船の上には、ほとんど何も残されていない。波がすべてをさらってしまった。
見渡すばかりの海原で、私は思った。私が、あなたを守る。たとえ嵐が来ようとも。
だが、そんな思いはこの大自然の中では無為に等しい。そのこともよく分かっていた。
とりあえず私は、厄介な日差しを避けるために、彼を船倉に引きずりこむことにした。
マストがなくても、漂流していたらほかの船が見つけてくれるかもしれない。
それまでは、何としても生き延びるのだ。
水平線の向こうには、噴煙が立ち昇っている。おそらくこの地殻変動は、世界で同時に起きているのだろう。
【嵐が来ようとも】
7/30/2023, 8:09:02 AM