「ねえ、お祭り一緒に行こうよ。」
君の誘いに喜んだ俺はバカだった。まさか、学童の子どもたちがこんなに来るなんて、思わないじゃないか。
「遠くにいっちゃダメだぞ!」
一生懸命に声を振り絞るが、10人からの小学生が、大人しく従うわけがない。
やれ金魚すくいだ、やれ型抜きだとあっという間にバラバラになってしまう。
俺は金魚すくいをしている子どもたちを横目に見ながら、綿菓子を買おうとしている女の子の側についていた。
その時だ。花火のドーンという地の底から響くような音が、俺たちを覆った。
「花火だ!!」
子どもたちも、屋台から離れて花火に魅入っている。
「花火見るんなら、あっちの土手のほうがいいよ。」
俺が言うと、子どもたちは騒ぎながら土手のほうに走っていく。
しばらくは、その場を離れないだろう。ホッとして彼女を探すと、ニコニコしながら花火を眺めている横顔が見えた。
「ごめんね、手伝わせちゃって。ありがとう。」
「うん、いや。」
俺は口ごもりながら、彼女の横に立った。花火は続いている。
「東京には明日帰るんだよね?」
「うん。」
寂しそうな横顔を見て、俺は思わず彼女の手を握った。
「!」
しかし彼女は、驚いたように、俺の手を振り払ってしまった。
「ご、ごめん…。」
性急すかざたか。しょんぼりしている俺に、彼女は言った。
「子どもが見てるから…。」
「え?」
それはつまり、子どもが見てなきゃOKってこと?俺は俄然やる気が出た。
【お祭り】
7/29/2023, 2:41:17 AM