二十歳という年齢はアンバランスだ。
周囲から大人として見られるこの年齢は
心の何処かで大人であるべきと叱咤しても、
心の未熟さが足を引っ張る。
大人と子供の間をふらふらと行き来して定まらず、
未熟なれど大人。大人なれど未熟。
そんなどっちつかずな状態をもて余す。
強制的な、子供から大人への入り口故
アンバランスやらアンビバレンスやらが起きても致し方ない。
こんな時こそ
焦らず自分らしさを大切に。
周囲ではなく自分の心が、未来を作っていくのだから。
もう随分前に入口を潜った大人から
新成人への餞とならんことを。
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真面目よりな文を書いたのでこちらでは気楽な感じにしましょうかね。
大人って一日にしてならず、なのですよ。
成人式迎えて、「ハイ。じゃあ今日から大人として振る舞いなさい」なんて大抵の人は無理なんです。
成人の日や成人式は、大人の入口に過ぎず、そこから時間や経験を得て大人らしくなっていくものだと自分は思っています。
そうそう、
未熟なれど大人。
大人なれど未熟。
言葉を逆にしただけと思われてしまうかもしれませんが、個人的にはそれぞれ違う意味を持たせています。
未熟なれど大人=未熟なのに大人として振る舞わなくてはいけない。しかし、まだ大人に成り立て(若い)なので、未熟なことをしてしまう。
大人なれど未熟=大人としてあるべきなのに未熟なことをしてしまう。大人(高齢も含む)なのだけれど、未熟さがある。
年齢的には大人でも未熟な人は案外います。
私もその一人。
もしかしたら、皆、未熟さを抱えながら大人への階段を登っている最中なのかも。
そう思うと、大人への道は存外長いのかもしれません。
空にチェシャ猫のような月がかかっている。
「見てよ、水蓮。ニヤけた猫が僕たちを見ているよ」
僕の遊びに気付いた水蓮が空の月と同じような笑みを浮かべた。
「ヤツは誘惑が好きだからね」
知ったような口で水蓮が言う。
「誘惑?イタズラ好きじゃなくて?」
僕の言葉に水蓮は首を振った。
「誘惑だよ。月は何時だって人を魅了して止まないのだから」
「チェシャ猫は月の化身なわけ?」
「もしかしたら」
水蓮は意味深な笑みを浮かべて月を見上げた。
「月と言えば、彼らはどうなったのだろう」
僕の言いたいことを水蓮は直ぐに理解してくれた。
「三日月少年か…」
いちいち説明しなくても水蓮は理解してくれる。
これって凄いことだ。
「彼らは、この世界に紛れているよ。もしかしたら、あの月も。チェシャ猫のフリをした三日月少年かもしれない」
「あぁ、不遜な感じが似ているかもね」
僕の発言に水蓮は声を上げて笑った。
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「三日月少年漂流記」より水蓮と銅貨
おや、色とりどり…。
成人の日なので、「成人の日」や「大人」等がお題として来るかななんて思っていたが、これは意外だ。
さて、色とりどり。色とりどり。
次から次へと浮かんでくるものの
何とも決め手に欠ける。
意味から範囲を絞るとしよう。
とりどりの意味は
それぞれが、様々に違っていること。
色は、色彩。また、様々に見分けられる、ものの種類。
ふむ、組み合わせ豊かなことこの上ない。
だから、迷うのか。
そういえば、感情にも色があると思うのだが
この文を読む皆様はどうであろうか?
怒りは赤。悲しみは青。喜びは黄色。穏やかさは緑。恋はピンク。不可思議は紫。嫉妬は黒。
これは個人の感覚に過ぎないので、違う色があって大いに結構。
それでこそ貴方と私が違う者である証であり、違う者たちが共存する世界こそ、この世界でもあるのだから。些末なことで争う必要もない。
色とりどりの感情を
どの様に愛で、どの様に表現しようか。
そういう意味では、人は皆、芸術家だ。
深々と雪が降る。
世界よ白色の下に染まれよと
骨まで軋む寒さに包まれよと
言うが如く。
街を染める雪は止む気配がない。
─どうやら先生は、不思議の国を白く染めたいらしい。
煙草をふかしながら、雪を眺める男はそんな事をつらつらと思った。
灰色の髪に無精ひげを生やした痩躯の男だ。
髪と同色のジャケットを羽織り、青色のマフラーを巻き付けている。
男の名を眠りネズミと言った。
不思議の国において情報屋をしているが、
アリスのゲームに巻き込まれないよう国中を逃げ回っている。自称、慎重派。
今もゲームに巻き込まれないよう、いつものバーからイモ蟲横丁へと向かう最中であったが、いつの間にか音もなく降り出し、積もり始めた雪に足を止めたところだった。
街灯の明かりに照らされた広場も一面銀世界となっている。
普段は軽やかな水しぶきをあげる噴水にも雪が舞い降り、溶けずに水底に溜まっていく。
──溶けない雪とは恐れ入る。
深々と舞い降りる雪を眠りネズミは挑発的な眼差しで見やった。
──人の体温奪う雨よりも性質悪く、陽の光を浴びても尚居座り続ける。雪の美しさではなく、性質の悪さを利用して、アリスへの執着を具現化したのだろう。
眠りネズミは煙草の灰を落とすと、再び咥え、煙草を深く吸い込んだ。
肺いっぱいに苦みが広がる。
歪で、狂った住人ばかりがいるこの不思議の国は、一人の男が作っている。
たった一つの狂気をその身に宿しながら。
──度し難い。
眠りネズミは眉間にシワをよせ、
溜息をつくように煙を吐き出した。
吐き出した紫煙と共に白い息が周囲に溶けていく。
──ヒロイズムの成れの果てだ。そろそろ現実を見ろよ。イカレた先生。
男の睨みつける空からは、止むことを知らない雪が滾々と降っている。
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「Are you Alice?」より 眠りネズミ
「言葉を知ることは、世界を知ることなのね」
彼女はそう言うと屈託なく笑った。
あぁ。そうだよ。
この世界に存在する沢山の言葉。
それらを知れば知るほど世界は広がりを見せる。
名前も知らなかった感情の名すらも、
理解することが出来る。
沢山の価値観に気がつくことも出来る。
この世界の多くは
言葉故に成り立ち発展していく。
面白い世界だろう?
子供向けの本を持って微笑む君よ。
世界は広く美しいものだ。
自分がそれを教えてあげよう。
だから
君と一緒に、自分もその世界を旅させておくれ。
君の見る世界を共に旅させておくれ。
どうか
いつまでも、一緒に。
夜の海に潮騒が響いている。
その浜辺に傘を持った人物が一人。
静かに海を眺めている。
無表情な顔の頬には、
一筋の涙が流れていた。