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10/8/2024, 3:31:49 PM

大勢の人間が遠くからかけてくる音がした。母はその音を聞くや否や娘の私に言った。「ついてきなさい」と。つかつかと書斎に入ると本棚の前に立ち何やら呟いた。すると本棚が二つに開いた。そこには薄暗い空間が広がっていた。中に私と入るとまた母は何やら呟いた。すると出口が塞がった。そのまま母は私に言った。「今から悪い人たちがこの家を荒らしにくるわ。目的は私とあなたを火炙りにすることよ。あなたはこの家に人が入ってこなくなるまで、ここに隠れていなさい。」「いやだよ。ママはどうするつもりなの」私は必死に駄々をこねた。母は私の目線の高さまでしゃがみ込み、私の頭を撫でた。「もうすぐ人が来るからあまり時間がないの。ママは悪い人たちを懲らしめに行くわ。だからそれまで悪い人に見つからないようにお利口にしてて」母の優しげでどこか堪えたような表情を見て、私は泣かないようにした。「うん。わかった。絶対戻ってきてね」「ええ約束よ。それじゃあここを出る方法を教えるわね。それから・・・」その会話が私と母の最初で最後の束の間の休息となった。

9/21/2024, 4:42:18 AM

私が大事にしたいと思っているのは何なのだろうか。
私には大事にしたいというのがない、いやわからないというべきか、私は私というものがないのだ。
このままではいけない。そう思っていると、あることができるようになった、それはもう1人の「自分」を創り出すということだ。創り立すというと仰々しいが、もう1人の「自分」が今何を思っているのかということに思いを馳せるのだ。すると思いもよらない姿が心の中に映る。自分は笑顔なのに「自分」はしょぼくれている。自分はリラックスした体勢なのに、「自分」は
体育座りでうつむいた顔で泣いている。少し眠った後は自分は無表情なのに、「自分」は立ち上がって喜んでいる。私はもう1人の「自分」を大切にしてやらなければいけないなと思った。そこから自分が変わりはじめた、今まで聞いていた流行りの音楽は「自分」には落ち着きを与えるものではなく、合わないとわかり、試しにピアノ曲を聞くようになった。すると「自分」がとても落ち着いた。自分もとても楽になった。どうやら「自分」と自分は連動しているようだ。
自分がわからなくなったり、制御が難しくなった時は「自分」に思いを馳せ、「自分」を思いやる行動を取る。これが今、私が大事にしたいことだ。

12/27/2023, 10:05:29 AM

今まで手をひっくり返すように裏切られたり、組織のリーダーが変わったりと、変わらないものはないんだということは嫌というほど経験してきた。でも変わらないものを私は知っている。それは自分自身だ。自分は腹黒い性格をしていて目立ちたがり屋、でも努力は嫌いだという何一つ取り柄のない性格なのだが今までそれを変えるために努力しようとしてきた。しかしどの努力も長続きしなかった。それはなぜなのかというと無力感だ。今までの自分を変える努力の失敗の積み重ねが無力感を学習させたのだ。そこで無力感を消す方法を私は探し、ついに一つの結論に至った。今はそれを試すところだ。

11/21/2023, 5:35:10 AM

「ここら辺じゃない?」「たしかそうだよ。」「ここに埋めたよね。」僕は今、小学校からの友人男女二人と夜の山奥に来ている。
理由は.....。

「じゃあタイムカプセル探そっかー」そうタイムカプセルだ。小学校の頃の宝物を入れてある。未来の僕らが見つけることを願って。
昨日、その話になってわざわざ今日の朝から、ど田舎の母校のある裏山に何時間もかけてやってきたのだ。

「あったー!」友人の一人が埋めた場所を掘り起こすと、そこにはタイムカプセルが。
僕たちは大はしゃぎで中を開ける。

「何が入ってるんだろうね」「楽しみだね。」ワクワクしながら開ける。
中には手紙や写真、そして.....。

「これってもしかして.......」それは一冊の本だった。
誰かが書いた小説らしい。

「すごいね、これ。」「ねえ、読もうよ」友人たちは本を手に取った瞬間から読み始めてしまったのだ。

「え.......なんで......」
本を読んだ僕らは驚きを隠せなかった。
それは誰も当時、タイムカプセルにいれていないはずのものだったのだ。
物語の中で描かれているのは、僕らの内の誰かが元々いた友達を殺した犯人であるというストーリーだった。
僕らは元々四人だったのだ。
彼らは真っ青になっていた。

「これって...君が書いたの?」友人の一人が疑い深く尋ねた。
僕は当然のように首を横に振る。

「いや、まさか自分が書いた覚えないし。でも、内容が...不気味だよね。」

友人たちは一瞬沈黙し、不穏な雰囲気がただよった。

「でも、これってただのでたらめでしょ?」もう一人が笑いながら言ったが、笑顔には微妙な緊張感が漂っていた。

「でも、もしこれが現実だったら...」僕は震える声で言った。

「怖いね。」そして僕らは皆、顔を見合わせて固まってしまった。

「ねえ、もしかして.......」「まさか......」友人二人はタイムカプセルを埋めた場所に誰かが来てこれを埋めたこと、そしてそれをする可能性が高いのはタイムカプセルの話を昨日始めた人に限られることに気がついたのだ。
そしてその言葉が友人二人の最期の言葉となった。

「翔太。やっと終わったよ。」僕は今は亡き親友の名を呟いた。
そして月を見上げて涙を流した。

11/20/2023, 9:34:30 AM

 私は会社から出るとどっとため息をついた。
 繰り返される上司からの叱責。
断れない性格のせいで増える終わりのない仕事。
 このままどこかへ行ってしまいたい。
そう思ったとき新しく通りにオープンした雑貨屋さんを見つけた。
 そのときなぜかわからない。
 まるで吸い寄せられるように扉を開いた。
 雑貨屋さんには何も商品が置いていなかった。
 壁にはいろんな絵がかかっていた。
 独特の雰囲気にうっとりしていると奥の方から澄んだ声がかかった「何かお探しですか?」レジの方からだ。
 レジには不釣り合いな大きい水晶玉が鎮座している。
 視線を水晶玉から上にスライドさせるとメガネをかけたいかにもな店員さんがいた。
 特徴のない普通の顔だ。

「あの、ここ商品ってどこにあります?」「当店はお客様のオーダーするものをお出しするシステムになっております。お客様が欲しいものはなんですか?」私の憂鬱に耽っていた心に、新しい光が差し込んでいるような気がした。
 そしてこれをなぜ自分が欲しいのかわからなかったが腹は決まっていた。

「キャンドルが欲しいんだ。何か特別なキャンドルがあれば教えてくれないか?」店員は微笑みながら頷き、奥から引き出しを取り出した。


 その引き出しから、美しく装飾されたキャンドルが次々と現れた。
 花の形をしたものや、星座の模様が施されたもの、どれもが他では見たことのないような独創的なデザインだった。
 店員は手際よくキャンドルを並べながら言った。

「お好きなものが見つかりましたら、お気軽におっしゃってください。一つ一つに特別な意味が込められていますよ。」

 私は一つ、また一つとキャンドルを手に取りながら、その背後にあるストーリーを知りたくなった。
 店員の話に耳を傾けると、それぞれのキャンドルには願い事や感動的なエピソードが込められていた。
 驚くべきことに、そのキャンドルたちが本当に奇跡を起こしてきたというのだ。


「これらのキャンドルは、ただの灯りではなく、心の奥底に秘めた思いをかなえる力があるとされています。」店員は優雅に手招きし、奥の席に案内してくれた。

「どれかお好みのキャンドルがありますでしょうか?」

 私は心のなかで何かが騒ぎ始めているのを感じた。
 これが私が求めていたものだと確信し、一つのキャンドルに手を伸ばした。
 それは深紅の色調で、表面には小さな金箔が散りばめられていた。
 店員は微笑みながら言った。

「素晴らしい選択です。このキャンドルは『運命の紅』と呼ばれています。」

「運命の紅?」私はその名前に興味津々で尋ねた。


 店員は微笑みを浮かべながら語り始めた。

「このキャンドルは、運命を変える力を秘めています。その火を灯すことで、あなたの人生に大きな変化が訪れるでしょう。ただし、その力は慎重に扱わなければなりません。」

 私はキャンドルを手に、その言葉に耳を傾けた。
 話の間、店内には神秘的な雰囲気が漂っており、まるで他の次元に足を踏み入れたような錯覚に陥った。


「このキャンドルには願いを込めることができます。そして、願いが叶ったときには、灯りが特別な輝きを放ちます。」店員は続けた。

「ただし、その代償もまた払う必要があります。何か特別なものをお持ちでしょうか?」

 私は少し戸惑いながらも、あるものを提案した。
 店員は静かに頷き、キャンドルに火を灯した。
 その瞬間、部屋は幻想的な輝きに包まれた。


 それからというもの、私の人生は次第に変わり始めた。
 仕事では思わぬチャンスが巡ってきて、孤独もまた新しい友情に変わった。
 キャンドルの力が奏功しているのか、それとも偶然か。しかし、私は運命の紅に救われたと信じていた。
その不思議なキャンドルを通じて、私の人生は喜びと希望に満ちたものとなった。と

 ある日、封筒が届いた。
 件名は「同窓会のご案内。」誰が送ってきたのだろうか。
 送り主は知らない人の名前だった。
 手紙には送り主が自分の高校の友達であったこと、自分との思い出らしきこと、良ければまた同窓会で会いたいことが書かれていた。
 なぜか鼻がツンとした気がしたがすぐに治った。

「怪しい手紙だな。何の冗談なのだろうか」私はその手紙を封筒ごとそっとゴミ箱に投げ入れた。

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