夜になって暗くなり、街の明かりがつき始める頃も好きだが、私はさらに夜が深くなり、街の明かりが少なくなる時間も好きだ。昼間は賑やかな街が、夜になって静かになるのもその良さを出している。
「よくデートスポットで、綺麗な夜景スポットとかあるじゃん?」
「ありますね。今度のデートはそういう所に行きたいのですか?」
「それも良いんだけど、深夜にベランダから見る明かりの少ない夜景も、特別感があって好き」
「あぁ確かに。夜更かしする中でも優越感に浸れますよね」
そんな感じで、夜景についての話をしていた。お互いに好きな物は似ていて、夜景でも都会のネオンが光る街並みよりも、建物の明かりがちらちらと光っている方が好きなのだ。
「夜景デートよりも、私は星空を見る方が好きかな」
「プラネタリウムとかは如何ですか?」
「いいね!満天の星空を見られるところは少ないから、プラネタリウムは大好きだよ」
それなら次のデートはプラネタリウムですね、と彼は微笑みながら言った。
テーマ「街の明かり」
街中を歩いていると、所々で笹が飾られているのを見かけた。そうか、七夕か、と思いながら私は彼に聞いてみた。
「ねぇ、何か願い事ってある?」
「あぁ、そういえば今日は七夕でしたっけ?何も考えてませんでした」
「だよね〜、大人になってからこういう行事とかやらなくなったし」
そんな話をしながらショッピングモールに入ると、やはりここでも笹が飾られていた。買い物客が書いていったのか、色とりどりの短冊が掛けられている。少し近づいてみると、ケーキ屋さんになりたい、と
幼い子どもが書いたであろう願いや、恋人が欲しいといった恋愛の願いなどが書いてあった。
「あ〜、願い事思いついたけれど、見られたくないから心に留めとくわ」
「奇遇ですね、俺も思いつきましたが恥ずかしいのでやめときます」
それから夜になり、晴れた空の下で星を眺めていた。今日はいい天気だし、彦星と織姫も会えているんだろうなと思いを馳せながら、彼の方を見た。
「今日のお昼に言ってた、あなたの願い事分かったかも」
「俺もですね。貴方の願い事はきっと俺と同じだと思います」
「それならせーので言おうか」
二人きりだけの静かな空の下で、私がせーの、と声を掛けると、ずっと一緒に居られますように、という二つの声が重なった。
テーマ「七夕」
彼女は静かにアルバムを見ていた。何を見ているのだろうと後ろから覗き込むと、これは…幼い頃のものだろうか?
「アルバムを眺めて、一体どうしたのですか?」
「あぁ、これ?小学生くらいの頃のものだけど、あなたは覚えているかな?」
見せてもらうと、俺たちと地元の友だちが仲良く遊んでいる写真があった。彼らは俺たちの共通の友だちで、今でもビデオ通話で顔を合わせるぐらい長い付き合いがある。
「彼らは、今でも付き合いのある友だちですね!俺たちが初めて出会ったのもこの頃でしたね」
「そうそう!私たちが地元を離れて、直接会える機会も少なくなっちゃったけど、たまに通話しているから元気そうではあるんだよね」
俺たちが大人になってから、技術の進歩で遠くにいても話せるようになったが、子供の頃はそんな物もなく、学校で遊ぶ約束をして直接会うしか無かったのだ。でも、それはそれで良かったなぁと懐かしく思った。
「でもね、今度の夏休みに帰省する時に遊びに行く約束しているからまた会えるよ!」
「おぉ、それは楽しみですね!」
直接会う前に、俺たちはその友だちの思い出をたくさん話して懐かしんでいた。その会話は途切れることなく、時間を忘れてしまうくらい弾んでいた。
テーマ「友だちの思い出」
今日は快晴で、遮るもののない星空が広がっている。こんなに綺麗な星空を見るのは久しぶりだと思いながら、私たちは星座早見盤を持って外に出た。
「今の時期って、さそり座とか夏の大三角が見えるよね」
「そうですね、東から南の空を見てみましょうか」
東の空には一際強く輝く三つの星が、南の空には赤く輝く星が見えた。他にも見える星を早見盤で調べながら見ていた。
「もうすぐペルセウス座流星群の時期だね。一度見た事あるけれど凄かったなぁ」
「ええ、幼い頃の事を思い出しますね。その時は久しぶりに夜更かししましょうか」
夏休みが楽しみだね、と笑い合いながら私たちは空を眺めていた。
テーマ「星空」
愛し合っている者たちの運命と最期、その全ては神様だけが知っているのだろう。誰と結ばれて、いつ別れの時が来るのか。人間には分からないから、愛する人との今生の別れがとても悲しく感じるのだろう。願わくば、共に眠りにつきたいものだ。
それなら、私たちだけが知っている事も欲しい。お互い見た目以上に多く食べる事とか、思い出の場所とか…。あと、私だけが知っている事なら、普段かっこいい彼でも、寝顔はとても可愛らしいところとか…。
あぁ、これら全ても神様にはお見通しなんだろうなぁ。
テーマ「神様だけが知っている」