ふわふわのもち

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11/13/2022, 10:45:02 AM

顔も知らない貴方と知り合いました。
この薄っぺらい機会の向こうにいる貴方と話をしました。
これが好きだ、あれが好きだと他愛ないことばかりをやりとりしました。
顔も知らない、画面の向こうにいるかもわからない貴方。
機械がなくなってしまえば何も残さず消えてしまう貴方。
貴方にとっても私はそういうものでしょう。語らい、笑い合い、趣味を共有する、けれどほんの一瞬で消してしまえるだろう微かな繋がり。
淡く細い繋がりを、私は確かに愛しく思い、けれども断ち切ってしまったことを後悔し続けるのでしょう。
顔も知らない貴方。声も知らない貴方。本当に居るのかも分からなくなってしまった貴方。
いつか、またこの画面越しにすれ違うことがあれば、せめて私は伝えたいのです。
あの時はごめんなさい。貴方との交流が私の心の支えでしたと。
そんな日は来ないだろうと分かっていても、そんなことを思い続けているのです。

11/12/2022, 10:57:57 AM

未知を知ることは楽しいことだ。
前人未踏の先を見ることは心躍ることだ。
誰もが知っていることを覆す瞬間は震えるほどの興奮をもたらすものだ。
スリルとは、そういった冒険心から来るものだ。
それを履き違えてしまえば、それはスリルではなく悪童の好奇心にも劣るものへとなってしまう。
誰かを傷つけるためだけの加害意識だ。加虐心と呼び替えてもいいのかもしれない。
それはどれほど大きな行いであっても、私にはつまらないものに見えてしまう。
だからこそ、私は私に問いかける。
その好奇心はスリルへと繋がっているか。
その探究心は加害へ繋がっていないか。
その手の先に傷つく誰かは居ないか。
私は問いかける。
その先に未知はあるだろうか?

11/11/2022, 10:36:15 AM

足元に落ちていた羽を拾い上げる。光に透かせばきらきらと美しく輝く羽の持ち主は、無事に飛ぶことが出来たのだろうか。
しばらくくるくると回し、ごみ箱の中へと放り込む。
飛べない翼の一部にもなれなかったそれのことは、日常へ戻ればすぐに忘れてしまった。
頭上を何かが飛び去っていく。

11/10/2022, 11:55:28 AM

風が白い穂を揺らす。
今日の月はとても明るい。ともすればすれ違う誰かの顔がみえるくらいに。
だから星は顔を隠して闇の中。ひとりぼっちの月が私を見下ろしている。
こんな夜には、月見酒と洒落こもう。ひとりぼっち同士、長い夜を語り明かそうじゃないか。
揺れる白い穂をひとつ手折り、暗い夜道を弾み歩く。
今夜はとっておきの酒を出そうじゃないか。
私の言葉に答えるように手の中のすすきがひらりと弧を描く。
まだまだ、夜は始まったばかりだ。

11/9/2022, 4:12:02 PM

すれ違いざまに鼻先を掠めた香りのせいで、忘れ去っていたものが脳裏を過ぎった。
思い出したくないものだったのか、それとも思い出す必要のないものだったのか。今となっては分からない。
けれど、それは確かに事実として私の心を押し潰し続けていたはずのものだった。
その場で振り返り、香りを纏っていたであろう人物を探す。けれど、不慣れな町の人混みの中ではすれ違っただけの誰かを見つけることなんて出来ない。
香りの持ち主であるだろう誰かは見つけられないまま、雑踏のすみっこに立ち尽くす。
……いや、きっと見つけられなくて良かったのだろう。見つけてしまえば、きっと私は私の傷をその人にぶつけてしまうから。
浮き彫りになった記憶がまた目に触れないよう奥底へと押し込んで歩き出す。
もう、振り返ることはしなかった。

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