風が白い穂を揺らす。今日の月はとても明るい。ともすればすれ違う誰かの顔がみえるくらいに。だから星は顔を隠して闇の中。ひとりぼっちの月が私を見下ろしている。こんな夜には、月見酒と洒落こもう。ひとりぼっち同士、長い夜を語り明かそうじゃないか。揺れる白い穂をひとつ手折り、暗い夜道を弾み歩く。今夜はとっておきの酒を出そうじゃないか。私の言葉に答えるように手の中のすすきがひらりと弧を描く。まだまだ、夜は始まったばかりだ。
11/10/2022, 11:55:28 AM