「夏といったら、何が思い浮かぶ?」
冷房の効いた部屋で涼みながら、私は彼に聞いてみた。夏にはたくさんイベントあるからなぁ、やっぱりお祭りかなぁ、とぼんやり考えていると、彼は答えた。
「うーん、スイカですかね?あとはかき氷とか」
「食べるのが好きなあなたらしいね」
一瞬拍子抜けしたが、そういえば彼はたくさん食べる方だったとすぐに納得してしまった。
「そういう貴方は何が思い浮かぶのですか?」
「やっぱり夏祭りかな、花火を見たり、屋台でいろいろ食べたり…」
「貴方も食べる事を考えているじゃないですか」
彼にそう言われて、はっとした。そしてお互いに笑いが込み上げてきて、私たちやっぱり似たもの同士だねと笑いあった。
テーマ「夏」
「あなたって優しいよね」
彼女は俺のことを優しいと褒めてくれる。それは俺が彼女のことを愛しており、大切に思っているからだ。でも、ずっと優しく振る舞えるほど俺は性格がいい訳でもない。
「そう言ってもらえるのは嬉しいですけど…俺はそんなできた人間ではないですよ?」
俺は普段なら見せないような不敵な笑みを浮かべながら、いつもより強く彼女を抱きしめる。抱きしめられて嬉しそうに笑う彼女を見ると、あまりにも純粋すぎて抑えが効かなくなりそうになる。
「貴方のことは本当に愛しています。出来ることなら、貴方をこのまま俺の腕の中に閉じ込めていたいくらい…」
彼女の耳元でそう囁くと、少し恥ずかしそうに頬を染めていた。あぁ、なんて可愛らしい人だろう。本当に他人の目に触れないように、ここではないどこかへ攫ってしまいたい。それ程までに、彼女は乙女な反応をしてくれる。その度に、俺の心を掴んで離さないのだ。
「もし、俺が貴方をここではないどこかへ連れて行くとしたら、付いてきてくれますか?」
「もちろん!あなたとなら、どこまでも」
若干食い気味になる程、彼女は即答した。それが例え逃避行になるとしても、彼女は俺に付いてきてくれるのだろう。
テーマ「ここではないどこか」
初めて彼と喧嘩をしてしまった。今までとても仲良しだった分、かなりの大喧嘩になってしまい、勢いで私は家出をしてしまった。とはいえ、行く宛てが思いつかなかった私は実家へ向かった。
「いきなりどうしたの、彼は一緒じゃないの?」
「彼と喧嘩して、しばらく会いたくない」
私を出迎えてくれたお母さんは、心配そうな顔をしながらもしばらく泊まることを許してくれた。それで頭を冷やせるならそれでいいよと、その日は久しぶりに家族で過ごした。
次の日の朝、布団から起きた私は心にぽっかり穴が空いたような気分だった。いつもなら愛しい彼が隣にいるが、家出をして実家に居るんだと思い出した瞬間、虚しさが込み上げた。あなたと最後に会った日からまだ一日しか経っていないけれど、それ程までに私に影響を与えていたんだなと改めて実感する。
「おはよう…」
「元気ないね、やっぱり寂しくなった?」
さすが母親と言うべきか、こちらの考えはお見通しだった。涙を堪えながらこくりと頷くと、ちょうど今客人が来たところだよ、と言って玄関まで私を連れて行った。
「あなたの素直な気持ちを伝えれば大丈夫だからね」
お母さんにそう言われて、私は仲直りしたいという気持ちを伝えるために玄関のドアを開けた。
テーマ「君と最後に会った日」
愛しの彼女は、俺の憧れの人だ。誰に対しても優しく、それでもってとても可愛らしい方なのだ。他人を思いやる気持ちを持ち、きちんと自分を持っている彼女はとても強く、人を惹きつける魅力がある。それだけでなく、自分の好きな物を見て喜ぶ姿は年相応の可愛さがある。
だが、俺は彼女がそれだけでないことを知っている。他人を思いやる気持ちを持っている彼女は、それと同時に感受性が高いのだ。それは悪意に対しても同じで、心を痛めて泣く彼女の姿を何度か見てきた。
「こんなのってないよ、あんまりだよ…」
「大丈夫です、貴方は悪くありませんから」
泣きじゃくる彼女を俺は抱き寄せ、背中を撫でながら慰めた。涙を流す姿もとても美しいが、笑顔を見せてくれる姿が一番好きなので、泣き止むまで励ました。これからも、こんな繊細な花のような彼女を支えていきたいと心に誓って。
テーマ「繊細な花」
1年後の私たちはどんな感じだろう。長いようで短い1年という中で、大きく変わることはなくとも、小さな変化ぐらいは沢山あると思う。
「1年後の俺たち、ですか。変わらずに二人で過ごしていると思いますよ?」
「それはそう。ただ、新しい場所で1年だから、何か発見はあるかも」
そんな他愛もない話をしていく。好きな店が決まってくる、仕事の要領が良くなるなど、本当に小さな変化だ。
「でも、私たちは1年後と言わず、いつまでも変わらず一緒に居たいね」
「はい、いつまでも側に置いてくださいね?」
テーマ「1年後」