「あなたって優しいよね」
彼女は俺のことを優しいと褒めてくれる。それは俺が彼女のことを愛しており、大切に思っているからだ。でも、ずっと優しく振る舞えるほど俺は性格がいい訳でもない。
「そう言ってもらえるのは嬉しいですけど…俺はそんなできた人間ではないですよ?」
俺は普段なら見せないような不敵な笑みを浮かべながら、いつもより強く彼女を抱きしめる。抱きしめられて嬉しそうに笑う彼女を見ると、あまりにも純粋すぎて抑えが効かなくなりそうになる。
「貴方のことは本当に愛しています。出来ることなら、貴方をこのまま俺の腕の中に閉じ込めていたいくらい…」
彼女の耳元でそう囁くと、少し恥ずかしそうに頬を染めていた。あぁ、なんて可愛らしい人だろう。本当に他人の目に触れないように、ここではないどこかへ攫ってしまいたい。それ程までに、彼女は乙女な反応をしてくれる。その度に、俺の心を掴んで離さないのだ。
「もし、俺が貴方をここではないどこかへ連れて行くとしたら、付いてきてくれますか?」
「もちろん!あなたとなら、どこまでも」
若干食い気味になる程、彼女は即答した。それが例え逃避行になるとしても、彼女は俺に付いてきてくれるのだろう。
テーマ「ここではないどこか」
6/27/2024, 11:05:40 AM