Sasha

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7/31/2023, 10:01:21 PM

「今から行くよ。」

真夜中の1時。電車は動いていないが、バイクで行けば30分だ。

電話の向こうの彼女が心配だった。きっと、酷く傷付いたはずだ。

「いい…。これは、みんな私のせいなんだよ。誰かに慰めてもらって、どうにかなるもんじゃない。だから、一人でいたい。」

絞りだすような声で、しかしきっぱりと君は言った。

「そっか…。」

俺は迷ったけど、彼女の言い分に従うことにした。気持ちがザワザワする。

【だから、一人でいたい】

7/31/2023, 12:55:39 AM

僕は、君の澄んだ瞳を改めてまっすぐに見つめた。君もまた、僕の瞳をまっすぐに見つめている。

茶色い瞳の中の瞳孔まで遠慮なく見つめていると、魂まで同化したような、不思議な一体感を感じる。

僕は君の柔らかい頬にキスをして、それから僕たちはひとつになった。


【澄んだ瞳】

7/30/2023, 8:09:02 AM

船の上には、ほとんど何も残されていない。波がすべてをさらってしまった。

見渡すばかりの海原で、私は思った。私が、あなたを守る。たとえ嵐が来ようとも。
 
だが、そんな思いはこの大自然の中では無為に等しい。そのこともよく分かっていた。

とりあえず私は、厄介な日差しを避けるために、彼を船倉に引きずりこむことにした。

マストがなくても、漂流していたらほかの船が見つけてくれるかもしれない。

それまでは、何としても生き延びるのだ。

水平線の向こうには、噴煙が立ち昇っている。おそらくこの地殻変動は、世界で同時に起きているのだろう。

【嵐が来ようとも】

7/29/2023, 2:41:17 AM

「ねえ、お祭り一緒に行こうよ。」

君の誘いに喜んだ俺はバカだった。まさか、学童の子どもたちがこんなに来るなんて、思わないじゃないか。

「遠くにいっちゃダメだぞ!」

一生懸命に声を振り絞るが、10人からの小学生が、大人しく従うわけがない。

やれ金魚すくいだ、やれ型抜きだとあっという間にバラバラになってしまう。

俺は金魚すくいをしている子どもたちを横目に見ながら、綿菓子を買おうとしている女の子の側についていた。

その時だ。花火のドーンという地の底から響くような音が、俺たちを覆った。

「花火だ!!」

子どもたちも、屋台から離れて花火に魅入っている。

「花火見るんなら、あっちの土手のほうがいいよ。」

俺が言うと、子どもたちは騒ぎながら土手のほうに走っていく。

しばらくは、その場を離れないだろう。ホッとして彼女を探すと、ニコニコしながら花火を眺めている横顔が見えた。

「ごめんね、手伝わせちゃって。ありがとう。」

「うん、いや。」

俺は口ごもりながら、彼女の横に立った。花火は続いている。

「東京には明日帰るんだよね?」

「うん。」

寂しそうな横顔を見て、俺は思わず彼女の手を握った。

「!」

しかし彼女は、驚いたように、俺の手を振り払ってしまった。


「ご、ごめん…。」

性急すかざたか。しょんぼりしている俺に、彼女は言った。

「子どもが見てるから…。」

「え?」

それはつまり、子どもが見てなきゃOKってこと?俺は俄然やる気が出た。

【お祭り】



7/27/2023, 12:14:18 AM

「あ、すいません…。」

俺は通行人を避けながら、交差点に落ちていたゴミを拾った。

誰かのためになるならば、と思って続けてきた習慣だが、中には不審者でも見るような、うろんな目で俺を眺める奴もいる。

近所のじいさんは、よく声をかけてくれるが、区の吸い殻パトロールの親父は、ライバルが出現したとでも思うのか、完全無視だ。

小学校の旗振りのオヤジも、俺を見て見ぬふりをする。

「何でそんなことしてるの?」と、明らかに不審の目を向けてくるやつもいる。

だが、俺の毎朝の働きのおかげで、カヤが生え放題だった都会の交差点は、すっかり綺麗になった。

いいことをして何が悪い!と俺は言いたい。善きことに不審な目を向ける奴は、魂レベルが低いんだと思っている。

【誰かのためになるならば】

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