ふわふわのもち

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11/18/2022, 10:27:20 AM

思い出を増やすことは、小さな石を積んでいくことに似ている。
ひとつひとつ、手に触れたものをそっと丁寧に。崩れてしまわぬように積み上げたそれは、時折ふと土台の形を思い出したり、上手く積めずに入れ替えたり。複雑になっていく形や積み方は、きっとあなただけの形をしている。
積み上がったそれはやがてあなたの一部を形作るのかもしれない。
あなたの大事なものになるのかもしれない。
そうして積み上げていったものたちは、いつか誰かに繋がっていくのだろうか。
誰かに語り、繋ぎ、いつか誰かの手に拾われていくのだろうか。
そんな日が、来るのだろうか。
そんなことを考えながら、今日もひとり石を積み上げる。

11/17/2022, 1:08:28 PM

ほう、と息を吐いてみようか。
白く揺蕩うそのさまを、飽きるまで眺めるのは退屈だろうか?
夜空を見上げてみようか。
ちかちかと輝く星が、落ちてくるほどの光の海になる様はひとりぼっちでは寂しくなるだろうか?
雪を眺めていようか。
音もなく降り続くさまは、眠りのそこのようで怖くなるだろうか?
きみと、手を繋いでみようか。
冷たく冷えた手が熱を帯びていくさまは、春のめざめのように心も暖めうるのだろうか?
冷たい空気を吸い込み、熱を帯びた息を吐く。
ああ、もうすぐ冬が来る。

11/16/2022, 10:17:48 AM

ひとつをふたつに、ふたつをよっつに。
まぁるい形を切り分けて、それぞれをひとつずつ手に取って、ひとつだったおんなじ形をみんなで分け合う。
甘い?苦い?酸っぱい?
おなじ物を食べていても、それぞれ感じるものは違う。
おんなじだった、別のもの。
別れの間際に口にする、お別れのあじ。
いつもならあまく感じる大好きな果実。
今日だけはほんのちょっぴりしお味がする。
食べ終えてしまえば、待っているのはさよならだ。
さいごのひとかけを口の中へ放り込む。
またいつか会えるだろうか。
その答えはわからないまま、みんなに別れを告げた。

11/15/2022, 12:21:45 PM

ふわふわ、ころころ。
柔らかな毛が目の前で揺れる。
未熟な足をめいっぱい踏ん張って歩き出し、踏ん張りきれずに転がりまわる。
澄み切った瞳で目前に広がる世界を見据える姿は、愛されることを信じきっているようだ。
ころり、外へと真っ先に飛び出した子が高く甘えた声を上げる。
その首元を捉えて柔らかな寝床へと戻してやる。
冒険心はいいけれど、少しは大人しく寝ていなさい。
まだまだ薄く柔らかな毛を繕いながらそんなことを思ってしまう。

愛しい子ら、まだもう少し母の元で甘えていなさい。
みゃあぉ。
子猫の声に答えるように、母猫の声が響いた。

11/14/2022, 2:14:33 PM

冷たい風が頬を撫でる。
舞い散る赤や黄、枯れた色が足元へ降り積る。
日差しの熱を奪っていく冷たい風が、どこか寂しい心を連れてくる。
溢れる涙はそのままに、遠く淡くなっていく空を見上げる。生命の色から、眠りゆく色へと変わっていく世界に置いていかれたような心地がどこか物悲しく思えてしまう。
日向から木陰へ。
熱のない場所ではもう冬が息衝いている。
さまざまなものが眠りにつく季節はまだ遠く、けれどもう目の前に。
目覚めを待つ心地でひときわ強い風を受け止めた。

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