ほむら

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街中を歩いていると、所々で笹が飾られているのを見かけた。そうか、七夕か、と思いながら私は彼に聞いてみた。

「ねぇ、何か願い事ってある?」
「あぁ、そういえば今日は七夕でしたっけ?何も考えてませんでした」
「だよね〜、大人になってからこういう行事とかやらなくなったし」

そんな話をしながらショッピングモールに入ると、やはりここでも笹が飾られていた。買い物客が書いていったのか、色とりどりの短冊が掛けられている。少し近づいてみると、ケーキ屋さんになりたい、と
幼い子どもが書いたであろう願いや、恋人が欲しいといった恋愛の願いなどが書いてあった。

「あ〜、願い事思いついたけれど、見られたくないから心に留めとくわ」
「奇遇ですね、俺も思いつきましたが恥ずかしいのでやめときます」

それから夜になり、晴れた空の下で星を眺めていた。今日はいい天気だし、彦星と織姫も会えているんだろうなと思いを馳せながら、彼の方を見た。

「今日のお昼に言ってた、あなたの願い事分かったかも」
「俺もですね。貴方の願い事はきっと俺と同じだと思います」
「それならせーので言おうか」

二人きりだけの静かな空の下で、私がせーの、と声を掛けると、ずっと一緒に居られますように、という二つの声が重なった。

テーマ「七夕」

7/7/2024, 11:44:59 AM