かっこよくて優しくて、引く手数多な要素を持った彼に選ばれたことに対して私は優越感を感じる。彼曰く、小さい頃から優しくしてくれて、ありのままの自分を見てくれる存在だから私のことを一途に想っているらしい。だから、他の女性に言い寄られても、彼にはその言葉が届かないのだ。彼にとっての特別になれることがこんなに嬉しいとは思わなかった。
しかし、そんな完璧な彼に対して平凡な自分に私は劣等感を感じる。容姿端麗でもなく、何か秀でたものがある訳でもないごく普通の人間である私が、彼の隣に立っていてもいいのだろうか。私なんかのせいで、彼に恥をかかせてしまっているのではないか、と不安になってしまう。きっと彼にこれを伝えたら、自分を卑下しないでください、と彼は言ってくれるのだろう。
人間とは矛盾を抱え苦しむ生き物だと思うのだが、こんな気持ち誰も分かってくれないだろうと、今日も私はこの気持ちを胸の奥にしまい込んだ。
テーマ「優越感、劣等感」
俺は、彼女に優しくされてから一途に想っている。それは今でも変わることなく、これまでずっと他に好きになった人は居ない。
「あなたって私の事よく褒めてくれるけど、他の人も褒めてたりするの?」
「いいえ、俺は貴方以外には興味ありませんから」
彼女には俺が表裏のない性格に見えているのだそう。確かに、彼女を褒めるのは俺の本心だ。だからこそ、他人を褒めることはできない。だから、彼女の見え方は半分合っていて、半分間違えている。
「俺はこれまでずっと貴方しか愛したことありませんよ。そして、これからもずっと」
「あ、ありがとう…」
恥ずかしそうに赤面する彼女の横顔を見ながら、俺は可愛いなぁと思いつつ笑みを零した。
テーマ「これまでずっと」
仕事の出張で、今日はビジネスホテルに1泊せざるを得ない状況になってしまった。いつもなら落ち着ける我が家と、愛しい彼が待っているのだが、今日はホテルの狭い1部屋で過ごさなければならない。ひとりぼっちで静かな部屋で寂しい思いをしていると、スマホからLINEの通知音が鳴った。
《お疲れ様です。ホテルには着きましたか?》
その1件のLINEは私の寂しい気持ちを吹き飛ばしてくれた。それは出張することを事前に伝えていた彼からのものだった。私は嬉しさのあまりすぐに返信した。
《着いたよ〜!私が居なくて寂しくない?》
本当に寂しいのは私なのに、強がってそんな内容を送った。その後、お互いに声を聞きたくなって通話をするまで時間はかからなかった。
テーマ「1件のLINE」
目が覚めると、いつも隣に彼女が居る。俺の方が先に起きるので、彼女の可愛らしい寝顔を眺めることができる。平日なら、このまま朝ごはんを作りに行くが、今日は休日だ。たまには彼女が目を覚ますまで傍に居ようか、と思い隣で見守る。すぅすぅと穏やかな寝息を立てて眠る彼女を俺は起きないように優しく撫でた。
「ん…おはよ」
「おや、起こしてしまいましたか。おはようございます」
しばらく撫でていると、まだ寝ぼけた様子で彼女が目を覚ました。その無防備な姿はとても愛らしく、これからもずっと守りたいと思えた。
「大丈夫だよ、今日は隣に居てくれたんだねぇ」
「えぇ、今日はお休みの日ですから。一緒に朝ごはん食べましょうか」
そう言って、俺は彼女の手を繋ぎながらキッチンへ向かった。
テーマ「目が覚めると」
大人になるということは、何でも自分で出来るようになること、当時子どもだった私にとってはそれが当たり前だと思っていた。子どもだけでは出来ることも少なく、大人である親の力を借りないと行けない不自由感があった。そんな大人に憧れると同時に、自分は何でも出来るようにならないといけないのかという不安があった。
しかし、いざ大人になると私の当たり前は良い意味で崩れ去った。人間誰しもが得意なことと不得意なことがある。大人になっても、自分の出来ないことを他人にやって貰ったり、逆に自分の出来ることを他人の代わりにやったり、お互いに助け合って生きていけるのだ。
「今日も仕事で疲れた…」
「お疲れ様でした。一日頑張れたあなたは本当に素晴らしいですよ。家では俺が貴方を支えますからね」
疲れて動けない時は、彼が率先して家事をしてくれる。特に彼は料理上手で、彼の料理を食べるととても幸せな気分になる。それに、彼は私を癒すためにマッサージを学び、疲れを取るために度々やってくれるのだ。
「貴方が当たり前だと思っていることでも、他の人から見たら素晴らしいことなのですよ。だから、どうか一人で抱え込まないでくださいね」
私はプライドが高いところがあり、当たり前と言う言葉に縛られやすい方だ。だから、彼がこう言ってくれた時は感動して涙を流したこともあった。彼にいくら感謝をしても、彼にこれくらい当たり前ですよと返されたこともある。当たり前って難しい。
テーマ「私の当たり前」