作:ロキ

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9/5/2024, 2:46:34 PM

『(エアコンの時期も、そろそろ終わりかな…?)』
僕は、ベランダに出て稲穂が頭を垂れている風景を
見ながら、缶ビールを一口飲んでいた。

『(そういや…今年の夏は、楽しかったな…。
花火を観に行って…。バーベキューをして…。
温泉に行って…。)』
ボーッと、缶ビールを片手に
ふと、今年の夏にやった事を思い出していた。

『今年も、楽しかったなぁ…。』

僕は、思わず顔が緩んでしまったのと
つい、心の声がボロっと口から出てしまった。
アホじゃん。一人ツッコミを入れてしまうほど
楽しかったみたいだ。
フフッと小さく笑って、稲穂が頭が垂れている風景を
背にし、身体を部屋の中を見るように向き直した。

部屋の中は、小さいTVと座椅子
足が折り畳める小さいテーブル
朝に使ったまま放置されたマグカップとパン皿
畳むのを諦めた乾いた洗濯物
ベランダに出るのに、適当に脱ぎ捨てたスリッパ
缶ビールを冷蔵庫から取り出す前に、右足で蹴って
しまい、直さずそのまま放置された鞄
昨日着た洋服も洗濯機に入れず、そのままの状態

『まあ…。我ながら酷い部屋だ。笑』

缶ビールと稲穂の風景、秋の風を感じながら
現実逃避をしていたのに
逃避をするな!と言わんばかりに
部屋の中の惨状を見て現実世界に戻される。
永遠に現実逃避してぇなー。
と、アホな事を考えていた時だった。

『あ…。そういや…。
 あいつ…無理やり渡してきたな。』

僕は、ベランダから散らかっている部屋の中へと
戻り右足で蹴飛ばした鞄を左手で持った。
持ったまま、座椅子のところへ行き
あぐらをかいて、座椅子の上へ腰を下ろした。

えぇーっと?僕は、缶ビールをテーブルの上に置き
鞄のチャックのツマミを右手で摘み
ジィー…。と、音を立てながら鞄を開けた。
そして、左手を鞄の中に入れガサゴソと手の感触だけで
探していた。数秒後、目的の物が左の中指に触り
探しものは見つかった。中指と人差し指で摘み
そのまま鞄の外へ《ソレ》は出された。

ソレと言うのは、1枚の紙である。

約1週間前に会った親友は、海外へ行く!と言い残し
これまた、訳も分からないまま紙だけを渡され
さっさと飛行機に乗り、さっさと行ってしまった。
あの時は、突然のことで僕も理由がわからなくて
とりあえず、何も考えないで鞄に紙を突っ込んでいて
何なんだアイツは!!と、僕はその時は
とても、ムシャクシャしていた。

『……今、思い出してもムカつく…。』
ブツブツと、小声で呟きながら折りたたまれた紙を
開いていく。大した事じゃないんだろうな
って、半分思いながら
ようやく、紙は折りたたまれる前の元の大きさになった

えぇー…っと?ナニナニ??

  『『 この手紙を開いたね…俺は
     本当は、海外に行っていません。

    あれは嘘です。嘘をついてごめんなさい。
    本当は、日本の何処かで旅行してます。

    嘘をついたお詫びに
    お土産は、美味しいお菓子とお酒
    高価なお魚や《殻付きの鮑》を持って

      貴方の元へ帰ってきます。 

    追伸 その時に、返事をください。』』



          
     『  ⚫ ⚫ ⚫ ⚫ 。 』

        


     『『『  は あ !?  』』』




思わず思考停止になってしまった。
僕は、親友に騙された。しかも、日本!?
読み間違えたかと思い、二度と読み返すが
やはり、日本と書かれてある。
なんだよ…。僕は、このふざけた手紙の内容に
もう満身創痍で心はヘロヘロだ。

まあ…。美味いものを土産で貰うから
もう良いか……いや?怒るべきか??
うーん。と悩みつつ、ある2つの疑問が浮かんだ

1つ、返事をくれ…どういう事??
2つ、《殻付きの鮑》…??

この2つの意味が分からない。僕は、スマホの電源を入れGoogle検索に〘殻付きの鮑 意味〙と検索を入れてみた。正直、ヒットするとは思っていない。
半信半疑でいたら、なんと意味が出てきたではないか。


意味は……鮑は、片側に1枚しか殻がついていない。
     これは、恋愛の片想いを意味することわざ


これで、2つの謎が繋がった。そして、すべてを理解した僕の顔は缶ビールのせいか?みるみる内に、紅葉のように赤くなっていった。


手紙の意味は…
       あなたが好きなんです。
   その返事を、俺が帰ってきたら聞かせてほしい。

9/4/2024, 2:42:24 PM

「いらっしゃいませぇ」
時刻は、20:05を過ぎた頃。
私は、壁掛け時計下のレジ近くで
バラの手入れしていた。
いつの間にか枯れてしまっていた花や、
いつもより青々としていない元気が無くなった葉を
プチンップチンッと、丁寧に花切狭で切っていたら
カランコロンと、扉を開けて入ってきた事を
知らせるベルが鳴り、男の人同士のお客様が2人来店

1人は、スーツ姿の30代くらい?の
焦げ茶色の髪の色に右手には、買い物帰りであろうか?エコバッグを左手には、仕事用の鞄を持っていた。

もう1人は、明るい赤茶色の髪の毛にお洒落なカジュアル服姿の10代〜20代前半ぐらい?の男の人
身長は…ふたりとも大体同じぐらいの背だ。

「(…おや?こんな時間に男の人が2人…)」
私は、その2人を不思議そうに眺めつつ
右手に持っている鋏を動かしていた。
2人は、鮮やかな色とりどりの沢山の花に囲まれながら
あっちに行ったり、こっちに行ったり…2人仲良く
ウロウロと店内を見て回っていた。
15分ぐらい、たっただろうか?先程まで2人で
仲良く見て回っていたのだが…なんと
今度は、2人とも各々で見て回っていた。

スーツさんは、この店で1番日当たりが良い窓近くにある棚の中の観葉植物達を眺めていた。
「(観葉植物が好きなのかな…?)」
などと、勝手な想像をしながら私は、
切り終わった葉や花の後片付けをしていた。
これで元気になるね。心の中でこっそり呟いていたら
『…あの…。』
と、静かな声が聞こえてきて私はハッと我に返る。

「はっ…はい!」

私は、片付けを中断し声がした方に体を向ける。
そこには、赤茶色の髪のカジュアルさんがいた。
遠くじゃよく分からなかったが、近くで見ると
中々の美形さんでは無いか!
この人は、モデルさんか何か??などと
私は一瞬だけ思ってしまった。

しかし…私に声をかけてきた彼は、
口を開けたり閉じたりしているし、目がキョロキョロと忙しなく動いている。彼は、声をかけてきたが中々話そうとしなかった。
中々本題に入らないので私は、ついにしびれを切らし
「……何か…探している物でもあります…か?」
と、恐る恐る尋ねてみた。
彼は、目を見開き一瞬動きを止めたがすぐに
小さく頷いた。すると、少し顔を俯けながら
彼は小さな声で話し始めた。

『ぷ……プレゼントをしたいのです…
 その…2人の記念日だから…。けれど…どんな花が
 良いか分からなくて…それで…』

彼は、彼自身の髪の色にも負けないぐらいに
顔を紅くし、時折観葉植物を眺めているカレを
チラリと見て、話せないでいた理由を話してくれた。

「(なるほどね…。)」
私は、1人で納得していた。この2人の
関係性を知ってしまったからだ。
知ってしまったからには、私も
全力で応えようではないか!

「そうですね…。プレゼント用でしたら
 ……生花だと、すぐに枯れちゃうし
 持っても3週間ぐらい。永く楽しめる物なら…
 観葉植物?…うーん…でもなぁ…」

カレは、観葉植物を見ていたから
それをプレゼントするのは、何か違うカモ?
と、感じた瞬間。私はアレの存在を思い出した。

「(アレなら!2人とも、喜ぶかも知れない!!)
  …お客様!ウチには、こういう物が!…」

         ✼✼✼✼✼✼  

カランコロン…。
扉を開け、外に出ると辺りは車の通りが少なく
空気も夜空も秋の気配を感じていた。
肌で、秋の気配を感じつつ私と彼らは
和やかな空気が身体から出ていた。

『灯夜……ありがとう。花屋さんも…。』

スーツ姿のカレは照れくさそうに、アレを
まるで、壊れ物を持つかのように大事に胸の前で
右手で包んでいた。そこには、透明なケースの中に
色とりどりのバラの花が沢山敷き詰められた。

そう…私が提案したのは、ドライフラワー
2人が、これからも末永く居られるように
そして、今日という日が最高の日でありますように
と、願いも込めて提案をしてみたのだ。
……どうやら、成功したようだ。
2人は、幸せそうにドライフラワーを見つめていた。

それから2人は、三度
感謝の言葉を述べてから、人目を気にせず仲良く
手をつなぎ秋風と共に、この花屋を去っていった。
その後ろ姿が見えなくなるまで、
私は2人を見つめていた。

「…さて。店閉めますか!」

私は、再び扉をカランコロンと
音を立てながら開け店内に入っていった。

花屋の名前は《きらめき》
明日も、誰かの心にキラキラとした出会いと
幸せな1日が訪れますように

9/3/2024, 12:01:29 PM

『(うーん……?)』
苦手な現国のワークを開き、頭を抱えながら
今日出された宿題とにらめっこ中のアタシ
間違えた所を消そうと筆箱の中にある筈のソレを
取り出そうとしていた。
しかし、いくら左指の人差し指や中指で探しても
指先にすらソレは、触らない。何故見つからないんだ?と、使いたい時に中々筆箱から出てこないソレに
アタシは、段々とイライラしてきた。
ワークも分からないし!使いたいものが出てこないし
『もうっ…!なんなのよ!!』
アタシは、我慢限界!と言わんばかりに
大きな独り言をこぼした。
そして、ガサゴソと左手では無く両手で筆箱の中を
漁った。筆箱の中から出てくるのは、《ピンク色のシャープペンシルとマッキーペン、友達から貰ったカワイイ動物の付箋。赤色のボールペンに青色のボールペン…
定規、修正テープ》
探すこと、数秒後…。やっぱり見つからない。
『あれ……??消しゴムが無い…。』
いつも、筆箱に入っているはずのMONOの消しゴムだけが無かったのだ。何で無いんだ??アタシは、不思議そうに、うーん?と首を傾げながら、今日1日を振り返ってみた。1限目の数学の時に使って…。3限目の化学で隣の席に座っていたカナヤに、消しゴム貸して…。
それで5限目に……。と、ボンヤリ考えながら机に
飾ってある写真を何気なく見つめ
ふとアル事を思い出す。

『あっ……アタシ
       レイに消しゴム貸してるんだっけ』

そう…。あれは3時間前の事。妹のレイは
自分の消しゴムを友だちに貸したままで、その事を
すっかり忘れてしまっていて。家に帰って「さあ!宿題をするぞ!」って時に無いことに気がついたのだ。
困っていた妹に、アタシは消しゴムを貸したのだ。

『なぁーんだ!!あ〜スッキリした』

筆箱の中から消えた消しゴムの行方が分かり
先ほどまでのイライラが、何処か遠い所へ行ってしまいそしてアタシは今、とってもご機嫌である。
機嫌が良くなったので、何か飲み物でも飲もう〜♪
と、座っていた椅子から重い腰を上げてルンルンで
部屋の扉を開け、キッチンへ向かった。

その後、レイに貸した消しゴムは
アタシの手元に返ってきた。
これで、ようやく間違えた所を消せる!!
アタシは、間違えた問8の答えを消し始めた。

きっかけは、「些細なこと」から始まっていた。

           
           ※21:53 編集し直し済※

9/2/2024, 12:13:30 PM

長年、私を愛してくれていたあの人が…。
長年、私を笑わしてくれていたあの人が…。
長年、私と、くだらない喧嘩をしてきたあの人が…。
ピーマン嫌いなあの人が…。
手先が不器用で、笑った顔が太陽みたいに温かい
あの人が…。二度と私のところへは帰ってこないと
知ったのは、一通の手紙が私の手元へ来た時だった。

あの人は…。海を渡った遠い国で、知らない誰かを助けそして…巻き込まれ命を落としたのだ。あの人と一緒に行った友が、この手紙を持って泣きながら私に告げた。
嘘でしょ?
何で?
どうして、ソコへ行ったの?
どうして、知らない国の人を助けたの?
これは、何かの冗談?
私を驚かせようとしているの?
色々な憶測が頭の中をグルグルと廻っていた。
けれど…私の目の前で泣いているこのヒトを見ると
そのグチャグチャになっている顔と涙を見ると…
あぁ…。真実なんだな…。と、私を冷静にさせてくれた
冷静になった私は、彼に落ち着いた声でこう話した。
『ありがとう。』ただ一言だけ。
彼は、一瞬驚いた顔をしたが
また声を荒げながら涙をこぼし始めた。
彼が落ち着くまで、側にいてあげた。
という云い方が合っているか分からない。ただ…
いま私が、誰かの側に一緒に居たいのかも知れない。
夕日が沈み空が暗く染め始めた頃に、彼は
「…帰ります。」と、呟いて私にお辞儀し暗闇の中を
歩いていった。私は、その背が見えなくなるまで
暗闇を見つめていた。彼の姿が、もう見えなくなった
頃。私は、手元の手紙を見つめ覚悟を決める。
鋏を持ち手紙の封を切り始めた。封の中からは
少し角が曲がって折りたたまれた紙が出てきた。
恐る恐る、その紙を開いていく。

《 君へ
  この手紙を読んでいる。という事は
  あいつが君に手紙を渡したね。僕がこの世から
  居なくなった事を許してください。そして、あいつ
  の事を怒らないであげて。僕の我儘を聞いてくれた
  んだ。僕に万が一の事があったら届けてくれ。と
  頼んだんだ。だから君は、馬鹿だなぁ。
  と、笑ってくれ。あぁ。
  僕は…幸せ者だ夢が2つも叶ったんだ。1つは
  どこかの国で、誰かを助ける。2つめは、君に
  会えたこと。触れ合えた事。愛していた事…
  もうそれらは、二度と出来ない。けれどね
  神様がいて1つだけ願い事をしても良いよ。って
  言ってくれたら、たった1つだけ願って良いのなら
  僕は、君の「心の灯火」になりたい。
  君の心が、真っ暗にならないように。
  僕が、君の心を灯してあげたい。 》

……手紙の文章は、これだけだった。
けして長くは無いけれど、あの人らしい文章に
私は十分だ。淋しくない。
何故なら、私の心にはあの人が生きている。
あの人が、火となり灯となり灯してくれている限り
私は、前を向いて生きて行ける。
これからも、この先も永遠に。

                作:ロキ    

9/2/2024, 9:39:10 AM

2024/09/02 天気は晴れ、時々さわやかな秋風
雲の流れが速く、まさにそんなに急いでどこへ行く?
等等、スマホを片手に僕はボンヤリと空を見つめ、そんな事を考えていた。そして、片手に持っているスマホを見つめため息一つ。何故、ため息を付いていたかと言うと…遡ること5日前、僕は長年片思いをしていた幼馴染に告白をしたのだ。
「返事は、いつでも良いから。」
目の前の彼女に僕は、落ち着いた声でこう話した。
『うん…分かった。』
彼女は、突然の告白で頭が真っ白の状態。どう返事をしてよいのか?困惑気味であったから僕は、あえてこう伝えたのだ。そして…2024/08/31の事
いつもの様に、洗濯物を干していた時だった。
〘〘ピコンッ〙〙
ズボンの後ろポケットに入っていた、僕のスマホが
鳴ったのだ。時刻は、15時過ぎた頃
僕は、こんな時間に誰だ?と
スマホの画面を見つめた瞬間、数秒…僕の動きが止まった。そう…僕の動きを止めたのは、5日前に告白した長年片思いしていた彼女からだった。
LINEを開きたい様な開きたくないような…。指が行ったり来たり繰り返す。ああ…僕は臆病者だ。

開けないLINE
それは、僕の運命の分かれ道。
                 作:ロキ

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