人生はよく道に例えられる気がする。確かに、色んな選択肢が宛ら分かれ道のように見えるし、人との出会いと別れは旅の思い出のようなものだ。
私の人生は、大切な人と出会ってから、ずっとその人と共に歩んできた。とても大事な自分の人生という旅路を、一緒に続けていきたいと思えるような人ができたのだ。
「私たち、ずっと共に歩んできたよね」
「はい、俺はどこまでも貴方にお供いたしますよ」
旅は道連れ世は情けと言うが、彼となら道連れになっても構わない。例えこの道の先にどんな困難が待ち受けていても、二人でなら乗り越えて行けるはずだから。
テーマ「この道の先に」
夏になり、日差しが強い日が多くなってきた。気温も30℃を超える日も多くなり、外に出るだけで体力が削られる。
「暑すぎる〜、外出たくない」
「そうですね、暑すぎてやる気が起きません」
私たちはお互いに冬の方が好きなくらい、暑さに弱かった。たとえ日傘をさしながら歩いていても、歩く速度が目に見えて落ちてしまうのだ。部屋の中でゴロゴロしていても、冷房を少し止めただけで暑く感じてしまう。
「日差しが強いと、日焼けするから本当に嫌…」
「貴方は色白ですからね、日焼けすると赤くなるでしょう?」
「そう、あれヒリヒリして痛いの」
そう言うと、彼は日焼け止めを持ってきてくれた。自分で塗ろうとしたのだが、彼はせめて貴方の肌を守るお手伝いをさせてください、と言ってそのまま塗ってくれた。
「これで大丈夫なはずです。あと、日傘も忘れないでくださいね」
「ありがとう、行ってきます」
入念に日焼け止めを塗ってもらった私は、日傘を持って玄関を出た。
テーマ「日差し」
俺と彼女が共に暮らす前の、一人きりの部屋。その窓越しに見えるのは、変わり映えのない街並みだった。今日は彼女が俺に会いに来てくれる日で、その時を今か今かと待っていた。こういう時に限って時間の流れが遅く感じるのだ。二人でいる時間はあっという間に過ぎていくのに…。
待つのが退屈だなぁ、と思っていたその時、会いたかった彼女の姿が見えた。とても可愛らしいその姿は俺の視線を釘付けにした。彼女がいるだけで、いつもの街並みがこんなにも色づいて見えるなんて思いもしなかった。こちらに気づいたらしい彼女は、俺に向かって大きく手を振った。それを微笑ましく思いながら俺は手を振り返し、彼女の元へ向かった。
テーマ「窓越しに見えるのは」
「あなたって、私以外に好きな人がいたことある?」
「いいえ、昔から貴方だけを一途に想っております」
彼はずっと昔からそう言ってくれた。私からしたら大したことをしていないのだけれど、彼にとって私は命の恩人らしいのだ。
「俺が貴方に助けられていなかったら、今の俺はありません。それくらい、俺にとっては運命の人なのです」
「そんな大袈裟な…でも、あなたと結ばれる運命だったのは嬉しい」
もし、赤い糸が目に見えるものだとしたら、私たちをしっかりと結んでくれているのだろう。見た目は普通の赤い糸でも、硬さがワイヤー並みでそう簡単に切れないものであるはずだ。こう表現すると、ロマンチックの欠けらも無いが。
「これからも、ずっと一緒に居ようね」
「ええ、末永くよろしくお願いしますね」
そう言って繋いだ手の温もりはとても温かかった。
テーマ「赤い糸」
買い物の帰り道で、入道雲を見た。夏だなぁ、と思うと同時に夕立が来そうだから早く帰らなきゃと急いだ。そして、家に着いてから数分後、雷が鳴り響いた。
「ひっ…!?」
「あっ、大丈夫ですか?」
大人になった今でも、私は雷が苦手だ。目の前に雷が落ちてきたことがあり、あの時の光、音、振動を思い出してしまうくらいトラウマになっている。震えて硬直してしまった私を彼は抱きしめてくれた。
「よしよし、俺が傍で守ってあげますから」
そう言って私の背中をぽんぽんとしてくれた。私も彼をぎゅっと抱きしめながら、彼に意識を集中させた。胸に耳を当てると、彼の心音が小さく聞こえる。その間も、彼は私の頭や背中を撫でてくれた。
夕立は数時間で止み、外を見ると運良く大きな虹がかかっていた。
テーマ「入道雲」