたんだ。
もし彼らが大人だったなら、決して交わることのない恋だと分かって、はじめから諦めてしまっただろうね。
でも、彼らはまだ若かった。
多感な時期で、いろんな想いに揺れ動いていて、このまま中途半端に恋に悩んでいるんだ。
せつないけど、それでいいんだよ。きっとね。
だって、自分の経験からじゃないと分からないことがいっぱいあるんだから。
「秋恋」
☆☆☆☆☆☆☆
その日の僕はモヤモヤした気持ちでいっぱいだった。
見えないものの重さで喉が詰まりそうだった。
そんな気分で部活をサボって学校から帰る途中、通り雨に遭った。
雨は空気の密度を変え、僕の蓄積したモヤモヤは、やわらかくまとめられ整理されていく。
しばらくして雨があがると、心の霧は晴れ軽くなる感覚を覚える。
空を見上げると、虹が弧を描いて浮かび上がっていた。
特別なプレゼントのような気がした。
「通り雨」
☆創作
秋の入り口は小さく、そこから織り成される季節の出口は澱みなく真っ直ぐに広がっていく。
その流れは短く、儚い幻のようでもある。
静かに染まっていく葉は夏に置き忘れた言葉。
それは、ずっと探していたのに、いつの間にか心の奥に埋もれていたもの。
ようやく見つけたその言葉の声を、影が迷い込み覆ってしまう前に捕まえておこう。
秋の光が、記憶を呼び覚ますように木々の上に淡く輝いているうちに。
「秋🍁」
男の子は裸足になり、地面の温もりを感じながらジャングルジムへと足を運ぶ。
彼は白岩山羊のような軽快さでその高みへと登り始める。
てっぺんにたどり着くと、彼は何かを空へと放り投げた。
その動作は、キラキラした四和音のように、周囲の空気を震わせる。
彼は5つ降り、また5つ降り、さらに5つ降りて、地面に戻ってくる。
そして、再び登ろうとするのだ。
とうの昔にジャングルジムを登ることを忘れてしまった大人たちは、ただその様子を見守る。
しばらくすると、大人たちは揺らぐ空気に酔いしれながら、地面の上で踊っていた。
彼ら自身が音楽の一部となり、身体の奥底から湧き上がるリズムに委ね、ジャングルジムを見上げ両手を挙げて踊るのだった。
「ジャングルジム」
君の中に夢と涙が宿る限り、フェニックスは君に寄り添う。
君が愛を語るときや、幸福の音を聴いている瞬間、さらには大切なものの微かな響きに耳を傾けているとき、フェニックスの方から君に近づいて、その透明な羽の先で、君のうたかたの時を静かに止め、心の中に永遠性を与えてくれるのだ。
「時間よ止まれ」
お鳥様が夜空を飛んでいると、灯りの寂しい村の夜景が目に映った。
ここはお年寄りが多く、若者たちは次々と他の町へと移っていき、住んでいる人々は減り続ける限界集落である。
お鳥様は金色の紙で花を折り、その花に優しく息を吹きかけ、空から村にそっと放った。
折り紙の花はくるくると舞い降りふわりと地面に着地すると、そこから金色の花が咲いた。
夜空からのその光景は、とても美しく映し出された。
翌年、その金色の花の隣に、若者の夫婦が戻って来て家を建て、子どもを産んだ。
しかし何年かが過ぎ去り、
若者夫婦は再び村を後にしてしまった。
それでも、金色の花はその数を増し輝き続け、美しい夜景が村を照らし続けている。
「夜景」